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青年篇
45 ※
しおりを挟む初めて経験する気持ち良さにうっとりしていたら、僕と男の間に何か硬い物が挟まってると気付いた。
何だろう?
湖の生物?
【毒】は無いから、危なくは無いけど。
何でこんなところに在るんだろう。
……気になる。
二人の舌が擦れる口づけは気持ち良いけど、気になり出すと集中出来ない。
だってブラッドウルフは遠く離れた岸辺で唸ってるだけだけど、ゴリっと硬いソイツは僕の足に密着してる。
無視するには主張がうるさい。
僕はソレを確かめるべく、そっと手を伸ばした。
噛み付いたり、しないよね?
……小さくはないけど、手で掴めるサイズ。岩みたいにゴツゴツ硬いけど、表面は弾力のある皮膚に覆われてるな。
「ッ……!」
クチュクチュと音を立てて口づけを続けている男の腰がピクリと跳ねて、小さく唸った。
男が噛まれた?
生物を刺激しないように先端を探ると、丸みを帯びて粘液を滲ませたソイツは、ぬるんとした感触。……まるで、今の、僕の口の中みたいだ……。
ぬるぬると撫でてみたけど、男の身体に噛み付いてもいないし、口らしきものも無く、その身体はピクン、ピクン、と反応している。
「はっ……ァ……」と男の呼吸が乱れたから。あ、しまった、これは反対側だなと、生物の身体をなぞってツゥーと指を動かせば──
…………。
僕は分かってしまった。
コレ、触っちゃダメなやつだ。
謎の生物は男の身体から生えていた。
自分以外のを触る事なんてなかったから気付かなかった。ゴメンナサイ。と手を引こうとしたら──
その手をぐっと掴まれて、代わりに唇が離れていった。
「ぁ……」
男の急所を撫で回した僕も悪いけど、勘違いだったんだから許して欲しい。唾液の糸を引き連れて離れていった唇が寂しい。
もう、終わる? 男の顔を窺い見れば──熱い。
鮮やかな赤紫の瞳の中がギラギラと熱を帯びていて、興奮しているのが分かった。
「……ご──」
「スルなら、もっとしっかり」
「え……?」
謝罪の言葉は言えなかった。
色香の漂う掠れた声。僕の手の上から、自らの陰茎を握り、「ハッ、ハッ」と自分の呼吸に合わせて上下に擦る男。
……扱く力、強くないか? じゃなくて、なんで僕に握らせるんだ?
口づけを止めてしまった男は、僕の首筋に顔を埋めて、チュプ……、チュプ……、と音を立てながら、頤、首筋、喉と、舐めたり軽く歯を当てたりしている。
それより僕は、口づけの方が気持ち良かったな。
そう思う間にも、陰茎を握らされた手の中は男の潤滑液でグジュグジュになり、更に強さと速度を速めていって──
「くッ……」
熱いものがドプッと出た。
ビクビクと痙攣する男の腰と陰茎。根元から亀頭へと、握らされた手で擦り上げられ、中に残った残滓を外に搾り出した。
……そんな事にさえも僕の手使っちゃうんだぁ。
僕の手、知らない男の白濁塗れ……
これ、僕の服汚れたよね?
誰かに見られる前に服、洗いたいな。
遠い目をした僕の意思を汲み取ったのか、今まで空気の層に包まれて、濡れてなかった僕の服が、じわじわと水を吸い始めた。あああ……
……僕のリュック──
……僕の靴が──
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