エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

文字の大きさ
53 / 70
第一章

53 応戦

しおりを挟む
──ダダダッ!ダラララッ!!
 セーグネル以下第二分隊は、襲来した敵の艦上攻撃隊に応戦する。
 敵の攻撃隊一個小隊は五つの戦闘班に分かれ、横並びになって『アマネ』右舷全体に分布するように展開した。
 そのうち、セーグネルたち第二分隊の正面に位置を取った戦闘班、そしてセーグネルたちよりやや後方の、右舷中心部で展開した戦闘班の二つを、セーグネルら第二分隊の隊員たちはそれぞれ分かれて攻撃する。
 艦首寄りの戦闘班は艦首を守備する第一分隊が、艦尾側は第三分隊がそれぞれ守備している。
 
(堅い──)
 自らも射撃を仕掛けながら、セーグネルが苦い表情で奥歯を噛み締める。
 敵の攻撃隊は『律動』によって盾を創り出した鋼鉄の盾でこちらの射撃を防いでいた。
 遠くからでもかなり堅牢に見える敵の盾の防御に対し、味方の射撃は、敵の足止めこそしてはいるものの、敵を死傷させ撃退するほどの有効打には到底なり得ていないのをセーグネルは感じていた。
(『鼓動』を使っていてもダメージを与えられない……)
 小銃を撃つ隊員たちは皆、銃弾に『心』を込めて発射しているのだが、ことごとく敵の掲げる盾に弾かれている。
 それもそのはずで、『律動』によって創造された物体は、能力の使用者の『心』から創り出されている。
 つまり、その物体そのものが能力者の『心』の塊のようなもので、その『存在』はもともとかなり優位なものとなっているのである。
 そのため、セーグネルらが銃弾に『心』を込めて発射したとしても、『存在』の優劣において敵の盾に優ることは厳しく──さらに相手は、『鼓動』や『律動』において高い能力を持つ艦上攻撃隊である──、よしんば対等であったとしても、あとは盾の装甲厚の前に銃弾が弾かれてしまっていた。

 カンッ!カンッ!
 敵の防御に苦戦するなか、セーグネルたちの周囲で敵から放たれた銃弾が掩体や甲板に当たり、火花がはぜる。
「くっ」
 ひゅん、と空を切って銃弾がセーグネルの体を掠めた。
 敵の射撃の精度は高い。
 敵もこちらもお互いに移動をしながらであるのに、今にも命中しそうな敵の攻撃にセーグネルはひしひしと危険を感じていた。
「ひるむなぁっ!」
──とにかく、敵を接近させてはならない。
 なるべく体を縮めて掩体に身を隠しながら、セーグネルは隊員たちに向けて声を張り上げて彼らを奮わせる。
 現在、第二分隊で戦闘中の人員はセーグネル含めて計六名しかいない。それも、苦戦を強いられている大きな要因だ。
「きゃーっ!」
 すさまじい銃撃音に覆われるなか、女性兵士のアビィは独り叫び声をあげていた。
 戦闘開始を目前にして錯乱してしまった少女を、セーグネルたちは結局立ち直らせることができず、そのまま放置されたアビィは掩体の陰で身を丸めていた。

 ドドドドドッ!!
 ノベルの機銃が弾帯を吸い込みながら凄まじい発射速度で機銃弾を発射する。
 ノベルは機銃弾に『心』は込めていない。
 機銃弾は小銃弾よりはるかに大型でそれ自体で破格の威力を持つ。加えて、高い発射速度を持つ機銃の機銃弾すべてに『心』を込めていたら、すぐにノベルの体力──『心』を消耗してしまうからだ。
 しかし、『心』の注入を欠いていても、機銃による攻撃は分隊のなかでは大きな火力である。ノベルは分隊の攻撃を牽引する気持ちで、果敢に機銃を正面の敵に撃ちかけていた。
「くっ……」
 だが、機銃の火力を以てしても、空を漂う敵の攻撃隊の防御は破れない。
 ヒュン!カンッ!
 敵の攻撃を間近にしながらも、機銃を握り続けるノベル。
「──援護頼む!」
 間もなくして、機銃に備え付けられている箱形弾薬の残りが少なくなり、ノベルは周りの分隊員に援護を頼んだ。
「了解っ!」
 心得た分隊員がノベルをフォローする形で敵への攻撃を引き受け、その間に弾薬を撃ち尽くしたノベルは、次の箱形弾倉を機銃に取り付け、再び攻撃を再開しようとした。
 その時だった──
 ダァンッ!
「!!」
 敵の一射がノベルに命中した。
 ノベルがもんどりうって、仰向けに甲板上に倒れる。 
「ノベルッ!」
 セーグネルが叫びに近い声を上げる。
「大丈夫か!?──」
 射撃をやめ、彼のもとに駆け寄ろうとしたセーグネルであったが、
「この野郎ぉっ!!」
 セーグネルがノベルのもとにたどり着くより先に、ノベルはガバッっと身を起こして、すぐにまた機銃に取りついて敵に向けて発砲し始めた。
「ノベルっ、怪我は──」
 ダメージはないのか、彼を気づかい声をかけようとするセーグネルであったが、
「おおおおっ!」
  興奮しているのか、ノベルはこちらの呼び掛けも耳に入っていないようすで、かじりつくように機銃の銃把を握っている。
「くたばれぇっ!!」
「──っ!?」
 普段温厚な彼からは想像できない荒々しい口調で汚い言葉を吐くノベルに、セーグネルは気圧された。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

処理中です...