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第一章
28 邪念
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作業が終わりかけた頃、セーグネルが分隊員の元に帰ってきた。
戻ってきたセーグネルは分隊員を集め、現在の状況とこれからの作戦命令について分隊員に説明した。
セーグネルによると、敵機動部隊の規模、所在については不明。しかし、当初の目標どおり、作戦は続行するとのことであった。
ただカウルら第二分隊には負傷者が出ていた。先の空襲で敵の攻撃を受けた機銃手の隊員ジオと機銃手補助のアビィである。
アビィのほうは軽傷により、隊への復帰は可能であったが、重傷を負ったジオは──一命はとりとめたものの──戦列には戻れないとのことだった。
兵の補充もなく、そのため、第二分隊は人数が減った今の状態で、引き続き任務に当たることとなった。
「対空警戒を厳にして、敵航空部隊の再襲来に備えよ」
セーグネルは分隊員に指示する。
時刻は一四三〇過ぎ。日はまだ高く、天候も晴天。航空機の飛行になんら支障のない状況であった。
「……」
組み直した掩体のなかで、いつ敵機が襲来してもいいように待機を命じられたカウルであったが、先の空襲による疲れで集中力が切れかけていた。
気を張っていないといけないと分かりつつも、体がだるく瞼が重い。
(くそ……)
硬い甲板に膝をつきながらも、気を抜けば居眠りしてしまいそうだった。
同じ掩体の中、隣にいるシーナもカウル同様、膝立ち姿勢で待機している。対装甲狙撃銃を甲板に置いて、険しい視線で周囲の海や空を睨んでいるシーナは、疲れや消耗をまるで感じさせない様子だった。
──こんなのが、ずっと続くなんて……
頭を力なく垂らしたカウルが悲観する。
どこまでやれば、自分は兵役を免れるのだろう……
この戦争に徴兵されたカウルは自身の行く末が見えない不安さで胸が押し潰される思いだった。
──この作戦が終われば、国に帰られるのだろうか?
徴兵されて以来──新兵訓練所から、そしてこの艦に乗ってからもずっと、誰にも尋ねられない疑問だった。そのような気弱なことを口にすれば、愛国心がないと非難されるのはわかりきっていたからだ。
徴兵された以上、戦うしかない。
カウルに選択肢は与えられていなかった。
(あいつみたいに、怪我をすれば国に帰られるのかな……)
暗い気持ちのなか、カウルの頭にそんな考えがよぎる。
ジオ──分隊の機銃手で、いつもアビィという機銃付きの少女の兵士と一緒にいたあの男の戦争はもう終わったのだ。
確か、彼は今回が初戦であったはずだ。
ろくに戦わずして、もう終わり──彼は治療のため本国に移送されるだろう。
(いいな……)
今のカウルには、負傷したジオを心配したり気の毒に思ったりする気持ちは微塵も起きなかった。むしろ、羨ましくさえ思えた。
──あんなふうにちょうどよく怪我をすれば、国に帰られるのだ。
ふん、とカウルから思わず小さな嘲笑が漏れた。
そしてすぐ、そんな都合のよいことは起こらないとカウルは現実的になる。
戦えるかぎり、ずっと戦わされる──それも死ぬまで……
俯くカウルは、ぎゅっと拳を握りしめ、目を瞑った。
戻ってきたセーグネルは分隊員を集め、現在の状況とこれからの作戦命令について分隊員に説明した。
セーグネルによると、敵機動部隊の規模、所在については不明。しかし、当初の目標どおり、作戦は続行するとのことであった。
ただカウルら第二分隊には負傷者が出ていた。先の空襲で敵の攻撃を受けた機銃手の隊員ジオと機銃手補助のアビィである。
アビィのほうは軽傷により、隊への復帰は可能であったが、重傷を負ったジオは──一命はとりとめたものの──戦列には戻れないとのことだった。
兵の補充もなく、そのため、第二分隊は人数が減った今の状態で、引き続き任務に当たることとなった。
「対空警戒を厳にして、敵航空部隊の再襲来に備えよ」
セーグネルは分隊員に指示する。
時刻は一四三〇過ぎ。日はまだ高く、天候も晴天。航空機の飛行になんら支障のない状況であった。
「……」
組み直した掩体のなかで、いつ敵機が襲来してもいいように待機を命じられたカウルであったが、先の空襲による疲れで集中力が切れかけていた。
気を張っていないといけないと分かりつつも、体がだるく瞼が重い。
(くそ……)
硬い甲板に膝をつきながらも、気を抜けば居眠りしてしまいそうだった。
同じ掩体の中、隣にいるシーナもカウル同様、膝立ち姿勢で待機している。対装甲狙撃銃を甲板に置いて、険しい視線で周囲の海や空を睨んでいるシーナは、疲れや消耗をまるで感じさせない様子だった。
──こんなのが、ずっと続くなんて……
頭を力なく垂らしたカウルが悲観する。
どこまでやれば、自分は兵役を免れるのだろう……
この戦争に徴兵されたカウルは自身の行く末が見えない不安さで胸が押し潰される思いだった。
──この作戦が終われば、国に帰られるのだろうか?
徴兵されて以来──新兵訓練所から、そしてこの艦に乗ってからもずっと、誰にも尋ねられない疑問だった。そのような気弱なことを口にすれば、愛国心がないと非難されるのはわかりきっていたからだ。
徴兵された以上、戦うしかない。
カウルに選択肢は与えられていなかった。
(あいつみたいに、怪我をすれば国に帰られるのかな……)
暗い気持ちのなか、カウルの頭にそんな考えがよぎる。
ジオ──分隊の機銃手で、いつもアビィという機銃付きの少女の兵士と一緒にいたあの男の戦争はもう終わったのだ。
確か、彼は今回が初戦であったはずだ。
ろくに戦わずして、もう終わり──彼は治療のため本国に移送されるだろう。
(いいな……)
今のカウルには、負傷したジオを心配したり気の毒に思ったりする気持ちは微塵も起きなかった。むしろ、羨ましくさえ思えた。
──あんなふうにちょうどよく怪我をすれば、国に帰られるのだ。
ふん、とカウルから思わず小さな嘲笑が漏れた。
そしてすぐ、そんな都合のよいことは起こらないとカウルは現実的になる。
戦えるかぎり、ずっと戦わされる──それも死ぬまで……
俯くカウルは、ぎゅっと拳を握りしめ、目を瞑った。
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