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第1部
嘘の証明
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宮原はタイルの床に座り込んだまま何も動けず、無機質に光る電灯と見知らない天井をただぼんやりと見詰めていた。
トイレ内の空調が吹き抜け、宮原の濡れた身体に触れると、少しずつ体温を奪っていく。
冷たくなる肌の上を水が滑ると全身に震えが走り、強張りに似た感覚が沁みていく。
「ーーーさ、む……」
鉛のように鈍い肢体を必死に操り、立ち上がろうと左膝に負荷を掛けた瞬間、カクンと脱力してしまい、体制を崩してしまう。
宮原は自分の身体であるにも関わらず、他人の身体のような違和感を感じ、硬直する両手を握り締めた。
勝手に震えてしまう指を押さえ込む為と自我を確かめる術として人差し指を噛み付こうとするが、その指に男の精液が付着しているのが分かる。
今更にこの現状の結果でもある男の精液に驚愕し、鼻腔を劈く臭気に唇を噛み締めた。
「…や……やだっ!
…汚、い……
ーーー汚い……
どうして…どうしてんなんだよっ!」
宮原は不自由な身体を必死に動かそうとするが、自分自身の身体が反発をしているかのように自らの意思で動かす事が出来ない。
それでも辛うじて上腕に力を入れ、震える身体を引き摺りながら洗面台に向かう。
両腕を洗面台の淵に引っ掛け、宮原は膝立ちになると蛇口を捻り、手を洗った。
手洗い用のシャボンを大量に取り、汚物を取り除こうと繰り返し手を擦る。
特に男の精液がこびりついた箇所は爪で指の皮膚を引っ掻き、先に噛み付いて自傷してしまっていた箇所を更に傷付けていく。
水流が男の精液を洗い、指から滴る血も洗い、目元に溜まっていた涙が零れ、排水溝に流れていく。
ーーーこのまま、何もかも消えてしまえばいいのにーーー
不用意な感情が自分の中で拒絶を必死に訴えてくる。
ーーーこのまま、何もかも消えてしまえばいいのにーーー
ふいに宮原は視線を上げると目の前に罅が入った鏡が自分を写していた。
鏡の前の自分はずっと憧れていた蒼敬学園のユニフォームを乱雑に着崩し、その眩しい光彩を汚していた。
この現状を理解することが出来ず、自分自身を踏み躙られるような錯覚に目の前の鏡をギリギリと引っ掻く。
現実離れした事実に目を凝らし、改めて自分の外形を見詰めると飛び散った男の精液が黒髪に、両頬にこびり付いていた。
蒼白する顔の表皮が際立つと紅く色付く口唇を映えさせ、男と口付けを交わした事が記憶として蘇ってくる。
その瞬間、堪えきれない感情と共に宮原は激しく嘔吐した。
「ーーーゔぇ…ぇぇっ・・・」
胃液が迫り上がり、口を大きく開けると体内に残っていた男の精液が吐瀉物として吐き出され、見知らない男との淫猥な行為を表していた。
目に見えない深い場所にまで男の精液が浸透してきているようで、宮原は何度も何度も吐き続ける。
宮原は背中を丸めて激しく咳き込むと、嚥下も出来ない程のビリビリとした灼けるような痛みを咽喉で感じる。
横隔膜が上下に動き、迫り上がる口の中の物を洗面台に吐き出すと真っ赤な喀血が広がった。
自分自身の体内にも流れるその鮮やかな色彩に、宮原は必死に嗚咽を堪えた。
ーーーあの日。
サッカー部の部室でオレを犯したのはーーー
その実相を宮原は、今日という日常の中で全く気が付かなかった訳ではない。
一日一日と経過していく度に些細な事で傷付き、流れる血は瘡蓋で覆い隠し、そこから生まれた小さな綻びは段々と大きく、波紋のように広がっていった。
過去の記憶として消去してしまいたい事だとしても、宮原に対してあまりにも精神的に負荷の掛かり過ぎる、見えない痛みが存在している。
今まで何度も自問自答を繰り返し、その度に沢海の言葉の裏を疑い、結果的に沢海の事を信じていないという裏切りの行為をしていた。
沢海の事を信じていたいのに、心の何処かで沢海の事を信じきれずにいた。
沢海の事が好きという気持ちだけを必死に押し通し、自分自身が傷付きたくなくて下らない詮索を止め、隠蔽していた。
ーーーあの日。
サッカー部の部室でオレを犯したのはーーー
真実と虚構が複雑に絡み合い、混乱していたあの時、あの場所から、宮原は自分自身しか信じられないのだと殻に閉じ籠ってしまった。
沢海が伝えようとしていた言葉を遮り、本当の事を知ろうとする気持ちさえ手放してしまった。
弁解も誤解も話す事が出来る猶予さえも与えられなかった沢海に対して、宮原は沢海自身が傷付くと分かっていながら伸ばされた手を受け入れなかった。
鈍く痛んでいた身体の痛みの所為にして、沢海が元凶にあるのだと相違する記憶の上書きをしてしまった。
何も知らなかったと、何も分からなかったと、無関心のまま時間が経過すれば良かったのかもしれない。
だが、宮原の心の一番深い場所でずっと引っ掛かっていた傷口が化膿して腫れ上がり、壊れてしまった。
今になって、漸く分かる。
ーーー沢海先輩じゃない。
ーーー沢海先輩じゃないんだ…
自分の身体に触れてきたベタベタとした脂っぽい手も、耳障りにしか聞こえない興奮状態の荒い呼吸も、暴力的な行為で手荒く自分を組み敷き、覆い被さってきた雄の体臭も、無理矢理に自分の身体の中を引き裂いて犯した陰茎も、全てが違っていた。
どうしてそれが沢海ではないのだと、どうしてそれが沢海である筈がないのだと、今まで自分自身で気付けずにいたんだろう。
優しく確かめるように動く指先も、口元から漏れる熱い呼吸と自分の名前を呼ぶ声音も、沢海の胸元や全身に塗布している香料とそれに混じる沢海の体臭も、『宮原の中に入りたい』と鼓動のようにドクドクと脈打つ陰茎も、沢海と似ても似つかないのに、どうして記憶を間違えてしまったんだろう。
ーーー沢海先輩じゃない。
ーーー沢海先輩じゃないんだ…
ーーー沢海先輩に嘘を吐かれていたんだ。
どうして、沢海先輩はオレに嘘を吐いた?
何よりも自分に対して沢海が嘘を吐いていた事に酷くショックを受けた。
何よりも自分に対して沢海は嘘を吐かないと信じていたからこそ、その背信的な言葉を受け入れらなれなかった。
そんな下らない理由で自分に嘘を吐いてもらいたくなかった。
たとえそれが宮原自身を傷付けてしまう結果になるのだと分かっていたとしても、自分にだけは嘘は吐いてもらいたくなかった。
ーーー信じていた。
ーーー信じていたんだ。
ーーー沢海先輩を。
ーーー沢海先輩だけを。
「ーーーそ…み、せん…
沢海、せんぱ…い
……沢海先輩……
ど、して……
どうして・・・嘘、吐いた…んだよ……
ーーーなんで……
なんで!」
漏れてしまう嗚咽を口元を両手で押さえ、呼吸を詰め、口唇を噛み締める。
「…どうして……
そんな嘘・・・
ーーーオレ……オレの、こと……
そんなに、嫌…い……?
ーーー嫌い、なのか…なぁ……」
『嫌い』という言葉を自らの声で吐露した瞬間、鼓膜を劈く程の耳鳴りが響き、宮原の視界が急激に狭まっていく。
両膝を床に着いている状態でも自分の身体を支えきれずに重心が歪み、視界が大きく旋回してしまう。
茫洋と霞む思考は正常な判断を見失い、ただ本能に似た直情だけが、宮原の身体と心を動かしていく。
「ーーーオレの…こと……キ、ライ…?
オレの事、嫌…い…なの?
ーーー嫌い?ーーー」
宮原は一度、肺胞の中の空気を溜息のようにゆっくりと吐き出すと、幼子のように噦り上げた。
「ーーーオレの、こと……嫌い、なのかなぁ……
もし、そうだと…したら……
ーーーやだなぁ……やだよ……
いやだよぅ…
ーーー沢海先輩……」
混乱する思考は四肢を硬化させ、宮原はタイルの床に座ったまま身体を踞らせていた。
「ーーー沢海せ…ん、ぱい……
…沢海、先輩…
…沢海先輩……」
例え沢海が自分の事を嫌いでも、自分は沢海の事をずっと好きでいたい。
『ーーー初恋、なんだ……』
今まで、自分の中で人を好きになる感情が一体どういう事なのか全く知らなかった。
自分が好きな人の事しか考えられなくなるとか、自分が好きな人の事を大切にしたいとか、自分が好きな人しか他に何もいらないとか、変えられない唯一の大事な存在に『好き』という事を実感する。
沢海先輩の傍にいたい。
沢海先輩と一緒にいたい。
『ーーー初恋、なんだ……』
例え沢海が自分の事を嫌いでも、自分は沢海の事をずっと好きでいたい。
嫌われてもいい。
ーーー何時も温かい両手で抱き締めてくれた。
嫌われてもいい。
ーーー何度も触れられる度に熱い体温に溶かされた。
嫌われてもいい。
ーーー何時もここにいるという、鼓動を感じていた。
沢海先輩の傍にいたい。
沢海先輩と一緒にいたい。
ーーーそれは、叶わない事だったんだろうか。
「ーーー沢海、先輩………
…助け、て・・・
助けてよぅ……」
何度も、何度も宮原は『沢海先輩』と言霊のように繰り返し呟き、名前を呼ぶ。
暗く霞む意識の中に宮原はただ一人の存在だけを求めて手を伸ばし、空白として何も手に触れる事が出来ない虚無感に指先が震える。
ーーー何も感じないんだ。
ーーー何も見えないんだ。
ーーー何も分からないんだ。
「…沢海先輩…」
目が眩む感覚に意識が混濁し、宮原はゆっくりと四肢を投げ出し、タイルの床に倒れ込んだ。
トイレ内の空調が吹き抜け、宮原の濡れた身体に触れると、少しずつ体温を奪っていく。
冷たくなる肌の上を水が滑ると全身に震えが走り、強張りに似た感覚が沁みていく。
「ーーーさ、む……」
鉛のように鈍い肢体を必死に操り、立ち上がろうと左膝に負荷を掛けた瞬間、カクンと脱力してしまい、体制を崩してしまう。
宮原は自分の身体であるにも関わらず、他人の身体のような違和感を感じ、硬直する両手を握り締めた。
勝手に震えてしまう指を押さえ込む為と自我を確かめる術として人差し指を噛み付こうとするが、その指に男の精液が付着しているのが分かる。
今更にこの現状の結果でもある男の精液に驚愕し、鼻腔を劈く臭気に唇を噛み締めた。
「…や……やだっ!
…汚、い……
ーーー汚い……
どうして…どうしてんなんだよっ!」
宮原は不自由な身体を必死に動かそうとするが、自分自身の身体が反発をしているかのように自らの意思で動かす事が出来ない。
それでも辛うじて上腕に力を入れ、震える身体を引き摺りながら洗面台に向かう。
両腕を洗面台の淵に引っ掛け、宮原は膝立ちになると蛇口を捻り、手を洗った。
手洗い用のシャボンを大量に取り、汚物を取り除こうと繰り返し手を擦る。
特に男の精液がこびりついた箇所は爪で指の皮膚を引っ掻き、先に噛み付いて自傷してしまっていた箇所を更に傷付けていく。
水流が男の精液を洗い、指から滴る血も洗い、目元に溜まっていた涙が零れ、排水溝に流れていく。
ーーーこのまま、何もかも消えてしまえばいいのにーーー
不用意な感情が自分の中で拒絶を必死に訴えてくる。
ーーーこのまま、何もかも消えてしまえばいいのにーーー
ふいに宮原は視線を上げると目の前に罅が入った鏡が自分を写していた。
鏡の前の自分はずっと憧れていた蒼敬学園のユニフォームを乱雑に着崩し、その眩しい光彩を汚していた。
この現状を理解することが出来ず、自分自身を踏み躙られるような錯覚に目の前の鏡をギリギリと引っ掻く。
現実離れした事実に目を凝らし、改めて自分の外形を見詰めると飛び散った男の精液が黒髪に、両頬にこびり付いていた。
蒼白する顔の表皮が際立つと紅く色付く口唇を映えさせ、男と口付けを交わした事が記憶として蘇ってくる。
その瞬間、堪えきれない感情と共に宮原は激しく嘔吐した。
「ーーーゔぇ…ぇぇっ・・・」
胃液が迫り上がり、口を大きく開けると体内に残っていた男の精液が吐瀉物として吐き出され、見知らない男との淫猥な行為を表していた。
目に見えない深い場所にまで男の精液が浸透してきているようで、宮原は何度も何度も吐き続ける。
宮原は背中を丸めて激しく咳き込むと、嚥下も出来ない程のビリビリとした灼けるような痛みを咽喉で感じる。
横隔膜が上下に動き、迫り上がる口の中の物を洗面台に吐き出すと真っ赤な喀血が広がった。
自分自身の体内にも流れるその鮮やかな色彩に、宮原は必死に嗚咽を堪えた。
ーーーあの日。
サッカー部の部室でオレを犯したのはーーー
その実相を宮原は、今日という日常の中で全く気が付かなかった訳ではない。
一日一日と経過していく度に些細な事で傷付き、流れる血は瘡蓋で覆い隠し、そこから生まれた小さな綻びは段々と大きく、波紋のように広がっていった。
過去の記憶として消去してしまいたい事だとしても、宮原に対してあまりにも精神的に負荷の掛かり過ぎる、見えない痛みが存在している。
今まで何度も自問自答を繰り返し、その度に沢海の言葉の裏を疑い、結果的に沢海の事を信じていないという裏切りの行為をしていた。
沢海の事を信じていたいのに、心の何処かで沢海の事を信じきれずにいた。
沢海の事が好きという気持ちだけを必死に押し通し、自分自身が傷付きたくなくて下らない詮索を止め、隠蔽していた。
ーーーあの日。
サッカー部の部室でオレを犯したのはーーー
真実と虚構が複雑に絡み合い、混乱していたあの時、あの場所から、宮原は自分自身しか信じられないのだと殻に閉じ籠ってしまった。
沢海が伝えようとしていた言葉を遮り、本当の事を知ろうとする気持ちさえ手放してしまった。
弁解も誤解も話す事が出来る猶予さえも与えられなかった沢海に対して、宮原は沢海自身が傷付くと分かっていながら伸ばされた手を受け入れなかった。
鈍く痛んでいた身体の痛みの所為にして、沢海が元凶にあるのだと相違する記憶の上書きをしてしまった。
何も知らなかったと、何も分からなかったと、無関心のまま時間が経過すれば良かったのかもしれない。
だが、宮原の心の一番深い場所でずっと引っ掛かっていた傷口が化膿して腫れ上がり、壊れてしまった。
今になって、漸く分かる。
ーーー沢海先輩じゃない。
ーーー沢海先輩じゃないんだ…
自分の身体に触れてきたベタベタとした脂っぽい手も、耳障りにしか聞こえない興奮状態の荒い呼吸も、暴力的な行為で手荒く自分を組み敷き、覆い被さってきた雄の体臭も、無理矢理に自分の身体の中を引き裂いて犯した陰茎も、全てが違っていた。
どうしてそれが沢海ではないのだと、どうしてそれが沢海である筈がないのだと、今まで自分自身で気付けずにいたんだろう。
優しく確かめるように動く指先も、口元から漏れる熱い呼吸と自分の名前を呼ぶ声音も、沢海の胸元や全身に塗布している香料とそれに混じる沢海の体臭も、『宮原の中に入りたい』と鼓動のようにドクドクと脈打つ陰茎も、沢海と似ても似つかないのに、どうして記憶を間違えてしまったんだろう。
ーーー沢海先輩じゃない。
ーーー沢海先輩じゃないんだ…
ーーー沢海先輩に嘘を吐かれていたんだ。
どうして、沢海先輩はオレに嘘を吐いた?
何よりも自分に対して沢海が嘘を吐いていた事に酷くショックを受けた。
何よりも自分に対して沢海は嘘を吐かないと信じていたからこそ、その背信的な言葉を受け入れらなれなかった。
そんな下らない理由で自分に嘘を吐いてもらいたくなかった。
たとえそれが宮原自身を傷付けてしまう結果になるのだと分かっていたとしても、自分にだけは嘘は吐いてもらいたくなかった。
ーーー信じていた。
ーーー信じていたんだ。
ーーー沢海先輩を。
ーーー沢海先輩だけを。
「ーーーそ…み、せん…
沢海、せんぱ…い
……沢海先輩……
ど、して……
どうして・・・嘘、吐いた…んだよ……
ーーーなんで……
なんで!」
漏れてしまう嗚咽を口元を両手で押さえ、呼吸を詰め、口唇を噛み締める。
「…どうして……
そんな嘘・・・
ーーーオレ……オレの、こと……
そんなに、嫌…い……?
ーーー嫌い、なのか…なぁ……」
『嫌い』という言葉を自らの声で吐露した瞬間、鼓膜を劈く程の耳鳴りが響き、宮原の視界が急激に狭まっていく。
両膝を床に着いている状態でも自分の身体を支えきれずに重心が歪み、視界が大きく旋回してしまう。
茫洋と霞む思考は正常な判断を見失い、ただ本能に似た直情だけが、宮原の身体と心を動かしていく。
「ーーーオレの…こと……キ、ライ…?
オレの事、嫌…い…なの?
ーーー嫌い?ーーー」
宮原は一度、肺胞の中の空気を溜息のようにゆっくりと吐き出すと、幼子のように噦り上げた。
「ーーーオレの、こと……嫌い、なのかなぁ……
もし、そうだと…したら……
ーーーやだなぁ……やだよ……
いやだよぅ…
ーーー沢海先輩……」
混乱する思考は四肢を硬化させ、宮原はタイルの床に座ったまま身体を踞らせていた。
「ーーー沢海せ…ん、ぱい……
…沢海、先輩…
…沢海先輩……」
例え沢海が自分の事を嫌いでも、自分は沢海の事をずっと好きでいたい。
『ーーー初恋、なんだ……』
今まで、自分の中で人を好きになる感情が一体どういう事なのか全く知らなかった。
自分が好きな人の事しか考えられなくなるとか、自分が好きな人の事を大切にしたいとか、自分が好きな人しか他に何もいらないとか、変えられない唯一の大事な存在に『好き』という事を実感する。
沢海先輩の傍にいたい。
沢海先輩と一緒にいたい。
『ーーー初恋、なんだ……』
例え沢海が自分の事を嫌いでも、自分は沢海の事をずっと好きでいたい。
嫌われてもいい。
ーーー何時も温かい両手で抱き締めてくれた。
嫌われてもいい。
ーーー何度も触れられる度に熱い体温に溶かされた。
嫌われてもいい。
ーーー何時もここにいるという、鼓動を感じていた。
沢海先輩の傍にいたい。
沢海先輩と一緒にいたい。
ーーーそれは、叶わない事だったんだろうか。
「ーーー沢海、先輩………
…助け、て・・・
助けてよぅ……」
何度も、何度も宮原は『沢海先輩』と言霊のように繰り返し呟き、名前を呼ぶ。
暗く霞む意識の中に宮原はただ一人の存在だけを求めて手を伸ばし、空白として何も手に触れる事が出来ない虚無感に指先が震える。
ーーー何も感じないんだ。
ーーー何も見えないんだ。
ーーー何も分からないんだ。
「…沢海先輩…」
目が眩む感覚に意識が混濁し、宮原はゆっくりと四肢を投げ出し、タイルの床に倒れ込んだ。
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