ポータルズ -最弱魔法を育てようー

空知音

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第四章 聖樹世界エルファリア編

第28話 ミミとポルの冒険1

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獣人世界グレイルは『時の島』大陸。


猫人の少女ミミと狸人の少年ポルナレフは、大陸北西に位置するケーナイの町にいた。
学園都市世界から救出してきた獣人の行く先や住居を世話しているうちに、思いもかけないほど日にちが経っていた。

ミミとポルナレフは、取り急ぎ史郎達の後を追うことにした。
彼らのギルドランクは、学園都市世界での活躍で、一気に銀ランクまで上がっていた。

ケーナイのギルマス、アンデの好意で、馬車を貸してもらえることになった。
ギルドの紹介で、御者もベテランを用意してもらう。
馬車は、ケーナイの町を出てから3日後には狐人領に着いた。

狐人族族長コルネの計らいで、すぐにポータルを使わせてもらえることになった。
神樹の開いた口にあるポータルが怖いらしく、ポルナレフが二の足を踏んでいる。

ミミがその背中をドンと押した。

「あーっ!」

ポルナレフが頭からポータルに突っこむ。


ミミは、コルナに丁寧にお礼を言うと、ポルナレフの後を追った。

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ポータルを出ると、当然ポルことポルナレフが怒っていた。


「ど、どうして押したりなんかするんだよ」

「そうでもしないと、いつまで経っても渡れないじゃない」

ミミは、涼しい顔である。

「こんにちは。ミミちゃんとポルナレフ君ね?」

美しい女性が、話しかけてくる。

ポルは、赤くなっている。仕方なくミミが対応することにした。

「初めまして。 どうして、私達の事を?」

「今日の事は、アンデからの連絡で知ったの。
でも、君たちの事は、ルルやシローから詳しく聞いているわ」

「え? そうなんですか。ルルさんやシローのお知りあいなんですか?」

「ええ、そうよ。私は、ルルの母親。リーヴァスの娘でもあるわ」

「「えっ!!」」

「だから、気兼ねなんてしなくていいわよ。家は、娘達が使った所でいいわね?」

「あ、ありがとうございます。ポン太、あんたも、きちんとお礼して」

「あ、すみません。お世話になります」

二人は、シロー達が泊まったというS字型の「木の家」で過ごすことになった。

キッチンは無いようだが、寝室とリビングは十分広い。

ノックがあったので、ポルがドアを開ける。高齢の上品な女性が立っていた。

「どうだい、困ったことはないかい?」

「おばあちゃんは、誰?」

「ああ、紹介が遅れちまったね。私は、近所に住んでるミランダっていう者さ。
何か困ったことがあったら、私に言いな」

「ミランダさんも、シローさんの知りあい?」

「知りあいってほどじゃないけど、こないだ会って話したよ」

「おぱあちゃん、すみません。 ポン太は、銀ランクになったことを早くシローに知らせたいんですよ」

「おやおや。ああ、あんた達、あの有名なパーティーポンポコリンかい?」

ポルが胸を張る。

「そうですよ。 僕らは、ポンポコリンのメンバーです。
リーダーのシローさんは、黒鉄の冒険者ですごいんですよ」

「そうかい、そうかい」

ミランダは、目を細めてポルを見ている。

「お口に合うか分からないけれど、これお食べ」

ミランダは、下げてきたバスケットをテーブルの上に置いた。
中には、冷えたジュースと、具を挟んだパンが入っている。

「うわー! おいしそう! おばあちゃん、ありがとう!」

ミランダは、ポルの反応に満足そうに微笑んでいる。

「おばあちゃん、許してね。 
ポン太は、長いこと夢に見ていた冒険者になれて、活躍できることが、すっごく嬉しいの」

ミミがとりなす。


ミランダは、そんな二人を優しい目でじっと見ていた。

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次の日、ミミとポルは、エレノアさんに連れられて、ギルド本部に行った。


「うわっ! これがギルド本部か! すっごいなー」

ポルは、きょろきょろしながら、部屋中を歩きまわっている。

「ポン太! 恥ずかしいからじっとしてて」

ミミが注意するが、興奮しているポルの耳には届いていない。エレノアさんも、苦笑いしている。

奥から、二人の付きそいを連れた、ミランダが出てきた。エレノアが、膝をついて礼をする。

「ミランダ様、この二人がポンポコリンのミミとポルナレフです」

「あれ? おばあちゃん、どうしてここにいるの?」

ポルが、驚いている。

「ポルナレフ君、この方はギルド本部の長、つまり全てのギルドで一番偉い方よ」

エレノアが説明する。

「えっ? どういう……?」

さすがに気づいたミミが、ポルに飛びついて頭を下げさせる。

「き、昨日は大変な失礼をしました!」

さすがのミミも、やってしまった感が限界を超えていたようだ。彼女らしくなく、縮こまっている。
ポルは、まだ何が起こったか、ピンときていない。

「ホホホ、気にしなくていいんだよ。
わたしゃね、長いこと、この仕事やってるけれど、昨日くらい嬉しかったことはないよ」

ミランダは、ポルのところに来ると、その頭を撫でる。

「長生きするのも、悪くないねえ。あんたのような子に会えるんだから」

ミランダは、ミミが下げていたポルの頭を上げさせる。彼を抱き寄せて、こう言った。

「エレノア、あんた達。この子らの事をよく覚えておくんだよ。
冒険者として、誇り高く生きている若者だ。
私達ギルドは、こういう若者のためにも、いい加減な仕事は出来ないんだよ」



ミランダの涙が、ポルの頬を濡らしていた。
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