125 / 607
第三章 学園都市世界アルカデミア編
第27話 決着
しおりを挟む映像は、ブラムが小さなガラス製のベルを鳴すところから、始まっていた。
「では、緊急賢人会を始める」
「ケーシー、報告してくれ」
「はい。 現在、獣人世界からの獣人搬入が、途絶えています。
これは、獣人を捕獲するために利用していた猿人族が、他の獣人の支配下に落ちたからです」
「なぜ、そんなことになった。 圧倒的な武力を持たせていたはずだろう」
「はい。 なぜ、そのようなことが起きたかは、未だに判明していません」
「問題は、これからどうやって獣人を確保するかですな」
「労働力は、ロボットで代用が利かないわけではないが、魔道具の素材としては、不可欠です。 確保は、絶対です」
「この世界を支えるために、魔道具の販売は、何より大切だ。 大至急、解決策を求めたい」
「ロボットを送り込んで、獣人を捕獲するのはどうだろうか」
「それにしても、現地に何人かは、派遣せねばならまい」
映像中の登場人物は、まごうことなく、被告人席にいる賢人達である。
今まで謎に包まれていた賢人会の全貌が明らかになったことより、その話の内容が人々に与えた影響は、とてつもないものだった。
なぜなら、知によって成り立ってきた、学園都市の粋ともいえる賢人が、いかに非人道的な事を行ってきたか、赤裸々になったからである。
これからは、学園都市世界の価値観そのものが、変わっていくかもしれない。
映像は切り替わり、ブランとケーシーが、秘密施設で、ソネルを殺しかけるところが映された。
最後の映像は、賢人達が、下級研究者をこの事件の身代わりにする計画を話し合っているものだった。
賢人の中には、ここに至っても、なお最後の悪あがきを続ける者もいた。
しかし、映像が消えた今、もう誰も賢人の言うことに耳を貸す者はいなかった。
裁判長は、怒りに震えていた。
それを、落ち着けるために、短い休廷を挟んだぐらいだ。
休廷後の審理は、恐ろしいほど迅速に進んだ。
鈴の音が鳴ると、賢人を除く全員が裁判長の言葉を待つ。
「判決を言い渡す。五賢人は、全員、死罪とする。
彼らの全ての財産は、獣人への補償に充てることとする」
傍聴人席から、拍手が沸き上がる。
「なお、残りの賢人ならびに獣人の誘拐に関与していた者は、後ほど改めて裁判を行う」
裁判長が、鈴を鳴らす。
「では、閉廷」
法廷内は、獣人たちへの謝罪と、パルチザンへの称賛の言葉で溢れた。
しかし、何より、五賢人への侮蔑と非難の言葉は、止めどが無かった。
大法廷の、長い一日が終わった。
-------------------------------------------------------------------
学園都市の遥か上空、点ちゃん1号の中で、裁判の様子を見ていた史郎は、全てが終わり、ほっとした表情だった。
点ちゃん、今回も、大活躍だったね。
「(*´ω`*)えへへへ」
しかし、新しいスキル、「付与 重力」の力は凄かったね。
巨大な地下施設を地面から切り離すのは、土魔術で比較的容易にできたが、問題はそれをどうやって持ち上げるかだった。
重力を無くするイメージを付与した点を、施設の底部に幾つか付けてみた。
結果は大成功で、巨大な施設が、軽々と浮き上がった。
後は、施設に点を付け、引っ張ってやるだけだった。
秘密施設を運び出す前に一つ問題が生じたが、それはこれからの課題だろう。
賢人会は、万一を考え、施設を爆破する装置を、あちこちに取り付けていたが、建築素材の内部まで入っていける点ちゃんの前には、意味をなさなかった。
爆破装置は、あっという間に消滅した。
ああ、裁判所のスクリーン?
あれは、加藤に付けておいた、幾つかの点を利用して設置した。
しかし、ミミの放送はひどかった。
まあ、目的は達しているから、合格と言えば言えるのだが。
あれで「ポンポコリン」の名前が、この世界にも知れ渡ってしまったではないか。
まあ、いいか。
俺は、仕事が終わった後の「くつろぎの入浴」を楽しみにかかった。
この少年、どこまでもマイペースである。
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?
くまの香
ファンタジー
いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる