ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第十一章 ポータルズ列伝

銀髪の少女編 第3話 ナルとメル、入学する

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 次の週の最初の日。

 学校の制服っていうのがあるらしいんだけど、それの仕立てが間に合わなかったということで、私とメルは先週着て行ったワンピースで学校へ行くことになった。

 今日は、私とメル、二人だけで学校に行く。
 二人で手をつないでウチを出ると、覚えている道を学校へと歩いた。
 途中でマックさんに似た屋台のおじさんや、パーパに似たパン屋さんがいたので驚いた。
 だって、すごく似てるんだもん。

 学校近くで、マンマにすごく似た洋服屋の店員さんがいたときなんか、メルが飛びだしていきそうだったから、握った手をぎゅってして、離さないようにしたんだよ。

 学校に着いても、ホウキを持ってそうじしている人が、じーじそっくりだったから、また驚いたよ。
 教室に入ると、みんなが集まってきた。

「ナルちゃんっていうの? 
 お父さんがシローさんなんてすごいね」
「お母さんって雷神リーバスの孫なんでしょ?」

 みんな口々に、話しかける。
 誰が何を言っているかは、全部分かったけど黙っていたの。
 だって、答えられるのは一人にだけだもん。

 メルはもうウトウトしだしたの。
 並んで座ってる私がしっかりしなくちゃ。

 ◇

 授業はやっぱり、「分かりきったことを、じっと座って聞く」ものだったわ。
 だけど、少しは面白いのもあったの。
 それは魔獣についての授業よ。

「この魔獣の名前が分かる人」

 ファーグス先生が、教室の前、黒い壁に絵を描くの。
 白くて丸い魔獣だったわ。

「成長すると、高さはあのくらいになります」

 先生が、窓の外に立っている大人二人分くらい高さがある木を指さしたの。

「誰か見たことある人?」

 メルと私が手を上げたの。

「えっ! 
 ほ、本当に見たのですか?」

「お城で見たー」

 メルが答えてる。

「お城!?」

「では、この魔獣の名前は?」

「「しんじゅーさまー」」

 私とメルの声が重なる。

「ああ、何か他の動物と間違えていますね。
 これは、マウンテンラビットと言うんですよ」

「そうだよー、マウンテンラビットは本当はしんじゅーっていうの」

 メルがすぐに先生の言葉につっこむんだわ。

「えー、しんじゅーって、何かな?」

「マウンテンラビットのことだよ」

 これは私。

「うーん、先生にはよく分からないなあ。
 なぜ、マウンテンラビットがお城にいるんだろう」

「あのね、森から女王様についてきたんだって」

「あー、それ聞いたことある」

 前の方に座っている背が低い男の子が言ったの。

「うん、ウチの母ちゃんもそう言ってた」

 これは、その子の隣のぽっちゃりした女の子ね。

「しんじゅーさまはね、ウサ子って名前なんだよ」

「ウ、ウサ子……」

ファーグス先生が、目を白黒させている。

「女王様がつけた名前だって、パーパが言ってた」

「ま、まあそれはいいでしょう。
 では、気を取りなおして……。 
 この魔獣は何かな」

 うーん、先生はあまり絵が上手じゃないんだろうね。
 ワイバーンかドラゴンか、どちらなのか分からない絵になってる。

「この町にも来たことがあるんだよ」

「ワイバーン?」

 私の前に座る、ひょろっとした男の子が答えた。

「正解。 
 とても危険な魔獣だから、見かけたら学校に連絡してね」

 私は黙っていられなくて、知らないうちに声を出していた。

「先生、ワイバーンは危険ではありませんよ!」

「えっ!? 
 それは君のお父さんが言ってたの?」

「違います。 
 私の友達にもワイバーンがいるけど、危険ではありませんよ」

「えーっと、友達の名前がワイバーンなのかな?」

「名前じゃありません。 
 そのワイバーンです」

 私は先生が書いた絵を指さした。

「ワイバーンと友達……」

 先生は、なぜか黙ったままでじっとしてるの。

「トンちゃんたちの事、悪く言うのは、私が許さないんだから」

 私は少し興奮していたので、そう言ってしまったの。

「トンちゃん?」

 これは、私のすぐ前のひょろっとした男の子からの質問。

「友達のワイバーンは、名前がトンちゃんっていうんだよ。
 エルファリアっていう世界で知りあったの」

 私が周りの生徒とトンちゃんの話をしていると、先生がバーンと机を叩いたの。
 それから、なぜか教室を飛びだしていったの。
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