2 / 34
第一章 自分探し
第2話 命綱
しおりを挟む
【前回】目は覚めたが記憶はなくなっていた
第2話 命綱
――幸いにも身近な所に。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
その後も色んな説明を受け、色んな質問をしたが実感のある物は何1つなかった。
とりあえず、記憶障害以外には大きな問題は見られず、今も尚俺を苦しめている怪我はまだ治療途中の物だという事でそこまで問題ではないらしい。
ただ長らく昏睡状態だったのもあり、同時にずっと安静にしていたからこそここまで回復している為、しばらくは日常生活においての運動も禁止。当然、体育の授業への出席も禁じられ、教科書を読んだり。別途用意してくれるらしい課題をこなすようにと伝えられた。
一応は退院の許可を貰えたのもあり、今は病衣からこの学校の制服だという長くて黒いローブ、誰かの形見だと言うサファイアが埋め込まれたネックレス、対心霊用に特注で作ってもらったというブレスレットを右手首に着けている。
後、その他にも蓮燔という俺の友人で、寮も同室だという彼とお揃いの黒い十字架のピアスを右耳にだけ付けている。
変なファッションだな……。何か、新手の葬儀屋みたいだ。
そのまま、先程まで俺が寝ていたベッドに座ってそのご友人とやらのお迎えを待っている。
年齢的には18との事で、そんな年で……と思わなくもないがそれ以前に俺は記憶がない。それ故、自分の部屋までの道も分からないのだから有難いと思うべきだろう。
それに伴い、俺の中の好奇心が爆発した。
ただ待っているのは非常に暇だった。それ故、色んな所を調べてみる事にした。
先生が預かってくれていたという俺の私物の入ったバック。その中にはスマホ、ノートパソコン、幾つかの小説、財布、メモ帳にペンとかいうあまり個性が見られないラインナップ。
しかもペンはボールペンではなく万年筆だそうで、これではまるで執筆でもしているような勢いだ。
財布の中身はまぁまぁ多いかなと思えるぐらいの物。まぁ記憶がない今の俺にはこれが一般的なのかどうかは分からない。
小説は……ジャンルも世界観もバラバラで、きっと目に入った物。特に、グラフィックが好みの物でかつ題名も面白そうなら何も考えずに買ってきたのだろうと思えるような物ばかり。
でも、栞がほんの中盤にまで差し掛かっているのを見るとこれは気に入っているのだろう。
スマホとノートパソコンは……やはり暗証番号があるのか、どうしても思い出せないので諦めた。
絶対この中に重要なヒントとかがありそうだけど……言っても仕方ない、か。
メモ帳に記されている様子をみるとかなりマメな性格で、かつ想像力が豊かな人物だった事が見て取れる。それも、かなり綺麗な筆跡で。
試しにペンを手に取り、教えてもらった名前をフルネームで。かつ、漢字で書いてみると特に意識もしていないのに筆跡が一致する。どうやら、これが普通の字らしい。
一縷の望みを抱いてメモ帳を最初から最後まで読んでみるも、このメモ帳はまだ全体の10%も満たしていないし、そういう個人情報は一切確認出来ない。
防犯をしっかりしているという点ではかなり良いのかもしれないが……それでも今回のような状況になると困る事の方が多い。
「奏、ごめん! 遅くなった!」
声と共にカーテンがシャッ、と捲られる。
俺の視界に入ってきたのは蒼い髪と目に眼鏡をしたこれまた身長の高い男。恐らく、こいつが蓮燔なんだろう。
一応……確認しとくか。
「お前が……蓮燔?」
「あ、そっか……。おう、俺が蓮燔。悠祇飅 蓮燔。第2学年次席でお前と同室。ほら、ピアス。これ、お前とお揃いなんだぜ。」
「……女子みたいな事をするんだな。」
「……良かった。記憶はなくてもその厳しさと遠慮のなさは健在だな。それで……本当にもう良いのか? 怪我、結構酷いって言われてずっと見舞いにも行けなかったんだけど……。」
「先生の話では大丈夫らしい。……まぁ、日常生活でも運動しないようにとは言われてるけど。」
「そう、か。うん、そうだよな。それで、歩いたりとかは? 荷物とか、負担がかかるようなら俺が運ぶけど。」
「そこまで酷くない。」
「そっか、じゃあ行こうぜ。歩幅、合わせるからさ。」
「……助かる。」
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第3話 贅沢の極み」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。
今後とも『いつぞやの約束は夜空の向こう』をよろしくお願いいたします。
第2話 命綱
――幸いにも身近な所に。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
その後も色んな説明を受け、色んな質問をしたが実感のある物は何1つなかった。
とりあえず、記憶障害以外には大きな問題は見られず、今も尚俺を苦しめている怪我はまだ治療途中の物だという事でそこまで問題ではないらしい。
ただ長らく昏睡状態だったのもあり、同時にずっと安静にしていたからこそここまで回復している為、しばらくは日常生活においての運動も禁止。当然、体育の授業への出席も禁じられ、教科書を読んだり。別途用意してくれるらしい課題をこなすようにと伝えられた。
一応は退院の許可を貰えたのもあり、今は病衣からこの学校の制服だという長くて黒いローブ、誰かの形見だと言うサファイアが埋め込まれたネックレス、対心霊用に特注で作ってもらったというブレスレットを右手首に着けている。
後、その他にも蓮燔という俺の友人で、寮も同室だという彼とお揃いの黒い十字架のピアスを右耳にだけ付けている。
変なファッションだな……。何か、新手の葬儀屋みたいだ。
そのまま、先程まで俺が寝ていたベッドに座ってそのご友人とやらのお迎えを待っている。
年齢的には18との事で、そんな年で……と思わなくもないがそれ以前に俺は記憶がない。それ故、自分の部屋までの道も分からないのだから有難いと思うべきだろう。
それに伴い、俺の中の好奇心が爆発した。
ただ待っているのは非常に暇だった。それ故、色んな所を調べてみる事にした。
先生が預かってくれていたという俺の私物の入ったバック。その中にはスマホ、ノートパソコン、幾つかの小説、財布、メモ帳にペンとかいうあまり個性が見られないラインナップ。
しかもペンはボールペンではなく万年筆だそうで、これではまるで執筆でもしているような勢いだ。
財布の中身はまぁまぁ多いかなと思えるぐらいの物。まぁ記憶がない今の俺にはこれが一般的なのかどうかは分からない。
小説は……ジャンルも世界観もバラバラで、きっと目に入った物。特に、グラフィックが好みの物でかつ題名も面白そうなら何も考えずに買ってきたのだろうと思えるような物ばかり。
でも、栞がほんの中盤にまで差し掛かっているのを見るとこれは気に入っているのだろう。
スマホとノートパソコンは……やはり暗証番号があるのか、どうしても思い出せないので諦めた。
絶対この中に重要なヒントとかがありそうだけど……言っても仕方ない、か。
メモ帳に記されている様子をみるとかなりマメな性格で、かつ想像力が豊かな人物だった事が見て取れる。それも、かなり綺麗な筆跡で。
試しにペンを手に取り、教えてもらった名前をフルネームで。かつ、漢字で書いてみると特に意識もしていないのに筆跡が一致する。どうやら、これが普通の字らしい。
一縷の望みを抱いてメモ帳を最初から最後まで読んでみるも、このメモ帳はまだ全体の10%も満たしていないし、そういう個人情報は一切確認出来ない。
防犯をしっかりしているという点ではかなり良いのかもしれないが……それでも今回のような状況になると困る事の方が多い。
「奏、ごめん! 遅くなった!」
声と共にカーテンがシャッ、と捲られる。
俺の視界に入ってきたのは蒼い髪と目に眼鏡をしたこれまた身長の高い男。恐らく、こいつが蓮燔なんだろう。
一応……確認しとくか。
「お前が……蓮燔?」
「あ、そっか……。おう、俺が蓮燔。悠祇飅 蓮燔。第2学年次席でお前と同室。ほら、ピアス。これ、お前とお揃いなんだぜ。」
「……女子みたいな事をするんだな。」
「……良かった。記憶はなくてもその厳しさと遠慮のなさは健在だな。それで……本当にもう良いのか? 怪我、結構酷いって言われてずっと見舞いにも行けなかったんだけど……。」
「先生の話では大丈夫らしい。……まぁ、日常生活でも運動しないようにとは言われてるけど。」
「そう、か。うん、そうだよな。それで、歩いたりとかは? 荷物とか、負担がかかるようなら俺が運ぶけど。」
「そこまで酷くない。」
「そっか、じゃあ行こうぜ。歩幅、合わせるからさ。」
「……助かる。」
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第3話 贅沢の極み」
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークやスタンプで応援いただけると嬉しいです。
感想なども励みになります。
今後とも『いつぞやの約束は夜空の向こう』をよろしくお願いいたします。
0
あなたにおすすめの小説
【短編】記憶を失っていても
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
7年以上前の記憶のない平民出身のラチェルは、6年前に娘のハリエットを生んでからグリオス国のアンギュロスの森付近の修道院で働きながら暮らしていた。
そんなある日ハリエットは見たことのない白銀色の大樹を見つけたと、母ラチェルに話すのだが……。
これは記憶の全てを失ったラチェル──シェシュティナが全てを取り戻すまでのお話。
※氷雨そら先生、キムラましゅろう先生のシークレットベビー企画開催作品です( ´艸`)
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
龍は唄う 神子と子守唄を
イチイ アキラ
恋愛
『神子が御実家より帰宅される途中、事故に遭い――片目を失った。』
入院していた病室で、さおりはその新聞を読んで「え?」と混乱していた。
何故なら片目を失ったのはさおりであり――さおりは神子ではない。
神子はさおりの双子の妹の、しおりであるからだ。
しかも「しおり」は第三皇子の婚約者であるという。
さおりは片目と記憶を失い、神殿で暮らす事となる。
しおりと皆に勘違いされたまま。
復讐は、冷やして食すのが一番美味い
Yuito_Maru
ファンタジー
3度目の人生を生きるピオニー・レノドン。
1度目の人生は、愛した幼馴染と家族に裏切られ、無垢で無力のまま命を落とした。
2度目は、剣を磨き、王太子の婚約者となるも、1度目より惨めに死んでいった。
3度目は、微笑の裏で傭兵団を率い、冷たく復讐の刃を研ぐ。
狙うは、レノドン伯爵家、そして王家や腐った貴族たち。
「復讐とは、怒りを凍らせて成就する歪んだ喜びだ」――ピオニーは今、その意味を体現する。
-----
外部サイトでも掲載を行っております
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる