エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

31 左舷砲戦用意

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カンカンカン──
 総員配置を知らせる艦内アラートが鳴り響く。
 艦内居住区の寝台でまだ眠りのなかにいたカウルは身を跳ね起こした。
──敵!?
 慌てて寝間着から戦闘服に着替えたカウルは、艦内通路に出て、兵員室に急いだ。
(くそ……くそ……)
 なぜ、自分はこんな戦いに巻き込まれなければならないのか、──そんな気持ちを抱きながら、カウルは大急ぎで装備を身に付ける。
 そして、他の兵士らに続いて通路を走り抜け、気密扉から甲板上に飛び出した。
 まばゆい朝日が、カウルの目に差し込む。
 水平線から少し昇ったばかりの太陽が橙色に輝き、その明かりを受けて海面がきらきらと光を反射する。
 これから戦いになるというのに、皮肉なほど美しい朝だった。

「皆、聞け!」
 カウルが第二分隊の配置場所に到着すると、セーグネルが揃った分隊員たちに状況を説明し始めた。
「艦の電探が複数の艦影を探知した」
 電探──電波探信儀は、電波を飛ばし、対象物からの反射波を捉えることで、目標の方位や距離を測定する装置である。
「これより艦載機が当該艦影の識別に向かう」
 セーグネルがそう説明したまさにそのとき、カウルらの頭上を『アマネ』艦載の水上偵察機がプロペラを唸らせながら飛び去っていった。
 セーグネルが続ける。
「もしこれが敵の艦隊なら、水上戦闘となる。総員、戦闘用意!」
「了解!」
 各分隊員は、それぞれの配置につく。
 そのなかには、先の戦闘の序盤で戦いから脱落した女性兵士アビィの姿もあった。
 先の戦闘でアビィが負った傷は打撲程度であったため、今日の戦闘へ復帰することとなったのだ。
(……?)
 彼女の姿が目に入ったカウルであったが、気になったのはその表情だった。
 うつむき気味にしているアビィの顔は血の気を失って青ざめており、瞬きを忘れたように開かれたままの瞳はどこに焦点をむすんでいるのか定かでない。
(大丈夫か……?)
 カウルはアビィの様子に不安を抱いた。
 彼女の印象は──訓練時や、食堂でしか見かけたことはなかったが──もっと勝ち気というか快活な性格のように感じられた。 
 一方、彼女といつも一緒にいた機銃手ジオはこの場にはいなかった。敵航空機の機銃が直撃した彼は、重傷を負ったため艦の治療室で安静にしているのだ。
 そのせいだろうか……──カウルが慮っていると、
「おい!」
 不意に隣にいたシーナに怒鳴られ、はっとカウルは目の前の現実に引き戻された。
 カウルは対物狙撃銃を抱えたシーナに続いて、弾薬が入った背嚢を肩に掛け、土嚢製の掩体の影に入る。

「……了解!」
 分隊通信士が背負う通信機を通じて、艦の司令部から命令を受けたセーグネルが、分隊員に向けて声を張り上げる。
「艦影は敵駆逐艦隊と判明!今作戦の目標と思われる。左舷、砲雷同時戦用意!」

    
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