エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

55 ベルニカ対第三分隊

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 右舷で、赤国の艦上攻撃隊と『アマネ』艦上守備隊が戦闘を開始した頃──
(やっぱり、『何か』来た──)
 左舷で対空迎撃をしていたシーナは、右舷の方向に違和感──敵の存在の気配を感じていた。
 すると──
「おい、お前たち!」
 後ろから第四分隊の兵士が近づき、シーナとカウルに声をかけた。
「ここの支援はもういい!右舷の持ち場に戻れ!」
「えっ?!」
 シーナは敵の艦砲を警戒し続けているので、カウルが代わってその兵士に向き合う。
「上からの命令だ!現在、右舷が敵部隊に攻撃されている。今からお待ちたちは第二分隊に戻り、右舷を守備しろ!」
「──了解!」
 カウルが返答すると、兵士はすぐに戻っていった。
「スレヴィアス上等兵──」
 カウルがシーナにそのことを伝えようとすると、
「いい!聞こえたっ!」
とぶっきらぼうに吐き捨てた。
「戻るぞっ!」
 そして、シーナは対装甲狙撃銃を下げ、左舷の敵艦隊に背を向けて走り出した。
「了解っ!」
 カウルも急いで弾薬の入った背嚢を担ぎ上げ、シーナのあとに続いて右舷を目指した。



「っ……!?」
 突如『アマネ』右舷の甲板に乗り込んで来た敵兵に、第三分隊は動揺した。
(──女?)
 そして、その姿を間近で見た兵士は驚愕する。
 単身突撃してきたその敵は防弾装具も鉄帽も身に付けていないだけでなく、その姿はまだ十代の少女のものだった。
 黒い戦闘服に身を包んだ少女が甲板に無表情のままたたずみ、大きく開かれた瞳をこちらに向けている。
 その異様な雰囲気に、第三分隊の隊員は一瞬呑まれてしまう。
 すると、敵兵の少女の右手から光を纏う粒子が放出され、その光の中から細長い物体が現れた。
 銀色に輝く、身幅の小さな細長い両刃の剣──『律動』で創り出した細剣である。
「撃てぇ!」
 敵意を察知した第三分隊の分隊長がすぐに命令を下し、分隊員らが少女に銃口を向ける。
 ダダダッ!ダダダッ!!
 瞬く無数の発砲炎。
──しかし、
「っ!」
 第三分隊が発砲した瞬間、敵兵の少女──ベルニカ=リーヴァは驚異的な瞬発力で宙へと跳んだ。
 ベルニカはくるりと身体を回転させ、宙返りしながら第三分隊に向けて飛び込む。
 瞬間的な動きに、第三分隊の隊員はそれを目で追えなかった。
 発射された銃弾の先にはもうベルニカはいない。
 隊員の真上を宙返りで飛び越えたベルニカは、すれ違う瞬間に右手に握る細剣を振るった。
 刀身がきらめいた直後、鮮やかな赤いしぶきがぱっと散る。「──?」
 上から首もとを切られた隊員は何が起きたかわからないまま、その場に倒れた。
 「うわっ!」
 銃撃をかわし、掩体の内側に入り込んだベルニカに分隊員が慌てる。
 隣にいた彼の仲間はたった今この少女に斬殺されてしまった。
 隊員がベルニカに急いで小銃を向けるも、
「ぶっ」
 自分に向かって突き出された細剣に胸を貫かれてしまった。
「こいつっ!」
 瞬く間に二人の分隊員を殺害した敵兵に、周囲の掩体の隊員たちに動揺が走る。  
 彼らもベルニカに銃口を向け直すも、少女はすでに掩体の内側に入り込んだため、射線上に味方の姿があり、隊員たちは引き金を引くことができない。
 タタタッ!
 隊員らが射撃を躊躇し、小銃ではなく何か他の武器で応戦しようと慌てているうちに、ベルニカは素早く甲板を駆けて、彼らに接近する。
「わっ!」「ぐっ!」
 隊員が何かしようとする前にベルニカは彼の首を細剣で刎ねる。
 その隣にいた別の隊員は、恐怖してなんとか身を守ろうと持っていた小銃を防衛本能のままに横にして掲げた。そうしてベルニカの細剣を防ごうとするも、ベルニカは冷静にその防御の穴をついて、隙間を縫うように細剣を彼の体に突き立てた。
 二つの掩体のなかの兵士らを殺害したベルニカは、また別の掩体──背中側にいる兵士らのほうを向いた。
「……」
 その表情は何も映しはしない無そのものだった。
「おおおおっ!」
 一人の兵士が、雄叫びを上げてベルニカに向かう。
 隊員たちを殺されて怒りに猛る第三分隊の分隊長であった。
 振りかぶった右手には『律動』で創造された剣──サーベル状の片手剣が握られていた。
 ブン!と音を立ててサーベルが振り落ろされる。
 しかし、ベルニカはすっと身を引いてそれを避けた。
「おおおっ」
 第三分隊分隊長が下ろしたサーベルを返し、すぐさま切り上げるも、またもベルニカは後ろに下がってそれをかわした。
──こいつ!!
 復讐に燃える分隊長には、それが敵が怖じ気づいて逃げているような気がして、部下を殺された彼の心にさらに火をつけた。
「しねえっ!」
 分隊長が相手を呪う叫びをあげて、切り上げたサーベルを再び敵に振り下ろそうと刃を返したときだった。
 ベルニカがすっ、と空いている左手を右脇のホルスターに差し込んだ。
 抜き出したのは、長い銃身を持つ大型自動拳銃だった。
 ベルニカの左手に握られた黒光りする大きな拳銃が、分隊長がサーベルを振り下ろすより速く、彼に向けられる。
 ガァン!!!
 一発の大音量の銃声が鳴り響いた。
(──え?)
 ブン、と勢いよく振り下ろした分隊長の腕の先には何もついていなかった。
──一体なにが……?
 敵を斬るはずのサーベルがない。ただ熱い、という感覚が右腕の先にあった。
 彼の右手は、サーベルを握ったまま宙を飛んでいた。
 目の前の敵はいつの間にか拳銃をこちらに向けていて、こちらは棒になった右腕を相手に向けているだけだ。
 右腕から飛んだ血のしずくが、少女の頬につくのがスローモーションで分隊長の目に入った。
「──ぁ」
 ガァン!!
 彼が何か言おうとする前に、再び重たい銃声が響き、ベルニカの『心』が込められた大口径の拳銃弾は、分隊長の防弾装具ごと彼の胸を貫いて、その衝撃が彼の体内を破壊した。
 ガタッ!
 宙を舞った分隊長の右手がサーベルごと甲板の上に落ちた。
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