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第四章 聖樹世界エルファリア編
第7話 雷神リーヴァス
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点ちゃん2号は草原を抜け、丘陵地帯に入った、
ところどころ、斜面を切りひらいて道が通っている。
点ちゃんから警告が出た時、俺達は深い切通しを通っていた。
『ご主人様ー、来たよー。 あと300m。 前に十人、左右の崖の上に五人ずつだよ』
点ちゃん、ありがとう。
すぐに、その情報をリーヴァスさん、ルル、コルナに念話で伝えた。
点ちゃん2号は、その外郭自体がシールドになっているのだが、その外側にシールドをさらに二重に展開した。
スピードを落とし、襲撃に備える。
襲撃予想地点の100m手前で2号を止める。
『ご主人様ー。 相手が慌ててるみたい』
それは、そうだろうね。 まるで襲撃するのが分かってたような行動だもん。
「リーヴァスさん、開けます」
「どうぞ」
ちょうどリーヴァスさんが座る席の横、窓側の壁がドア型に開く。
彼は、ひらりと外に飛びだした。
前方に覆面をした集団が見える。
土色のローブを着ているのは、姿を目立たなくするためだろう。
半分が弓、半分が剣を持っているようだ。
彼らの前に、鞘入りの剣を左手に持ったリーヴァスさんが静かに立っている。
距離は100m近い。
俺とルルは固唾を飲んで、これから起こることを見守っていた。
敵のリーダーだろう、大柄なローブ男が片手を上げた。
左右の崖上から、矢が雨のように降りそそいだ。
腕がいいのか、ほとんどがリーヴァスさんに当たるコースを飛んでくる。
風魔術と弓の合わせ技、「風弓(かざゆみ)」だろう。
一瞬、リーヴァスさんの身体が何本もの矢に串刺しになったように見えた。
しかし、その姿は高速で動く彼の残像に過ぎなかった。
右の崖の上から、何人もの敵が落ちてくる。
ほとんど時間をおかず、左の崖からも敵の身体が降ってきた。
前方の十人がリーヴァスさんを見失って、右往左往している。
彼は、すでに奴らの真後ろにいた。
一人の敵がそれに気づいて悲鳴を上げた。
「ひっ!」
恐るべきことに、敵が発したのはこの一言だけだった。
次の瞬間、十人全員が地に伏していた。
雷神リーヴァス。
史郎は、その2つ名の意味を知った。
------------------------------------------------------------------
史郎が敵の死体を全て点ちゃん収納に入れ終わると、点ちゃん2号は再び出発した。
リーヴァスさんは、戦いなど無かったように、静かに座席に座っている。
返り血一つ付いてない。
俺は、信じられないくらいの剣の冴えに、畏怖するしかなかった。
リーヴァスさんの名を聞いて、気を失う人達のことを大げさだと思っていたが、これなら頷ける。
さすがは、黒鉄の冒険者である。
戦闘についてあらかじめ知らせていなかったモリーネは、しばらく混乱していたが、コルナが話しかけて、やっと落ちついた。
モリーネには、なぜ戦闘前に知らせてくれなかったのかって言われたが、戦闘に慣れていない場合、冷静な対処はできないからね。
お陰で、娘達が目を覚ますことなく、戦闘を終えることが出できた。
丘陵地帯を抜けた俺達は、森の中を進んだ。
進むにつれ、木が太く大きくなっていく。
空中で枝と枝が絡みあい、複雑な模様を作っている。
点ちゃん2号は、木々が織りなすアーチの中をどんどん進む。
やがて、枝の間に、不思議なものが見えはじめた。
空中に絡まった枝と枝を利用して、その隙間に鳥の巣のようなものがあるのだ。
モリーネによると、それがエルフの住宅だそうだ。
枝の上に作るので、重量を減らすために、軽い素材でできているそうだ。
更に進むと、球状住居の数が次第に増え始めた。
木々の上を歩く、エルフの姿も見える。
エルフの子供達は、見慣れない銀色の乗り物に驚いて、みんなが指さしている。
モリーネは、懐かしい風景にくつろいだ様子である。
突然、広場のような場所に出る。
広場の中心には巨大な4本の木が生えており、その間をツタのようなものが覆っていた。
「エルフの王城、イビスです」
モリーネが指さす。
彼女の指示で、4面ある壁の内、ある面の中央に点ちゃん2号を乗りつける。
壁の一部が、するすると持ちあがったので、そこを通りぬける。
俺達は、2号に乗ったままである。
巨大なトンネルのような通路は、ずっと奥へと続いていた。
再び緑の壁が現れた時、モリーネが降りるように指示する。
皆が降りると、壁の一部が上がり、ドア型の開口部となった。
そこから、騎士姿のエルフが数名出てくる。
最後に女性が現れた。
エメラルド色のドレスをまとい、頭は宝石の飾りで覆われている。
モリーネによく似ている。
「お母さまっ!!」
あまり感情を表さないモリーネが、溜めていたものを吐きだすように女性に抱きついた。
女性の目には、涙があった。
「モリーネ、おお、モリーネ。 帰って来てくれたのね……」
「お母様……」
二人は、しばらく抱きあっていた。
そのうち、女性がはっと気づいたようにこちらを見た。
「あなた方が、娘を?」
「お后様、リーヴァスです。 ご無沙汰しておりました」
「まあ! リーヴァス、あなたなの!」
「モリーネ姫をお助けしたのは、こちらの若者でございます」
リーヴァスさんが、俺の方を手で示す。
「あなたが?」
「聖樹様のお導きで、初めてお目にかかります。シローと申します」
俺は、点ちゃんノートの中から、この場に相応しい挨拶を選んだ。
「娘を救ってくれたこと、感謝するわ。
ここでは何だから、しかるべき場所にご案内するわ」
モリーネの母は後ろを振りかえると、騎士の一人に向かって小さく頷いた。
騎士は、それだけで后の意図を察したのだろう。
史郎達を連れて、城の中に入っていった。
ところどころ、斜面を切りひらいて道が通っている。
点ちゃんから警告が出た時、俺達は深い切通しを通っていた。
『ご主人様ー、来たよー。 あと300m。 前に十人、左右の崖の上に五人ずつだよ』
点ちゃん、ありがとう。
すぐに、その情報をリーヴァスさん、ルル、コルナに念話で伝えた。
点ちゃん2号は、その外郭自体がシールドになっているのだが、その外側にシールドをさらに二重に展開した。
スピードを落とし、襲撃に備える。
襲撃予想地点の100m手前で2号を止める。
『ご主人様ー。 相手が慌ててるみたい』
それは、そうだろうね。 まるで襲撃するのが分かってたような行動だもん。
「リーヴァスさん、開けます」
「どうぞ」
ちょうどリーヴァスさんが座る席の横、窓側の壁がドア型に開く。
彼は、ひらりと外に飛びだした。
前方に覆面をした集団が見える。
土色のローブを着ているのは、姿を目立たなくするためだろう。
半分が弓、半分が剣を持っているようだ。
彼らの前に、鞘入りの剣を左手に持ったリーヴァスさんが静かに立っている。
距離は100m近い。
俺とルルは固唾を飲んで、これから起こることを見守っていた。
敵のリーダーだろう、大柄なローブ男が片手を上げた。
左右の崖上から、矢が雨のように降りそそいだ。
腕がいいのか、ほとんどがリーヴァスさんに当たるコースを飛んでくる。
風魔術と弓の合わせ技、「風弓(かざゆみ)」だろう。
一瞬、リーヴァスさんの身体が何本もの矢に串刺しになったように見えた。
しかし、その姿は高速で動く彼の残像に過ぎなかった。
右の崖の上から、何人もの敵が落ちてくる。
ほとんど時間をおかず、左の崖からも敵の身体が降ってきた。
前方の十人がリーヴァスさんを見失って、右往左往している。
彼は、すでに奴らの真後ろにいた。
一人の敵がそれに気づいて悲鳴を上げた。
「ひっ!」
恐るべきことに、敵が発したのはこの一言だけだった。
次の瞬間、十人全員が地に伏していた。
雷神リーヴァス。
史郎は、その2つ名の意味を知った。
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史郎が敵の死体を全て点ちゃん収納に入れ終わると、点ちゃん2号は再び出発した。
リーヴァスさんは、戦いなど無かったように、静かに座席に座っている。
返り血一つ付いてない。
俺は、信じられないくらいの剣の冴えに、畏怖するしかなかった。
リーヴァスさんの名を聞いて、気を失う人達のことを大げさだと思っていたが、これなら頷ける。
さすがは、黒鉄の冒険者である。
戦闘についてあらかじめ知らせていなかったモリーネは、しばらく混乱していたが、コルナが話しかけて、やっと落ちついた。
モリーネには、なぜ戦闘前に知らせてくれなかったのかって言われたが、戦闘に慣れていない場合、冷静な対処はできないからね。
お陰で、娘達が目を覚ますことなく、戦闘を終えることが出できた。
丘陵地帯を抜けた俺達は、森の中を進んだ。
進むにつれ、木が太く大きくなっていく。
空中で枝と枝が絡みあい、複雑な模様を作っている。
点ちゃん2号は、木々が織りなすアーチの中をどんどん進む。
やがて、枝の間に、不思議なものが見えはじめた。
空中に絡まった枝と枝を利用して、その隙間に鳥の巣のようなものがあるのだ。
モリーネによると、それがエルフの住宅だそうだ。
枝の上に作るので、重量を減らすために、軽い素材でできているそうだ。
更に進むと、球状住居の数が次第に増え始めた。
木々の上を歩く、エルフの姿も見える。
エルフの子供達は、見慣れない銀色の乗り物に驚いて、みんなが指さしている。
モリーネは、懐かしい風景にくつろいだ様子である。
突然、広場のような場所に出る。
広場の中心には巨大な4本の木が生えており、その間をツタのようなものが覆っていた。
「エルフの王城、イビスです」
モリーネが指さす。
彼女の指示で、4面ある壁の内、ある面の中央に点ちゃん2号を乗りつける。
壁の一部が、するすると持ちあがったので、そこを通りぬける。
俺達は、2号に乗ったままである。
巨大なトンネルのような通路は、ずっと奥へと続いていた。
再び緑の壁が現れた時、モリーネが降りるように指示する。
皆が降りると、壁の一部が上がり、ドア型の開口部となった。
そこから、騎士姿のエルフが数名出てくる。
最後に女性が現れた。
エメラルド色のドレスをまとい、頭は宝石の飾りで覆われている。
モリーネによく似ている。
「お母さまっ!!」
あまり感情を表さないモリーネが、溜めていたものを吐きだすように女性に抱きついた。
女性の目には、涙があった。
「モリーネ、おお、モリーネ。 帰って来てくれたのね……」
「お母様……」
二人は、しばらく抱きあっていた。
そのうち、女性がはっと気づいたようにこちらを見た。
「あなた方が、娘を?」
「お后様、リーヴァスです。 ご無沙汰しておりました」
「まあ! リーヴァス、あなたなの!」
「モリーネ姫をお助けしたのは、こちらの若者でございます」
リーヴァスさんが、俺の方を手で示す。
「あなたが?」
「聖樹様のお導きで、初めてお目にかかります。シローと申します」
俺は、点ちゃんノートの中から、この場に相応しい挨拶を選んだ。
「娘を救ってくれたこと、感謝するわ。
ここでは何だから、しかるべき場所にご案内するわ」
モリーネの母は後ろを振りかえると、騎士の一人に向かって小さく頷いた。
騎士は、それだけで后の意図を察したのだろう。
史郎達を連れて、城の中に入っていった。
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