人狼ハーレム ――奴隷美少女のハニートラップ

青戸礼二

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一章:人狼チュートリアル

9話:BETWEEN 友達 AND 恋人

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「コリちゃん、今いい?」

「ワンワンか、いいよ」

古里太の自室への訪問者は湾子だった。
彼女の「~ッス」という口調は、
基本的に外向きのもので、古里太には使わない。

彼女がその口調を使い出したのは、
中学校の運動部に入ってからだが、
古里太との仲は、その前の小学校の頃から続く。

他の人間と一線を画している証拠として、
古里太に対する呼び名が他と違っていた。


「で、この部屋に来たのは、ボクになんか用事?」

「いや、その……、とくにこれといって」

「じゃあ、世間話する? ここの世間は狭いけど」

「うん、しようしよう」

湾子が、あえて言いたいことを言わないのを、
長いつきあいの古里太もとうぜん察している。

「こんなひどい状況になっちゃって……」

今日の湾子は、今までとは違い、女らしかった。
普段なら、もっと男友達のように遠慮なく話すが、
さすがにこの状況では、場の空気が違っていた。

「コリちゃんのせいじゃないんだけど……」

古里太は対人力に自信がなかったが、
湾子に対してだけは、彼女の思惑を、
テレパシーのように敏感に察知できる。


彼女が何を言いたいか、推察するとつまり、こんなところ――。

今日、われわれは、犯罪組織によって、この人狼館に監禁され、
「人狼ハーレム」というデスゲームに、強制参加させられた。

何も悪いことをしていないのに、処刑されうるというのは、
常識的に考えて、ひどい状況というほかなかった。
もちろん、犯罪組織のせいであって、古里太のせいではないだろう。
だから、メガネ委員長のように、「犯罪者の手先」と責めはしない。

が、まさか、自分を処刑対象に指名する、
などということを、少しでも考えていないか不安だ。
幼なじみの自分は、古里太にとって特別な存在のはず。
処刑するなどという、無慈悲な仕打ちは、どうか絶対してくれるな。

――ざっと、こんなところだろう。幼なじみの間柄なのだから、
いちいち言われなくても、言いたいことは読み取れる。


「ワンちゃんが、悪いわけでもないんだけど……」

古里太も、幼なじみの関係に特有の、
察してもらう遠回しな言い方をした。

「女子のうち、ダレが人狼か、分からないから……」

湾子が人狼の可能性も当然あるのだから、
その疑いが濃厚な場合、特別扱いはできない。
少なくとも、他の女子に疑われるような言動は慎むように。
ざっと、そんな言いたいことを裏に秘めていた。

「うん、それはそうだよね~?」

その微妙な声の調子からは、
「当然だが残念」という、ニュアンスが読み取れた。


お互い相手を傷つけないように、
空気を読んで言葉を選んでいる。

それが、古里太にはもどかしく感じた。

「お前はオレの女になれ!
 なーに、たとえ人狼でも、
 一回目の処刑は見逃してやる」

――などと、そう単純明快に言えたら楽だ。
もちろん、現実では、そんな単純には言えない。
しかし、考えてみれば、なぜ言えないのだろうか?

「友達に噂とかされたら、恥ずかしいし……」

そんなことを、学校生活でなら、お互い言っていただろう。
だが、ここは人狼館だ。プレイヤーは六人しかいない。

しかも、命が掛かっているのだから、
恥ずかしがっているうちに、死んでしまったら、
チャンスを永遠に逃してしまうだろう。


「これは、他の人に言ってないんだけど……」

古里太は意を決して、湾子を安心させてやろうと思った。

「え? なに? もちろん秘密にするよ!」

「ボクの心の中に、『処刑ランキング』がある」

「うん……、ゴクリ」

もったいぶらずに、彼女に核心を話すことにした。

「今、処刑したいトップの人間は、委員長だ!」

「あ、やっぱりね。うぷぷ」

湾子は思わず笑ってしまう。
予想はしていたのだろうが、
本人から告げられると、安心するのだろう。

そして、委員長が処刑候補のトップということは、
自分は、処刑から一歩遠のくということでもある。

もちろん、処刑候補トップを笑うのは意地が悪いが、
ここに本人もいないので、思わず本音が出た形だ。


「プレイヤーには、ほかにキレイでカワイイ女の子がいるし、
 コリちゃんに見捨てられないか、ちょっと心配だったんだ」

人狼館に今いる、女子五人の容姿だけで順位をつければ、
まず、貴常、小音子が上位だろう。その次に兎が来る。
委員長と幼なじみは、最下位争いをする地味な面子だ。

もちろん、美醜の価値観は人それぞれだが、
学園の男子にアンケートを取れば、大体そうなるだろう。

もちろん、「人は見た目が九割」というわけではなく、
湾子の精神的にポジティブな面を評価している。
委員長とはそこで差が付き、順位が逆転することはない。


「いやいや、処刑ランクは顔で選ぶわけじゃないから。
 第一には人狼かどうかだし、それが分からなくても、
 ゲームに勝つために最善を尽くそうと……」

古里太は、どこか言い訳めいていることを自覚しながら、
ひとまず常識的で無難な言い分を述べておくことにした。

「ゲームに勝つのに必死なのはいいけど、
 顔のことはフォローしてくれないのね」

「え? 湾子のことは、美の女神だと思ってるけど!?」

古里太が大げさに言ったので、
湾子は吹き出してしまった。

「ぷぷ、いやそれ……絶対、心にも思ってないでしょ!?」

お互いに笑って、場の雰囲気が少し和んだ。


「マジメな話、ボクは、信頼を裏切りたくないんだ」

「うん、……嬉しい。もし、ひとりしかいない男子が、
 ハーレムのご主人さまが、コリくんじゃなかったら、
 って考えると、やっぱりコリくんが一番だよ!」

古里太は考えたこともなかったが、
たしかに、もしそんな状況があるなら、
湾子にとって、それよりかはマシなのか。

「コリくんと一緒に命を賭けるゲームに参加させられたのは、
 なにかの運命なのかもね。悲劇かもしれないけど……」

湾子はそう言うと、古里太に近づき、とつぜん彼の唇を奪う。
古里太は驚いたが、すぐに目を閉じて、彼女を受け入れた。

悲しいことに、この状況下では、百パーセント信じられず、
「ハニートラップ」の疑いが、どうしても残ってしまう。

だが今、この一瞬だけは、それも忘れることにする。
彼は、ファーストキスの体験に没頭して、陶酔した。
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