強欲なる花嫁は総てを諦めない

浦霧らち

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66.慾深と蜜月*


「あ……っ」

 ローガンはエルンストを抱き寄せ、ぎゅうと腕の中に閉じ込めながらも、不埒な手が蠢く。エルンストの尻の割れ目をなぞり、窄みへと忍び寄っていく。

「ローガンさま……っ」
「ここに、俺を受け入れてくれるか」
「っ」

 囁かれた言葉に、エルンストはぶるりと身を震わせた。抱かれたローガンの胸に額を押し付け、小さく頷く。
 ローガンはそんなエルンストの反応に気を良くしたのか、ゆるゆると撫でさする動きを続ける。

「ぁ……ん……っ」

 ローガンの大きな掌で、双丘をやわやわと揉みしだかれる。未知の感覚に戸惑いながらも、甘い吐息が漏れた。

「ふ……っ、ん……ぁっ」
「ちゃんと慣らさないと、いけないな」
「ぁ……」

 ローガンの手が離れていく。エルンストはつい残念そうな声を漏らしてしまった。すぐにローガンが小さく笑ったのが聞こえた。

「待っていてくれ」

 ローガンはサイドボードから香油瓶を取り出すと、手に垂らした。それを体温で温めて、再びエルンストの窄まりへと触れさせる。

「ぅ……」

 ぬるついた感触に身震いした。ローガンの指が窄まりの周りをなぞる。

「痛かったら言ってくれ」
「……はい」

 ローガンの指が侵入してくる。最初はゆっくりと一本だけ。ローガンの長く節くれだった指が、内部の肉壁を押し広げていく。異物感に耐えながら、エルンストはなんとか呼吸を繰り返した。

「ん、ん……っ」

 ローガンは慎重に指を動かしている。痛みはないが、圧迫感で苦しい。ローガンは香油を足しながら、丹念に解していった。

「大丈夫か」
「はい……大丈夫、です」
「辛くはないか」
「辛くないです……ぁ、へいき、だから」

 気にしないで続けてくれと、エルンストはローガンの肩に額を押し付けた。
 嘘ではない。確かに少し苦しいけれど、それ以上に嬉しかった。
 ローガンは次第に指を増やしていき、三本の指が入るようになった頃には、エルンストはすっかり息が上がって汗だくになっていた。

「ローガンさま……っ」
「エルンスト、気持ちいいか」
「は、い……っ」

 ローガンの指はエルンストの体内で円を描くように動いている。時折、広げるために指を左右に開いて、入口を拡げていった。

「あ……っ」

 ローガンの指がとある一点を掠めたとき、エルンストの身体が跳ねた。その拍子に向かい合わせのローガンの熱塊が腹に触れ、驚いて全身が硬直する。

「ここか」
「ぁ……あ、まって……っ」

 ローガンは的確にその場所を探り当てると、重点的に攻め始めた。グリグリと捏ねるように刺激されて、エルンストの身体に言いようのない感覚が広がっていく。

「あっ、あ、そこ……っ」
「ここがいいんだな」
「ん、んんっ、わかんない……っ」

 エルンストは必死にシーツを握りしめて耐えていたが、ローガンの指が動くたびに腰が浮き上がるのを止められなかった。

「や……っ、あ、ローガンさま……っ」
「ああ、かわいいな。もっと乱れてくれ」
「あ……ああ……っ」

 エルンストは泣きながら首を横に振った。快楽に飲み込まれそうで恐ろしかった。

「いやだ、そこばかりやめてください……っ」
「本当に嫌なのか」
「ぁあ……っ」

 ローガンの声が一段低くなり、耳元で囁かれる。ぞくぞくと背筋を震わせながら、エルンストは必死に否定した。しかしローガンは容赦なく追い詰めてくる。執拗に敏感な箇所を押し潰され、エルンストはガクガクと震えた。

「いや……っ、いやぁ……っ」
「嫌じゃないだろう?」
「やだ、もう、……だめっ」
「気持ちいいだろう」
「きもちいい……っ」

 エルンストは半狂乱になりながら叫んだ。
 その瞬間、再びの絶頂を迎え、視界が真っ白になる。そのまま意識を飛ばしてしまいたかったが、ローガンの指がまだ体内にあることに気づいて、はっと我に返った。

「はー……っ、はー……っ」

 荒い呼吸を繰り返しながら、エルンストは呆然と宙を見つめた。一体自分は何を言ってしまったのか。今更ながら羞恥心が込み上げてきた。

「エルンスト」
「あ……」

 ローガンの声に、エルンストは反射的に彼の方を見た。ローガンはどこか興奮した様子で、ギラギラとした眼差しをエルンストに向けていた。

「もう、いいか」
「っ」

 ローガンの熱はエルンストの白濁を受け、はち切れんばかりに膨れ上がり、今にも爆発しそうだった。ローガンもまた限界が近いのだ。

「……はい」

 エルンストはしっかりと意思を持って首肯した。

「来てください、ローガンさま。あなたが欲しいです」

 ローガンは喉を鳴らした。獰猛な獣のような目つきでエルンストを見据える。その瞳の奥に秘められた劣情を感じ取って、エルンストはゾクゾクと身を震わせた。

「……愛している」

 ローガンは呟くようにそう言って、エルンストに口づけた。舌を絡ませ合う濃厚なキスを交わしながら、ローガンはエルンストを仰向けに寝かせた。
 太腿を抱え上げ、窄みに猛る屹立を押し当てる。ぬるりとした感触に、エルンストは思わず息を呑んだ。

「力を抜いていろ」
「ん……っ」

 ぐっと腰を進められて、内壁が押し広げられる。指とは比較にならない質量に圧倒されそうになる。エルンストは必死に呼吸を繰り返した。少しずつ、少しずつ、ローガンが侵入してくる。

「っ、う……」

 苦しい。内臓が押し上げられるような感覚に呼吸が乱れる。しかし、それ以上に、ローガンと繋がっているという事実に胸がいっぱいになった。

「大丈夫か」
「はい……平気です」

 ローガンの声が優しい。エルンストは安心して笑みを浮かべた。だが、次の瞬間、ローガンのものがさらに奥へと進んできて、エルンストは悲鳴を上げた。

「ひっ」
「すまない、痛むか」
「だいじょうぶです……っ」
「エルンスト」
「やめないで……」

 エルンストは懇願するように言った。ローガンは一瞬躊躇ったものの、そのまま動きを続けた。
 隘路を押し広げ、ローガンは確実に最奥を目指す。エルンストの中は拒むようにしながらも、ローガンの巨大な雄を柔らかく受け入れていった。

「ローガン、さ、ま……ぜんぶ、はいった……?」
「まだ、もう少しが、入らないな」

 ローガンのものは太く長い。エルンストは息苦しさに涙をひと粒流した。ローガンはエルンストの涙を舐め取りながら、しばらくそのまま動かないでいてくれた。

「……動いてもいいか」

 エルンストはこくこくと頷き、ローガンの首に腕を絡ませた。
 ローガンは慎重に腰を引いた。ずるりと引き抜かれる感覚に、エルンストは身悶えた。そして再び挿入される。それを何度か繰り返すうちに、次第に抽送のスピードが速まっていった。

「あっ、あっ、あっ」

 エルンストは揺さぶられながら喘いだ。痛みや圧迫感よりも、いつの間にか快感の方が勝ってきていた。

「んっ、んっ、あぁ……っ」

 肌同士がぶつかる音が響く。

「あ……っ、あっ、あんっ」
「エルンスト」
「はい……っ」
「辛くないか」
「へいき、です……っ」

 ローガンは幾度も心配そうに訊ねてくるが、その瞳は欲に染まっている。エルンストはローガンを宥めるように微笑んだ。

「大丈夫ですよ、ローガンさま」
「そう、か」

 ローガンは安堵したように目を細めると、今度は先ほどよりも激しく、より深いところまで抉るように突き入ってくる。

「あ……っ、ああっ」

 ローガンの剛直が、先ほどの箇所を穿つ。エルンストは衝撃に背中を仰け反らせた。
 ローガンは容赦なくそこを攻め立てる。指では得られなかった直接的な刺激に、エルンストは身も世もなく喘いだ。

「あっ、あっ、あんっ」
「ここ、良かったな」
「あぁ……っ、そこ……っ」
「気持ちよさそうだ」
「やっ、そこばっかり……っ」
「違うのか」
「ああぁ……っ」

 エルンストは涙を零しながら、いやいやと首を振った。ローガンはエルンストの弱いところをとっくに熟知していて、そこに狙いを定めて突き入れてくる。エルンストは堪らず身を捩った。

「やぁ、ぁ……っ」
「エルンスト、逃げないでくれ」

 ローガンはエルンストの腰を掴むと、逃げられないように固定した。そして、エルンストの弱点を責め続けた。
 何度も何度も執拗に擦られて、そのたびにエルンストは甘い声を上げる。
 熱杭を抜き差しされるたびに、粘膜が擦れてひどく気持ちよかった。ローガンも興奮しているようで、動きがどんどん速くなっていく。激しい律動に合わせて、結合部から水音が聞こえてきた。

「あっ、ん、ぁっ」

 ローガンが動くたびに、エルンストの性器も揺れ動いた。先端からは透明な雫が溢れ、幹を伝って落ちていく。

「ああっ、だめぇ……っ」
「どうしてだ」
「だって、おれ、おかしくなる……っ」

 言葉が乱れているのに気づかないまま、エルンストは訳もわからず喘いだ。
 ローガンは目の前の淫靡に酔いながら、楽しげに笑った。
 なおも追い打ちをかけるように角度を変えたり速度を変えたりしてくる。エルンストは為す術もなく翻弄され続けた。

「あんっ、あっ、ああっ」
「エルンスト」
「はい……っ」
「好きだ」
「あ……っ」

 その瞬間、エルンストの中で何かが弾けた。

「あ、あ、ああっ、ぁ──っ!」

 エルンストはローガンの首に縋り付きながら絶頂を迎えた。同時に、ローガンの熱い飛沫が最奥に注ぎ込まれる。

「く……っ」

 ローガンは短く呻いて、すべてを吐き出すように腰を揺すった。熱い奔流が中に満ちていくのを感じて、エルンストは恍惚とした表情を浮かべた。

「あ……っ、あ……っ」
「エルンスト」
「は、い……っ」
「よく頑張ったな」

 ローガンは労わるようにエルンストの髪を撫でた。その手つきがあまりにも優しくて、エルンストの涙腺がばかになる。それを誤魔化すように、エルンストはローガンの身体にしがみついた。すると抱擁を返してくれる。それだけで幸せな気分になった。

「……ありがとうございます」
「礼を言われることなどない」

 ローガンは微笑んで言った。その笑顔に見惚れていると、突然唇を奪われる。舌を絡め取られ、呼吸さえ奪われるような濃厚なキスに、エルンストはくらくらした。
 長い口づけの後、ようやく解放される。エルンストは潤んだ瞳でローガンを見つめた。

「困ったな、エルンスト」
「えっ?」
「まだ、離れたくない」

 ローガンはエルンストの腰を抱き寄せる。
 再び熱く硬さを取り戻したものの存在に気づき、エルンストは目を丸くした。

「ローガンさま……?」
「もう一回、したい」

 ローガンの言葉に、エルンストは顔を赤くした。

「……私も、まだ離れたくありません」

 エルンストの言葉を合図にして、ローガンは美しい肢体を組み敷く。
 暖炉の火はほとんど残り火だけになっていた。
 赤く静かに燻る光が、二人の影を柔らかく揺らす。
 火照った肌、荒い呼吸、交わる視線の熱量。すべてが同じ温度を共有していた。
 夜が深まる。影は絡み合い、境界を失っていく。
 窓の外は凍てつく冬。けれどこの部屋の中には、ふたつの身体の間にだけ存在する、たったひとつの春があった。
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