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3・ゲームの世界かもしれない
しおりを挟む案内された部屋の中は、思っていたよりも広かった。
十二畳はありそうな広さに、セミダブルサイズのベッド。だけど通常のベッドより少し長さがあるような。
机と椅子のセットがあり。空っぽだけどクローゼットと本棚も備え付けてある。
持っていた自分の荷物をクローゼットに放り込み、奥に続く部屋を覗くと。洗面台にトイレ、シャワールームまであった。
キッチンが無いだけで、ちょっとしたワンルームみたいだ。
ベッド脇にある窓を開けると、そこは広い中庭!
…ではなく、向かい側の部屋の窓だった。
あっちの窓が開けば挨拶くらいは出来そうで、少し大きな声を出せば、話しも出来そうな距離だ。
まあ、そんな近所迷惑な事はしないけどな。
全体的に白で纏められていて、シンプルな部屋だ。
設備も問題無く揃っていて、他の部屋を用意しなくてももうここで良いんじゃないか? って思ってしまう。
ただ、その調度品の数々が若干大きい様な気もするけど。
さてと、隣りの部屋に行きますか。
隣りは留愛の部屋だ。
軽くノックをして、留愛~入るぞ~ 。と声を掛けて扉を開けると、留愛はベッドの端に座り、呆然としていた。
大丈夫か? と声をかけながらベッドに近づくと、留愛は「兄ぃ~ここ、乙ゲーかもしんない~」と困り顔で見上げて来た。
どういう事だ? と訊きながら近くにあった椅子を引き寄せて、反対向きに置き。座席を跨ぐ様に座って、背凭れに腕を預ける。
行儀が悪いけど、楽な姿勢なんだ。
留愛が言うには、知り合いから勧められたアプリゲームと似ている点があるのだとか。
その中でも、大地に湧き出る瘴気。
それを防ぐ浄化スキル持ち。
年々、浄化が間に合わなくなっている事が一致していて、何より、先程の神殿長レクラムさんは、そのゲームの攻略対象として登場するらしい。
「…俺達は、そのゲームの世界に飛ばされた可能性がある?」
「うん。だとしても僕達のポジションが分からないんだ。重要な立場なのか、それともストーリーに干渉しないモブなのか」
「神殿長に世界規模のお願いをされるんだから、モブじゃないだろう?」
「それも考えてたんだけどね。いくら思い起こしても僕達みたいな登場人物は居なかったんだ」
まあ、一回しかクリアしてないから何とも言えないけどね。と留愛は肩を竦めて見せる。
「因みにどんな内容なんだ?」
「んとね。世界が瘴気でいっぱいになっちゃって。どうしようも無いから、浄化能力の高い主人公が、異世界から召喚されるんだ。
で、神殿の奥にある神託の間って部屋で、神官とか王族が祈って、主人公を召喚するんだけど……。主人公は誰のお世話になるかって選択で、攻略対象を決めるの。
決定した攻略対象と、障害を乗り越えてエンディングを迎えるって話。
エンディングはそれぞれ、ハッピー、ノーマル、バッドの三種類がある。って説明文に載ってたよ。」
「ふむ、典型的な乙女ゲームだな。
でも俺達は女の子じゃないから、もし仮にここがゲームの中の世界だったとしても、ストーリーに俺達は、関係無いんじゃないか?」
だからそこまで悲愴な顔をしなくても良いんじゃないか?
そりゃ、いきなり全然知らん世界に移動させられて思う事もあるが、そうなってしまったものは仕方が無い。
そんな事を思っていたら留愛の目がスっと逸らされた。
ああ、これは何かあるな。
「るーあ?」
「あ、あのね。
このゲーム、BL要素が強いんだ。」
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