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本編(完結)
36話 神戸の聖夜のイルミネーション……!(2)
四人は三宮センター街を抜けて、元町にある百貨店の大丸神戸店の前まで着いた。大丸は高級感のある光に覆われて、スクランブル交差点を行き交う人々を魅了していた。
「おお、あらためて見ると見事なもんだな」
亮介が言った。
「ほんとに綺麗!」
日奈はスマホで写真を撮った。菜々子は大丸を見つめていた。隼はそんな菜々子の姿を見ていた。
「ね!旧居留地まわっていい?」
日奈が隼を見た。大丸からハーバーランドまで、メリケンパークを通り抜けておそらくあと20分は歩かなければならない。旧居留地は大丸周辺にあるが、旧居留地のライトアップまで見て回ったら、いつ着くか分かったものではない、と隼は思った。
「だめだ。そもそも日奈、今日は門限は大丈夫なのか?」
へへーんと日奈は言ってピースサインをした。
「21時!今日のわたしは無敵なの!」
隼は菜々子を見た。
「わたしなら大丈夫だよ」
菜々子は微笑んだ。
「じゃあ、ちょっとだけ、な、日奈ちゃん」
亮介も苦笑いして言った。
「やった!」
そのあと四人は旧居留地を見て回ったが、それは『ちょっと』ではなかった。明石町筋、神戸市立博物館。数々の種類の近代洋風建築を、ひととおり見て回った。立ち並ぶブランドショップやカフェ・レストランは暖色で上品に照らされていて、石畳風の歩道すらも明るかった。
レンガ色の壁と街路樹のイルミネーションが織り成す空間の中で呼吸をすると、幻想的な冬の空気が入ってきた。それらの建物に囲まれると、まるで本当にヨーロッパの街の夜を歩いているようだった。なのに、ひとつひとつの灯りを見つめる菜々子の瞳は、なぜだか、ただ光を反射しているだけのように思えて、隼は菜々子に声をかけられなかった。
メリケン波止場の歩道橋からメリケンパークを抜けて、四人は『MOSAIC』の前の海沿いにようやく腰をおろした。
「あー、疲れた」
日奈が言った。
「おまえが連れ回したんだろ!」
隼が言うと、みんな笑った。背後の『MOSAIC』からは、聞き心地のいい音楽と、人々の笑い声が流れてきていた。すぐそこにはポートタワーが輝いていた。神戸港は静かに広がり、遥か遠くの神戸空港から離陸する飛行機の光が見えた。四人はしばらく静かに夜景を見つめていたが、少し冷えてきた。
「『MOSAIC』入ろうか」
亮介が言った。
「そうだな、ちょっと暖まろう」
隼が答えた。亮介がよし、と言って続けた。
「いったん完全に屋内に入るか、『MOSAIC』自体も半分外みたいなもんだから」
「じゃあ、あそこのゲーセンは完全に屋内だぞ。みんなでクレーンゲームやろう」
「いいね!やりたい!」日奈が言った。
「よっしゃ!何をゲットしようかな」
「わたしは『つばタン』のぬいぐるみが欲しい!」
「自分で取れよ」
「取ってよ!大事な幼馴染みでしょ」
「よっしゃ、じゃあ俺が取ろうか」
「よっ!雰囲気イケメン!」
「雰囲気やめろって!」
けらけら笑いながら、『MOSAIC』へと続く階段を上がった。ふと日奈が振り返ると、菜々子はまだ、海を見ていた。
「おお、あらためて見ると見事なもんだな」
亮介が言った。
「ほんとに綺麗!」
日奈はスマホで写真を撮った。菜々子は大丸を見つめていた。隼はそんな菜々子の姿を見ていた。
「ね!旧居留地まわっていい?」
日奈が隼を見た。大丸からハーバーランドまで、メリケンパークを通り抜けておそらくあと20分は歩かなければならない。旧居留地は大丸周辺にあるが、旧居留地のライトアップまで見て回ったら、いつ着くか分かったものではない、と隼は思った。
「だめだ。そもそも日奈、今日は門限は大丈夫なのか?」
へへーんと日奈は言ってピースサインをした。
「21時!今日のわたしは無敵なの!」
隼は菜々子を見た。
「わたしなら大丈夫だよ」
菜々子は微笑んだ。
「じゃあ、ちょっとだけ、な、日奈ちゃん」
亮介も苦笑いして言った。
「やった!」
そのあと四人は旧居留地を見て回ったが、それは『ちょっと』ではなかった。明石町筋、神戸市立博物館。数々の種類の近代洋風建築を、ひととおり見て回った。立ち並ぶブランドショップやカフェ・レストランは暖色で上品に照らされていて、石畳風の歩道すらも明るかった。
レンガ色の壁と街路樹のイルミネーションが織り成す空間の中で呼吸をすると、幻想的な冬の空気が入ってきた。それらの建物に囲まれると、まるで本当にヨーロッパの街の夜を歩いているようだった。なのに、ひとつひとつの灯りを見つめる菜々子の瞳は、なぜだか、ただ光を反射しているだけのように思えて、隼は菜々子に声をかけられなかった。
メリケン波止場の歩道橋からメリケンパークを抜けて、四人は『MOSAIC』の前の海沿いにようやく腰をおろした。
「あー、疲れた」
日奈が言った。
「おまえが連れ回したんだろ!」
隼が言うと、みんな笑った。背後の『MOSAIC』からは、聞き心地のいい音楽と、人々の笑い声が流れてきていた。すぐそこにはポートタワーが輝いていた。神戸港は静かに広がり、遥か遠くの神戸空港から離陸する飛行機の光が見えた。四人はしばらく静かに夜景を見つめていたが、少し冷えてきた。
「『MOSAIC』入ろうか」
亮介が言った。
「そうだな、ちょっと暖まろう」
隼が答えた。亮介がよし、と言って続けた。
「いったん完全に屋内に入るか、『MOSAIC』自体も半分外みたいなもんだから」
「じゃあ、あそこのゲーセンは完全に屋内だぞ。みんなでクレーンゲームやろう」
「いいね!やりたい!」日奈が言った。
「よっしゃ!何をゲットしようかな」
「わたしは『つばタン』のぬいぐるみが欲しい!」
「自分で取れよ」
「取ってよ!大事な幼馴染みでしょ」
「よっしゃ、じゃあ俺が取ろうか」
「よっ!雰囲気イケメン!」
「雰囲気やめろって!」
けらけら笑いながら、『MOSAIC』へと続く階段を上がった。ふと日奈が振り返ると、菜々子はまだ、海を見ていた。
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