VRMMOの世界で第2の人生を謳歌します。

ヤキメシ

文字の大きさ
4 / 69

4.ゴブリン

しおりを挟む
翌朝、この村では太陽が上がると同時に起きるらしい。


太陽が沈むと眠り、上がると起きる。


なんて原始的な生活なんだ。


しかし、これこそが俺が求めていた物の1つだ。


不便だからこそいいのだ。


朝飯を食べているときに、俺はさっそく狩りにいきたいと言ってみた


「なに言ってんだい。森は魔物も出るし危ないんだよ。止めときな。」


母に止められてしまった。てか、やっぱり魔物いるんだな。


「そうだぞ、それに森に行くときは三人以上で行くのが決まりだ。それは知ってるだろ?」


そうなのか、それだと行くのは厳しいな……


「そうだったね、忘れてたよ。」


「なら午前中は畑仕事止めて狩りに行くか?」


「うん!」


俺がどうやって行くか考えていると、父の方からそう言ってきてくれたので助かった。


隙をみて抜け出すのも大騒ぎになるだろうし、無理して死ぬのもあれだったから丁度良かった。



◇   ◇   ◇   ◇   ◇





俺と父と父の友人の3人で森の中を歩いていた。


今まで父の名前が分からなかったが――母は父のことあなたとか、ちょっととかそんな風にしか呼ばないし、姉はお父さんとしか呼ばないので分からなかった――父の友人が名前で呼んでいたのでようやく分かった。


父の名前はクルシュと言うらしい。


ちなみに父の友人の名前はアグハである。


3人とも、弓と魔物用に剣を装備していた。


「いいか、バルト。危険を感じたら直ぐに逃げるんだ。分かったな。」


「うん。」


一時間ほど森のなかを歩くが、獲物は中々姿を現さなかった。


「今日は獲物一匹いやしねーな」


アグハが愚痴をこぼすがそれを父が宥めていた。


そんなときだった。


「カサカサカサ」


30メートルぐらい先の茂みで揺れる音がした。


その音に父とアグハも気づいたようだ。


二人とも背を低くし音をたてないようにし、俺にも同じようにしろと手で合図をする。


俺たちはその茂みをじっと見守る。


するとそこから体長90センチぐらいの猪が出てきた。


それを見た父は弓を構える。


しかし、父が弓を放とうとした瞬間、猪の体が何かに貫かれた。


「ギギィギギィ!」


猪が出てきた茂みからゴブリンが出てきた。


どうやら、ゴブリンが木で出来た槍で突き刺したらしい。


ゴブリンはそんなに大きくなく120センチぐらいの大きさだ。


(なーんだ、ゴブリンか。)


俺はその時なめていた。


ゴブリンなど、ゲームだと一番最初に出てくる雑魚中の雑魚。


だが、俺は思い知ることになる。


この世界はゲームなどではなく、現実なのだと。


ゴブリンを甘くみていた俺は、真っ正面からそのゴブリンに向かって剣を構えながら走っていった。


後ろから父とアグハの止める声が聞こえるが、無視した。


ゴブリンは猪を仕留めて喜んでいたが、俺が走り出したら流石に気付いて、槍を構えた。


俺はゴブリンが槍を突き出す瞬間に右にかわして、がらがらに空いた腕を切った。


「ギィ!」


そこで勝利を確信した俺は油断してしまった。


ゴブリンは腕を切られながらも、片方の腕だけで槍を振り俺の足を凪ぎ払った。


その衝撃で俺は転んでしまい、その上にゴブリンが乗り掛かり止めの一撃を刺そうとする。


俺はその時、ゴブリンの目を見てしまった。


その目には゛死にたくない〝とはっきりとした意志が感じ取れた。


あ、死んだ。


俺は思わず目を瞑る……がいつまでも刺された感触はなく、逆にゴブリンが俺の上から倒れた。


(助かったのか……?)


俺は隣に倒れているゴブリンを見てみると、頭に矢が刺さっていた。


「おい!大丈夫か!」


父が駆け寄り俺を抱き締めた。


「ばかやろ!魔物を甘くみるんじゃね!勝手なこともう二度とすんな!」


その声は少し震えていた。


よほど心配したのだろう。


「ごめんなさい」


あの矢は父が放ったものらしい。


俺は父に命を救われたのだ。


ゴブリンだからって舐めてた。


実際に戦うと、ゴブリンにも当たり前だか命があり、生きたい為に死に物狂いで戦っているのだ。


俺はその迫力に負けてしまった。


どこか、まだどこかゲーム感覚でいた俺だが、今回のことでその感覚はなくなった。


そういう意味では、死にそうになったがいい経験になった。


結果、死ななかったのだがらそれで良い。


だが、もう二度とこんなヘマはしない。


俺は心にそう誓った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...