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一章:人狼チュートリアル
10話:牙王 AND 人狼少女
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照明はベッドサイドライトだけが照らす薄暗い個室の中、
黒セーラーの上にパーカーを羽織った少女がひとりいた。
彼女は、人狼館に招かれた五人の少女のひとり。
フードを頭にかぶっていて、その顔は見えない。
玄関ホールにあるものよりかは、だいぶ小さい液晶モニタを、
テーブルの上に置き、イスに座ったパーカーの少女は、
その画面を視聴する。画面に映るのは、ゲームマスターの牙王だ。
「ヤッホー、牙王だおー!
牙王の『人狼ホットライン』、はーじめーるおー!」
一度聞いたら耳につく、牙王のアニメチックボイスが聞こえる。
やはり、玄関ホールのものよりかは、はるかに小さい音量だ。
部屋の外に音が漏れてしまっては、処刑されてしまう恐れがある。
「さて、キミの『殺人計画』を検討した結果……、
ルール上可能だお! 後は実行の機会を待つだけだお」
パーカー少女は、自室に戻った後、「殺人計画」を練り、
そしてそれを牙王に教えた。ルールに反しないか、相談するためだ。
一発勝負の出たとこ勝負で、やってみたらルール違反で、
処刑されてしまう可能性があるのでは、不安が残る。
しかしそれにしても、なぜわざわざ親切に相談してくれるのか?
人狼役の少女は、それを牙王に尋ねたところ、次のように答えた。
人狼の少女も、しょせん十代の少女だから、
殺人という重大な体験をするには、荷が重すぎる。
もし、メンタル的な不安が表に出てしまうと、
その挙動不審な言動から、人狼とバレてしまう恐れがある。
だから、精神的に安定させるために、
GMの牙王が人狼の相談役になっている。
過去に何回もゲームのGMをした牙王の経験から、
「人狼ホットライン」のシステムができたらしい。
過去に精神不安定でバレた人狼がいたのだろうか。
「人を殺す体験というのは、非常に重大なものだお。
だから、殺人のことは実行時まで、もう意識しなくていい。
後はあの男の子、すなわちハーレムマスターを、
どう攻略するかに集中した方が、気が楽だお」
牙王の言う通りだろう、と人狼少女は思った。
だいたい殺人の前に処刑されてしまっては、お話にならない。
しかし、「攻略」、それも「性的誘惑」による攻略、
というのが上手くいくかどうか不安だった。
人狼少女は処女だったからだ。
人狼少女に、本格的な恋愛経験はなかった。
それでも、ハニートラップを仕掛けなければならない。
処刑対象に選ばれては、そこでおしまいだからだ。
「それに、あの男の子も、そんな悪くはないだロウ?
頭脳戦や心理戦が面白くなりそうというほかに、
恋愛劇が面白くなりそうという基準でも、
このゲームに参加するプレイヤーを選考したんだお」
「恋愛劇」という言い方に、人狼少女は反応した。
恋愛劇、それに興じるのも悪くないかもしれない。
攻略が成功しようと、失敗しようと、劇を楽しむ。
殺人よりは恋愛のことを考える方が、はるかにマシだろう。
人生が、あと少ししか残されてないかもしれないのだから。
牙王と話をしていた人狼少女は、話をしているうちに、
どんより曇り空のような重い気分が、少し軽くなった。
もちろん、牙王はGMだから、表面上の役を演じているだけで、
なにか家族や恋人のような、真の絆で結ばれているわけではない。
しかしそれでも、孤独な人狼少女には、
牙王の存在が大きな安心感をもたらしてくれた。
牙王との通信を終えると、液晶は真っ暗になり、
その黒い画面に自分の顔が映った。
このゲームに勝ち残り、生き残る。
人狼少女は、そう固く決心した。
そして、殺人と、それが露見して、
処刑されるかもしれないという恐怖から、
恋愛への好奇心へと心が移って、笑うことができた。
画面に映った顔は、邪悪だが美しい。
こんな表情は、自分でも初めて見た。
自分の中のもうひとりの自分と出会った感覚だ。
人狼少女は、新しい自分を受け入れる。
黒セーラーの上にパーカーを羽織った少女がひとりいた。
彼女は、人狼館に招かれた五人の少女のひとり。
フードを頭にかぶっていて、その顔は見えない。
玄関ホールにあるものよりかは、だいぶ小さい液晶モニタを、
テーブルの上に置き、イスに座ったパーカーの少女は、
その画面を視聴する。画面に映るのは、ゲームマスターの牙王だ。
「ヤッホー、牙王だおー!
牙王の『人狼ホットライン』、はーじめーるおー!」
一度聞いたら耳につく、牙王のアニメチックボイスが聞こえる。
やはり、玄関ホールのものよりかは、はるかに小さい音量だ。
部屋の外に音が漏れてしまっては、処刑されてしまう恐れがある。
「さて、キミの『殺人計画』を検討した結果……、
ルール上可能だお! 後は実行の機会を待つだけだお」
パーカー少女は、自室に戻った後、「殺人計画」を練り、
そしてそれを牙王に教えた。ルールに反しないか、相談するためだ。
一発勝負の出たとこ勝負で、やってみたらルール違反で、
処刑されてしまう可能性があるのでは、不安が残る。
しかしそれにしても、なぜわざわざ親切に相談してくれるのか?
人狼役の少女は、それを牙王に尋ねたところ、次のように答えた。
人狼の少女も、しょせん十代の少女だから、
殺人という重大な体験をするには、荷が重すぎる。
もし、メンタル的な不安が表に出てしまうと、
その挙動不審な言動から、人狼とバレてしまう恐れがある。
だから、精神的に安定させるために、
GMの牙王が人狼の相談役になっている。
過去に何回もゲームのGMをした牙王の経験から、
「人狼ホットライン」のシステムができたらしい。
過去に精神不安定でバレた人狼がいたのだろうか。
「人を殺す体験というのは、非常に重大なものだお。
だから、殺人のことは実行時まで、もう意識しなくていい。
後はあの男の子、すなわちハーレムマスターを、
どう攻略するかに集中した方が、気が楽だお」
牙王の言う通りだろう、と人狼少女は思った。
だいたい殺人の前に処刑されてしまっては、お話にならない。
しかし、「攻略」、それも「性的誘惑」による攻略、
というのが上手くいくかどうか不安だった。
人狼少女は処女だったからだ。
人狼少女に、本格的な恋愛経験はなかった。
それでも、ハニートラップを仕掛けなければならない。
処刑対象に選ばれては、そこでおしまいだからだ。
「それに、あの男の子も、そんな悪くはないだロウ?
頭脳戦や心理戦が面白くなりそうというほかに、
恋愛劇が面白くなりそうという基準でも、
このゲームに参加するプレイヤーを選考したんだお」
「恋愛劇」という言い方に、人狼少女は反応した。
恋愛劇、それに興じるのも悪くないかもしれない。
攻略が成功しようと、失敗しようと、劇を楽しむ。
殺人よりは恋愛のことを考える方が、はるかにマシだろう。
人生が、あと少ししか残されてないかもしれないのだから。
牙王と話をしていた人狼少女は、話をしているうちに、
どんより曇り空のような重い気分が、少し軽くなった。
もちろん、牙王はGMだから、表面上の役を演じているだけで、
なにか家族や恋人のような、真の絆で結ばれているわけではない。
しかしそれでも、孤独な人狼少女には、
牙王の存在が大きな安心感をもたらしてくれた。
牙王との通信を終えると、液晶は真っ暗になり、
その黒い画面に自分の顔が映った。
このゲームに勝ち残り、生き残る。
人狼少女は、そう固く決心した。
そして、殺人と、それが露見して、
処刑されるかもしれないという恐怖から、
恋愛への好奇心へと心が移って、笑うことができた。
画面に映った顔は、邪悪だが美しい。
こんな表情は、自分でも初めて見た。
自分の中のもうひとりの自分と出会った感覚だ。
人狼少女は、新しい自分を受け入れる。
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