聖者は二人の騎士に愛される

桜歌

文字の大きさ
46 / 64
青年篇

45 ※

しおりを挟む


 初めて経験する気持ち良さにうっとりしていたら、僕と男の間に何か硬い物が挟まってると気付いた。
 何だろう?
 湖の生物?
 【毒】は無いから、危なくは無いけど。
 何でこんなところにるんだろう。
 ……気になる。

 二人の舌が擦れる口づけは気持ち良いけど、気になり出すと集中出来ない。
 だってブラッドウルフは遠く離れた岸辺で唸ってるだけだけど、ゴリっと硬いソイツは僕の足に密着してる。
 無視するには主張がうるさい。
 僕はソレを確かめるべく、そっと手を伸ばした。

 噛み付いたり、しないよね?

 ……小さくはないけど、手で掴めるサイズ。岩みたいにゴツゴツ硬いけど、表面は弾力のある皮膚におおわれてるな。

 「ッ……!」

 クチュクチュと音を立てて口づけを続けている男の腰がピクリと跳ねて、小さく唸った。

 男が噛まれた?
 生物を刺激しないように先端を探ると、丸みを帯びて粘液を滲ませたソイツは、ぬるんとした感触。……まるで、今の、僕の口の中みたいだ……。
 ぬるぬると撫でてみたけど、男の身体に噛み付いてもいないし、口らしきものも無く、その身体はピクン、ピクン、と反応している。

 「はっ……ァ……」と男の呼吸が乱れたから。あ、しまった、これは反対側だなと、生物の身体をなぞってツゥーと指を動かせば──

 …………。

 僕は分かってしまった。
 コレ、触っちゃダメなやつだ。
 謎の生物は男の身体から生えていた。
 自分以外のを触る事なんてなかったから気付かなかった。ゴメンナサイ。と手を引こうとしたら──

 その手をぐっと掴まれて、代わりに唇が離れていった。

 「ぁ……」

 男の急所を撫で回した僕も悪いけど、勘違いだったんだから許して欲しい。唾液の糸を引き連れて離れていった唇が寂しい。

 もう、終わる? 男の顔を窺い見れば──熱い。
 鮮やかな赤紫の瞳の中がギラギラと熱を帯びていて、興奮しているのが分かった。

 「……ご──」
 「スルなら、もっとしっかり」
 「え……?」

 謝罪の言葉は言えなかった。
 色香の漂う掠れた声。僕の手の上から、自らの陰茎を握り、「ハッ、ハッ」と自分の呼吸に合わせて上下に擦る男。

 ……しごく力、強くないか? じゃなくて、なんで僕に握らせるんだ?
 口づけを止めてしまった男は、僕の首筋に顔を埋めて、チュプ……、チュプ……、と音を立てながら、おとがい、首筋、喉と、舐めたり軽く歯を当てたりしている。
 それより僕は、口づけの方が気持ち良かったな。

 そう思う間にも、陰茎を握らされた手の中は男の潤滑液でグジュグジュになり、更に強さと速度を速めていって──

 「くッ……」

 熱いものがドプッと出た。
 ビクビクと痙攣する男の腰と陰茎。根元から亀頭へと、握らされた手で擦り上げられ、中に残った残滓を外に搾り出した。
 ……そんな事にさえも僕の手使っちゃうんだぁ。

 僕の手、知らない男の白濁塗れ……
 これ、僕の服汚れたよね?
 誰かに見られる前に服、洗いたいな。

 遠い目をした僕の意思を汲み取ったのか、今まで空気の層に包まれて、濡れてなかった僕の服が、じわじわと水を吸い始めた。あああ……

 ……僕のリュック──
 ……僕の靴が──









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜 役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。 お願いそっとしてて下さい。 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎ 多分短編予定

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...