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第八章 地球訪問編
第30話 ポンポコ商会地球支店
しおりを挟む政府関係者との会見(?)の翌日夕方、俺たち「初めの四人」、翔太君とその『騎士』は「ホワイトローズ」に集まっていた。
今日は、店を早めに閉め、みんなで夕食会をすることになっている。
食事は、畑山のおじさんが懇意にしている寿司屋からの出前で、これは俺が強く希望した。
以前、食べそこねたことをずっと残念に思っていたからね。
出前が届くと、食事が始まった。
「最近ずっと私の後ろをつけていた尾行が急にいなくなったのよねえ。
どうしちゃったのかしら」
サブローさんが疑問を口にする。
「私も」
黒騎士がぼそりと言った。
「そういえば、いつも私たちの後をついてきていたおじさんの追っかけもいなくなったわ」
いや、黄騎士、それは追っかけじゃなくて尾行だから。
「私のPCへの愛の無いアプローチも、なくなったわね」
桃騎士は、ハッキング受けてたのか。
伝説のハッカーに挑戦するとは、いい度胸だな。
彼らが、一斉に俺の方を見る。
説明するのもめんどくさいから、壁に貼りつけたままのスクリーンに首相官邸地下での映像を映した。
俺が戦闘服の男たちを消した場面では、なぜか「ぱねー」は出なかった。
ただ、沈黙があっただけだ。
さすがに、畑山さんが首相たちにくぎを刺す場面を見た後では、「女王様、ぱねー」って声があがったけどね。
「でも、本当にこれで安心できるのかしら」
すでに畑山さん、舞子、加藤それぞれの家族と『騎士』、黒服には、複数の点をつけてある。
よほどのことでも起こらない限り問題ないだろう。
「うーん、可能性があるのは、他国の政府だけど、まあ、一つ二つ捻っておけば大丈夫でしょう」
「シローちゃん、あんた見かけによらず言うわね」
サブローさんが、肩に手をまわしてくる。
俺はその手を振りほどくと、『騎士』にある提案をした。
「俺は、異世界で『ポンポコ商会』っていう会社をやってるんだ。
この際だから、その支店を地球に作る予定なんだけど……」
「えっ?
シローさんって社長さんだったの?」
緑騎士が驚いたように言う。
「社長と言うか、取りまとめ役だね。
すでに、五つの世界に七つの会社があるから、地球に支店ができれば、八つ目だね」
「「「シロー、ぱねー!」」」
「いや、俺って何もしてないから」
「お店って、何を売ってるの?」
「いろんなものを売ってるよ。
最近のお勧めはこれ」
俺はポーチから水晶灯を出した。
「何、この綺麗な薄い板?
光ってるね」
「ああ、これはね、ある世界の木が枯れた後の「枯れクズ」なんだ。
明りとしても使えるよ」
桃騎士が、水晶灯を手に取って眺めている。
「軽いわね。
それにすごく硬い」
「これはね、もしかすると、エネルギー革命を起こすかもしれない大変なシロモノなんだよ」
「シローさん、エネルギー革命って何?」
「ああ、この板は、太陽の光をエネルギーとして蓄えることができるんだ。
そうなると、多分、この世界の全エネルギーを太陽光で補える」
緑騎士が目を丸くする。
「ひゃーっ、とてつもないわね」
「ボー、そんなこと初めて聞いたわよ。
そんなものがあるなら、すぐ教えなさいよね。
アリスト王国にも売ってくれるんでしょ?」
「畑山さん、もちろんそのつもりだよ」
「それならいいけど」
「ああ、話を元に戻すよ。
その『ポンポコ商会』地球支店の社長を、翔太君に任せようと思ってるんだ」
「ええっ!?
ボクが社長?」
「キャー、プリンスが社長に!?
もう最高!」
サブローさんが、盛りあがっている。
「ついては、『騎士』の皆さんにも手伝ってもらえればと……」
「「はいはい、やるやるー」」
黄緑騎士は、ずい分乗り気だ。
「私はお店があるからね~」
サブローさんが、残念そうな顔をする。
「サブローさんは、副社長のポストを考えてるんだ。
あと、お店の事は心配しなくていいよ。
支店は、ここの地下に作るつもりだから」
「えっ?
シローちゃん、この店って地下なんて無いわよ」
「ああ、それは俺がなんとかするから」
「サブローさん、ボーさんができるっていうんならできるんだよ。
副支店長お願いね」
「キャー、プリンスに頼まれちゃった。
私、やるわよっ!」
「私は……」
「黒騎士さんには、支店長つまり翔太君の、秘書兼専属護衛を頼みたいんだ」
「決定!」
「いいわね、みんなは。
私の能力じゃ、お店の役には立たないわね」
「何言ってるんですか。
俺の店は、地球の情報収集もしますし、『異世界通信社』の親会社ですから、桃騎士さんが活躍する場はいくらでもありますよ」
「きゅいーん、愛のチャージマックス!」
「「ねえ、私たちはー?」」
「ああ、黄騎士と緑騎士には、異世界との交渉役を頼みたいんだ。
大役だけど、頼めるかな?」
「「もちろーん!」」
こうして、ポンポコ商会地球支店は産声を上げた。
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