上 下
3 / 44

3・ゲームの世界かもしれない

しおりを挟む


 案内された部屋の中は、思っていたよりも広かった。
 十二畳はありそうな広さに、セミダブルサイズのベッド。だけど通常のベッドより少し長さがあるような。
 机と椅子のセットがあり。空っぽだけどクローゼットと本棚も備え付けてある。

 持っていた自分の荷物をクローゼットに放り込み、奥に続く部屋を覗くと。洗面台にトイレ、シャワールームまであった。
 キッチンが無いだけで、ちょっとしたワンルームみたいだ。

 ベッド脇にある窓を開けると、そこは広い中庭!

 …ではなく、向かい側の部屋の窓だった。
 あっちの窓が開けば挨拶くらいは出来そうで、少し大きな声を出せば、話しも出来そうな距離だ。

 まあ、そんな近所迷惑な事はしないけどな。

 全体的に白でまとめられていて、シンプルな部屋だ。
 設備も問題無く揃っていて、他の部屋を用意しなくてももうここで良いんじゃないか? って思ってしまう。

 ただ、その調度品の数々が若干大きい様な気もするけど。

 さてと、隣りの部屋に行きますか。
 隣りは留愛の部屋だ。
 軽くノックをして、留愛~入るぞ~ 。と声を掛けて扉を開けると、留愛はベッドの端に座り、呆然としていた。

 大丈夫か? と声をかけながらベッドに近づくと、留愛は「兄ぃ~ここ、乙ゲーかもしんない~」と困り顔で見上げて来た。



 どういう事だ? と訊きながら近くにあった椅子を引き寄せて、反対向きに置き。座席を跨ぐ様に座って、背凭せもたれに腕を預ける。
 行儀が悪いけど、楽な姿勢なんだ。

 留愛が言うには、知り合いから勧められたアプリゲームと似ている点があるのだとか。
 その中でも、大地に湧き出る瘴気。
 それを防ぐ浄化スキル持ち。
 年々、浄化が間に合わなくなっている事が一致していて、何より、先程の神殿長レクラムさんは、そのゲームの攻略対象として登場するらしい。

 「…俺達は、そのゲームの世界に飛ばされた可能性がある?」

 「うん。だとしても僕達のポジションが分からないんだ。重要な立場なのか、それともストーリーに干渉しないモブなのか」

 「神殿長に世界規模のお願いをされるんだから、モブじゃないだろう?」

 「それも考えてたんだけどね。いくら思い起こしても僕達みたいな登場人物は居なかったんだ」

 まあ、一回しかクリアしてないから何とも言えないけどね。と留愛は肩を竦めて見せる。

 「因みにどんな内容なんだ?」

 「んとね。世界が瘴気でいっぱいになっちゃって。どうしようも無いから、浄化能力の高い主人公が、異世界から召喚されるんだ。

 で、神殿の奥にある神託の間って部屋で、神官とか王族が祈って、主人公を召喚するんだけど……。主人公は誰のお世話になるかって選択で、攻略対象を決めるの。

 決定した攻略対象と、障害を乗り越えてエンディングを迎えるって話。
 エンディングはそれぞれ、ハッピー、ノーマル、バッドの三種類がある。って説明文に載ってたよ。」

 「ふむ、典型的な乙女ゲームだな。
 でも俺達は女の子じゃないから、もし仮にここがゲームの中の世界だったとしても、ストーリーに俺達は、関係無いんじゃないか?」

 だからそこまで悲愴な顔をしなくても良いんじゃないか?
 そりゃ、いきなり全然知らん世界に移動させられて思う事もあるが、そうなってしまったものは仕方が無い。

 そんな事を思っていたら留愛の目がスっと逸らされた。
 ああ、これは何かあるな。

 「るーあ?」

 「あ、あのね。
 このゲーム、BL要素が強いんだ。」




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生先はもふもふのいる世界です

BL / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:926

南国特有のスコールが初恋を連れてきてくれました

BL / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:711

寄るな。触るな。近付くな。

BL / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:610

ある神と贄の、取り立てて何もない日

BL / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:41

転生したら魔王の専属料理人でした

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:12

側近候補を外されて覚醒したら旦那ができた話をしよう。

BL / 完結 24h.ポイント:568pt お気に入り:3,644

処理中です...