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空知音

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第九章 異世界訪問編

第30話 異世界科3

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 俺たちは、異世界科の生徒と教室で食事をしている。

 教室の机を四つずつ合わせテーブルを作り、各テーブルに一人ずつ俺たちが座る。
 ナルとメルは、ルルと並んで座る。
 エリミーとハーディ卿は、ポルと一緒に座った。
 翔太は畑山邸に帰してある。

 なぜか俺が着くテーブル以外は、すぐに生徒たちで埋まった。

 ぽつんと座っている俺を見かねた林先生、校長先生、教頭先生が俺のテーブルに着く。
 なんなんだ、このテーブルは。PTA席みたいになってるぞ。

『(*´з`) ご主人様、人気ないですねー』

 いや、点ちゃん、傷口に塩をすりこまなくてもいいから。

 生徒たちが全員座ると、先生方も各テーブルに分かれて座った。
 当然、俺のテーブルに来る先生はいない。
 こ、これは寂しすぎる。

「林先生、俺、何か警戒されてるんですかね」

「多分そりゃ、きっと例の噂のせいだな」

「噂?」

「ああ、お前が某国の核兵器を消滅させただの、基地を消滅させただの、変な噂が流れててな。
 それでちょっと怖がってるんだろう」

 やばい、本当のことだよ、それは。
 特派員協会で怖がられていたのもそれが原因か。

「ま、まあ、それなら仕方がないですね」

 こうして、にぎやかな他のテーブルとは対照的に、俺たちのところは、お通夜のような雰囲気が流れていた。
 しょうがないから、異世界の食べ物を配ろうとしたが、林先生から止められる。
 何かの法律で、学校でそういうことは、できないそうだ。

 俺はやることがないので、エルファリアのお茶と蜂蜜クッキーを自分だけに出した。
 こうなると、やけ食いだ。

 クッキーをほおばり、俺がリスのような顔になっていると、ナルとメルがやってきた。

「パーパ、メルにもクッキー頂戴」
「私も」

 俺は二人に蜂蜜クッキーとミルクを出してやった。

「わーい、ミルクだー」
「美味しいね」

 二人はおいしそうにクッキーを食べると、ミルクの輪っかができた口を突きだしてくる。

「はいはい、今、拭くからね」

 点収納からハンカチを出し、二人の口を拭いてやる。
 俺が拭きおわると、笑顔の二人はすぐにルルの所に走りさった。
 むしゃくしゃしていた気持ちがいつの間にか晴れていた。

「ふーん、異世界に家族ができたとは言ってたが、本当だったみたいだな」

 林先生が感心したように言う。

「ぼ、坊野君、今のは君の娘さんかね」

 校長先生が目を丸くしている。

「はい、俺の娘ですよ」

「き、君、その年でもう結婚してるのかね?」

 教頭先生も突っこむ。

「結婚してはいませんが」

「どういうことだ? 
 だいたい、あの娘たち、どうみても君の本当の子じゃあるまい」

「教頭、シローが自分の娘だと言ってるんです。
 それ以上でもそれ以下でもありませんよ」

 林先生がきっぱりした口調で言う。

「……あ、ああ、それはそうだな」

 教頭がぎこちなく頷いた。

「あ、そうそう、これ先生方で飲んでください」

 俺はビン詰めの「フェアリスの涙」を一本、机の上に置いた。

「おい、シロー。
 これ、例の酒じゃないのか?」

 林先生は、何度かフェアリスの涙を飲んだことがあるからね。

「ええ、そうですよ」

「林君、例の酒とは何だね」

 校長が酒の入ったビンを手に尋ねる。

「異世界の『妖精酒』らしいですよ。
 この量だと、そうですね……二、三千はするでしょう」

「ほう、割と安いもんだね。
 これで、二、三千円か」

「校長、桁が違いますよ」

「林君、桁とは?」

「二、三千万円ですよ」

「「ええっ!」」

 校長が驚いて落としかけたビンを、俺が点魔法で受けとめる。
 ビンは空中を浮き、テーブルの上に戻った。
 校長と教頭は、怖いものでも見たような顔をしている。

「ははは、二人ともシローとつきあうときは、このぐらいで驚いてちゃいけませんよ。
 内輪のパーティで、私はアメリカ大統領と我が国の首相を紹介されたことがあります」

「……」
「……」

 食事が終わると、俺は体育館で全校生徒への講演が控えていた。
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