【R18】君に触れる、全てのものから

すぐる

文字の大きさ
2 / 144
第1部

新入生

しおりを挟む
桜咲く…


宮原は真新しい灰色のブレザーを手に通し、私立蒼敬学園の入学式典に出席していた。
校長、会長、理事長、などなど、お偉いさん達のスピーチが次々と続く。

『…眠っ……まだあんのかよ…』

宮原は首を何度も左右に擡げながら睡魔と必死に戦っていると、隣の席に座っていた同級生がフリスクを差し出してきた。

「食べる?」

宮原は「ありがと」と言い、フリスクを数個貰うと口の中へ放り込む。
独特のミントの味に、半分閉じていた目を何とか開けてみる。

「早く部活動のプロモーションが始まってくれないかなぁ…
サッカー部が見たいんだけど…」

宮原が小声で呟くと隣の席から「お前もサッカー部希望なの?」と訊かれる。

「勿論!
蒼敬学園のサッカー部に入りたくって進路を変更したくらいだからね!」

『そして、憧れの沢海先輩と同じピッチに立つって、決めているんだ!
絶対に譲れない!』

宮原の無邪気な子供のような破顔に釣られて、笑顔になってしまう。

「ーーー多分、同じクラスメイトだよな?
オレ、松下。
宜しくな」
「オレ、宮原。
式典が終わったら一緒にサッカー部へ行こう」
「あぁ」

視線を外した松下を宮原は横目で見てしまう。

『サッカーのポジションは何処なんだろう?』

高校1年生ながら、座っていても十分に分かる身長の高さと全身の骨格、そしてスラリと伸びた筋肉。
宮原はどんなに努力をしても、自分には手に入れられない身体に少しだけ嫉妬してしまう。
宮原自身もサッカー選手としては、体脂肪率を比べてみても筋肉量はある方だ。
だが、試合中にボールの競り合いでボディコンタクトとなると、どうしても当たり負けをしてしまう事があり、それは自分でも自覚はしていた。

『せめて、身長は180cmは欲しいよな…』

宮原は小さく溜息を吐いた。


ステージ上ではサッカー部のプロモーションが始まろうとしていた。

部長の「藤本」先輩が挨拶すると、よくある「サッカー部に是非入部してください!」のようなお願い事をするのかと思いきや、全く違った。

「蒼敬サッカー部です。
うちの部活は誰でも入部を受け入れるという訳じゃありません。
50m走6.5秒以上、10km走40分、このタイムより遅い人は他の部活を選んで下さい。
オレ達、蒼学サッカー部は夏から始まる予選、選手権に向けて去年取れなかった優勝を狙います。
オレ達と本気で国立に行きたい人。
入部を待っています」

藤本の一歩後ろに下がって、蒼敬サッカー部のレギュラーがユニフォームを着用して、整列している様に宮原は身震いをした。
藤本の近くに沢海のユニフォーム姿を見つけ、感嘆の声が漏れてしまう。

「カッコいいなぁ…」

松下は夢見心地な宮原を尻目に念の為に確認をする。

「なぁ、宮原。
お前、さっき藤本先輩の基準タイム……
走力はクリアしているよな?」

松下は宮原の身体能力がどれくらいあるのか全く知らないので、宮原を外見で判断してしまう。
宮原も松下に全身を上から下まで視線を流されてしまい、一瞬、ムッとしてしまう。

そして、松下へ釘を刺しておく。

「オレ、クラブ活動でサッカー部はなかったから、中学3年間は陸上部に所属。
中学2年の時に短距離から長距離にコンバートしたんだけど。
短距離のタイムは……」

と宮原の言い方に明らかに刺がある。

松下は「ゴメン」とすぐに謝り、「オレが結構、ギリギリかも…」と笑った。

宮原は吹き出してしまい、松下の腕を小突いた。

「ダメじゃん!それ!!」





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...