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兄と妹
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王城、第一談話室でアマリヤとゼルフォンが対峙する。
部屋の中には侍女や侍従の姿はなく、言葉通り二人だけの空間だった。
「ゼル兄様、ご相談なのですが。」
「なんだい?」
重々しく口を開いた妹を気遣うようにゼルフォンは、優しく声をかける。
今まで、相談という相談をしてこなかった妹が辛そうな顔をして自分を頼っているのだ、できる限りのことはやってあげようと意気込む。
「実は、ヨデン公爵家の次男であるミゼル様とお付き合いをすることになりまして。」
おや?考えていたよりも嬉しい報告だ。
「それはそれは。良かったじゃないか。」
俺は素直に自分の気持ちを口にする。
しかし、妹の顔色は治るどころか一向に悪くなるばかり。
一体どうしたのだろうか。
話の続きを待っていると、先程まで下がっていた視線上げ目と目が合い
「付き合うことになったことはとても喜ばしいことなのです。…喜ばしいことなのですが、そのきっかけが私が冗談で言ってしまった好きという言葉でして……。王女として、軽率な行動であったことは重々承知しております。ですが、どうしてもゼル兄様の助言を頂戴致したく。」
と、長々しく言ってみせた。
俺は、その内容を聞きなるほどねと返し考えを巡らす。
妹は、付き合えたことに対しては喜ばしく思っている。
これは、いい事だ。
現に我が国は、どのような身分であっても恋愛結婚を推奨している。
王族であってもこれは当てはまるため、ミゼル・ヨデンと付き合うことは何ら問題ない。
しかし、妹は付き合うことになった成り行きを気にしているようだ。
冗談で告白をしてしまい、相手が了承してしまったがため相手に無理をさせているのではないかと考えていると推定する。
その場合、ミゼル・ヨデンが本心から妹と付き合うことを了承したということが分かれば、ことは綺麗に片付くだろう。
つまり、ここで俺が取るべき行動はミゼル・ヨデンに実際に会うこと。
そして、彼がアマリヤと付き合うことに対してどう思っているのかを確認すること。
この時、愛があって付き合っていれば良し。
たが、愛がなく王家という身分に目を眩ませているだけであった場合、兄としてそれ相応の対応を取るべきだろう。
考えを纏め、それを伝えるべく口を開く。
「アマリヤ。まずは、王女としての行動がどのように周りに影響を及ぼすのかしっかりと考えて動くように。いいね?」
「はい。心に刻んでおきます。」
「なら、良し。それで次だけど、俺をミゼル・ヨデンに会わせてほしいんだ。いいかな?」
「え、ええ。大丈夫だと思いますわ。」
「それじゃ、お願いするよ。アマリヤとまたこの話をするのはミゼル・ヨデンに会ってからになるから、それまで暫く待っててね。」
そうできるだけ優しく言ってから席を経つ。
さて、俺がこれから会う男はどういった奴だろう。
まだ見ぬ彼を想像して、俺は唇の端を吊り上げた。
部屋の中には侍女や侍従の姿はなく、言葉通り二人だけの空間だった。
「ゼル兄様、ご相談なのですが。」
「なんだい?」
重々しく口を開いた妹を気遣うようにゼルフォンは、優しく声をかける。
今まで、相談という相談をしてこなかった妹が辛そうな顔をして自分を頼っているのだ、できる限りのことはやってあげようと意気込む。
「実は、ヨデン公爵家の次男であるミゼル様とお付き合いをすることになりまして。」
おや?考えていたよりも嬉しい報告だ。
「それはそれは。良かったじゃないか。」
俺は素直に自分の気持ちを口にする。
しかし、妹の顔色は治るどころか一向に悪くなるばかり。
一体どうしたのだろうか。
話の続きを待っていると、先程まで下がっていた視線上げ目と目が合い
「付き合うことになったことはとても喜ばしいことなのです。…喜ばしいことなのですが、そのきっかけが私が冗談で言ってしまった好きという言葉でして……。王女として、軽率な行動であったことは重々承知しております。ですが、どうしてもゼル兄様の助言を頂戴致したく。」
と、長々しく言ってみせた。
俺は、その内容を聞きなるほどねと返し考えを巡らす。
妹は、付き合えたことに対しては喜ばしく思っている。
これは、いい事だ。
現に我が国は、どのような身分であっても恋愛結婚を推奨している。
王族であってもこれは当てはまるため、ミゼル・ヨデンと付き合うことは何ら問題ない。
しかし、妹は付き合うことになった成り行きを気にしているようだ。
冗談で告白をしてしまい、相手が了承してしまったがため相手に無理をさせているのではないかと考えていると推定する。
その場合、ミゼル・ヨデンが本心から妹と付き合うことを了承したということが分かれば、ことは綺麗に片付くだろう。
つまり、ここで俺が取るべき行動はミゼル・ヨデンに実際に会うこと。
そして、彼がアマリヤと付き合うことに対してどう思っているのかを確認すること。
この時、愛があって付き合っていれば良し。
たが、愛がなく王家という身分に目を眩ませているだけであった場合、兄としてそれ相応の対応を取るべきだろう。
考えを纏め、それを伝えるべく口を開く。
「アマリヤ。まずは、王女としての行動がどのように周りに影響を及ぼすのかしっかりと考えて動くように。いいね?」
「はい。心に刻んでおきます。」
「なら、良し。それで次だけど、俺をミゼル・ヨデンに会わせてほしいんだ。いいかな?」
「え、ええ。大丈夫だと思いますわ。」
「それじゃ、お願いするよ。アマリヤとまたこの話をするのはミゼル・ヨデンに会ってからになるから、それまで暫く待っててね。」
そうできるだけ優しく言ってから席を経つ。
さて、俺がこれから会う男はどういった奴だろう。
まだ見ぬ彼を想像して、俺は唇の端を吊り上げた。
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