エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

56 紅蓮の奔流

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「分隊長……」
 突如甲板に乗り込んで来た敵兵によって、一分も経たないうちに第三分隊は半数の隊員を──それも分隊長も含めて殺されてしまった。
 残った隊員たちは、この事態に完全に浮き足立った。
「だ、だれかっ!!」
 そうして、残った隊員はそれぞれ助けを求めて敵兵──ベルニカに背を向けて散り散りに逃げ出した。
 そのうち、艦尾に向けて逃げ出した隊員のなかに、ベルニカは対空迎撃要員の兵士を見つけていた。
 ガァン!!
 ベルニカが、握っていた大型拳銃の引き金を機械的に引いた。
「ぐっ」
 銃撃を背中に受けた第三分隊の対空迎撃要員はあっけなく倒れる。
「……」
 一帯を駆逐し、対空迎撃要員までも排除したベルニカが、次の攻撃目標を求めて、周囲を見る。
──すると、
「おい!」
 ベルニカの上空に、ベルニカのあとを追いかけてきたグレンがやってきた。
 グレンは小銃をあたりに発射しながら、その場に滞空している。
「場所を変えるぞ!」
 グレンは強い口調でベルニカにそう言い、顎で『アマネ』の艦首のほうを指した。
「……」
 ベルニカは彼を一瞥すると、無表情のまま何も言わずに、『アマネ』の艦首側へと走っていく。
「ちっ」
 相変わらず愛想のないベルニカに、グレンはやってられるかとばかりに舌打ちをした。
 グレンが彼女に右舷を伝って艦首側に向かうよう指示したのは、艦首方面には味方が展開しているからだ。
 攻撃隊は『アマネ』右舷に広がって展開したので、逆にベルニカが艦尾方向に向かえば、味方の援護は届かない。
 味方の援護を受けつつ、右舷の残りの戦力を排除できれば上出来だろう──そう判断しての彼女への指示だった。
 
「行け行け行け!!」
 すると、宙に浮いままのグレンの視界に、『アマネ』艦尾方向から、敵兵が複数やって来るのが見えた。
 右舷後部に襲撃を受け援軍にやってきた、『アマネ』艦尾に配置された第六分隊の兵士たちであった。
 グレンの姿を視認したのか、その兵士たちはグレンに向けて発砲し始める。
「フン」
 グレンは左腕を、手の指を鉤爪のように曲げて彼らのほう──『アマネ』艦尾側に突きだした。

──『電子』の律動。

 グレンが『電子』が発する『律動』を想起した。
 するとグレンの左手に集中させた『心』の粒子から、電子が創造された。
 それにより、グレンの左手が電気を帯びる。
 そのままグレンは、すぐにもうひとつ新たに別の『律動』を想起する。
──『液体燃料』の律動。
 その瞬間、グレンの左手の手のひらから、透明の液体が勢いよく吹き出した。

 グレンが想起したのは、『液体燃料』の律動である。
 『心』の粒子を可燃性の液体に変化させ、それを『思念動力』によって一直線状に放射したのだ。
 放射された液体燃料が『アマネ』右舷後部から艦尾に降りかかる。
「なっ!」
 『アマネ』右舷後部を目指していた第六分隊の隊員は、その液体を体に浴びてしまった。

──『二式紅炎(にしきこうえん)』

 直後、グレンが鉤爪状に曲げた左手の指をくっと寄せる。
 すると帯電していた左手の指から、放出中の液体燃料に電気が走り、バチッと火花が散った。
 ゴオオオッ!!
 高圧の電流によって液体燃料が着火された。
 液体燃料はたちまち、燃え盛る炎の奔流となって『アマネ』甲板を襲う。
 『二式紅炎』──可燃性の物質を『律動』で創り出し、それを着火して火炎を『線状(二式)』で放出する戦闘技能である。
──ゴオオオオッ!
 黒煙を吹き上げながら、燃え盛る紅蓮が甲板に伸び、広がる。
 その火炎は、気体の炎とは違って燃える『液体』であるために、甲板の上を這うように広がり、一帯を隈(くま)無く燃やす。
 「あ"あ"あ"あ"っ!!」
 燃える液体燃料を浴びた兵士が、耳のつんざく悲鳴を上げる。
 ある者は身を焼く炎に悶えながら、水を求めて海に落ち、またある者とぼとぼ歩いたのち甲板に倒れてそのまま燃えた。

「なっ──」
 黒煙をあげる『アマネ』後部甲板。
 その異変は右舷前部のセーグネルたちの目にも入った。
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