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24.願い(2)
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俺の言葉を聞いて、ランバートはかなり難しい顔をしている。
「なぜ貴族になりたいのかね?」
「それは……今は言えません。」
エリナの父親に「エリナさんとお付き合いしたいからです」なんて言えるかー!
「そうか……まあ詮索はしないでおこう。バルト君は娘の命の恩人だ。だからその願い叶えてやりたいが、貴族になるためには最低、魔法は使えなければならないんだ。」
「魔法は使えます。」
「なに!?本当かね?」
「はい。」
貴族でもない俺が魔法を使えることに驚いているようだ。
横のエリナとマルスも驚いていた。
「疑うわけではないが、一応見せてくれないか?」
「わかりました。」
座ったままの状態で、手を机の上に出し、手のひらを上に向け雷の球体を生み出す。
「属性は雷か。」
「あと強化魔法も使えます。」
『え?』
三人の声がリンクする。
「なるほど、2つ持ちか……それならなんとかなるかもしれんな。」
「ほんとうですか!?」
「ああ、2つ持ちは強力な切り札になる。戦争が起きたとき、現在の勝敗は魔導師の数で決まると言っても過言ではない。貴族の数=魔導師の数。庶民にも稀に魔法を使えるものが現れるが、そういった人達は大抵が冒険者ギルドか教会に入る。だから実際の魔導師の数はもう少し多くはなる。しかし、冒険者ギルドや教会に属する人達を強制的に戦争に駆り出すことはできないんだ。」
「え?何でですか?」
「冒険者ギルドや教会は国に属さない組織だからだ。゛冒険者は自由であるべき、何者にも縛られない〝という信念がある。もし、国が無理やり従わせようとすると、その国から冒険者ギルドは消える。」
「消える?」
「そうだ。冒険者ギルドが国から出ていくのだ。そうなれば冒険者も国を出ていく。だから国は冒険者ギルドに属する人を駆り出せない。冒険者は国になくてはならない存在だ。魔物に関する問題を解決してくれる。冒険者がいなくなれば市民の反発も強くなるだろう。」
「なるほど、それによって冒険者の自由を守っているのですね。しかし、冒険者ギルドがなくなっても、国が新しく作ればいいのでは?」
「確かに国が作れないことはない。だが、冒険者は自由を求めている。国が作ったということは、少なからず国に縛られるということだ。それを冒険者は望んでいない。結果、冒険者の数も減り、冒険者ギルドを維持することが出来ない。以前、冒険者を強制的に戦争に駆り出そうとした国があった。するとたちまち、冒険者ギルドは消え、冒険者もいなくなり、その国は戦争どころではなくなった。内部の問題――魔物が襲ってきたり内戦が起きたりと結局内部から崩壊し、敵国からも攻められ滅び、新しい国が出来た。それ以降、と冒険者を強制的に戦争に参加させようと企む国はもう無い。」
「そんな過去が……」
「ああ……そして、教会は゛我々は神にのみ支配される〝と考えている。だから国からの命令は聞かない。教会は光魔法――回復魔法を教えるため、国に無くてはならない存在だ。だから、教会に対し強く出ていくことが出来ないのだ。」
「大体のことはわかりました。今のを踏まえると、国としては戦争のため魔導師は出来るだけ確保したい。だから、魔法が使える者は貴族にする可能性がある。そして、私は希少な2つ持ちだから、国としては絶対手に入れて起きたいはずだと、そう言うことですね?」
「その通りだ。」
「では、私の願い叶えられるのでしょうか?」
「うむ……絶対とは言えないが、出来る限りのことはしよう。」
「ありがとうございます!」
「ただ、覚悟はしておいてくれ。なれたとしても、バルト君は元々貴族ではない。他の貴族からの反発も強い可能性がある。貴族は己の血筋に誇りを持っている場合が多い。その中に異端な血筋の者が入り込めば、何かしてくる輩も現れるかもしれん。それに、覚えることもたくさんあるからね。」
「はい、わかりました。」
「そうだ。バルト君はもうお昼は食べたかね?」
「いえ、まだです。」
「では、食べていきなさい。」
「はい。ぜひ頂きます。」
ここで無下に断るのもなんなので、お昼はここで食べるとしよう。
アルベルト家のご飯は豪華だった。
平民だったら1度も食べることが無いだろうものばかり。
すべて美味しく、少し食べ過ぎてしまった。
「バルト様、この前は本当にありがとうございました。」
昼食を食べ終え、門までエリナに送ってもらっている。
護衛としてマルスも一緒だ。
「私からもあらためて礼を言わせてもらう。ありがとう。」
「いえいえ、俺にもメリットはありましたしね。」
「貴族になりたいというお話ですか?」
「そうです。まだなれるかは分かりませんが。」
「バルト様はお金目当てではないですよね。貴族になりたがる人は、大抵お金目当てなのですが、バルト様からはそんな感じはしません。いったいなんのために?」
「それはまだ秘密です。いずれ分かりますよ。」
「そうですか……それではその時を楽しみにしています。」
「はい。待っていてください。あ、ところでエリナは今何歳なのですか?」
「そういば言っていませんでしたね。私は14歳です。ちなみにマルスは18歳ですよ」
「それじゃ、俺の1つ下なんですね。」
「ということは、バルト様15歳なのですね。」
「はい。」
そんな話をしていると門に着いた。
「それじゃあ、また。」
「あの、バルト様!」
「なんですか?」
「いえ、なんでもありません。結果がわかりましたら、宿屋まで使いを出しますので、その時にまた会いましょう。」
「わかりました。それでは。」
エリナとマルスに見送られ、アルベルト家を後にした。
「なぜ貴族になりたいのかね?」
「それは……今は言えません。」
エリナの父親に「エリナさんとお付き合いしたいからです」なんて言えるかー!
「そうか……まあ詮索はしないでおこう。バルト君は娘の命の恩人だ。だからその願い叶えてやりたいが、貴族になるためには最低、魔法は使えなければならないんだ。」
「魔法は使えます。」
「なに!?本当かね?」
「はい。」
貴族でもない俺が魔法を使えることに驚いているようだ。
横のエリナとマルスも驚いていた。
「疑うわけではないが、一応見せてくれないか?」
「わかりました。」
座ったままの状態で、手を机の上に出し、手のひらを上に向け雷の球体を生み出す。
「属性は雷か。」
「あと強化魔法も使えます。」
『え?』
三人の声がリンクする。
「なるほど、2つ持ちか……それならなんとかなるかもしれんな。」
「ほんとうですか!?」
「ああ、2つ持ちは強力な切り札になる。戦争が起きたとき、現在の勝敗は魔導師の数で決まると言っても過言ではない。貴族の数=魔導師の数。庶民にも稀に魔法を使えるものが現れるが、そういった人達は大抵が冒険者ギルドか教会に入る。だから実際の魔導師の数はもう少し多くはなる。しかし、冒険者ギルドや教会に属する人達を強制的に戦争に駆り出すことはできないんだ。」
「え?何でですか?」
「冒険者ギルドや教会は国に属さない組織だからだ。゛冒険者は自由であるべき、何者にも縛られない〝という信念がある。もし、国が無理やり従わせようとすると、その国から冒険者ギルドは消える。」
「消える?」
「そうだ。冒険者ギルドが国から出ていくのだ。そうなれば冒険者も国を出ていく。だから国は冒険者ギルドに属する人を駆り出せない。冒険者は国になくてはならない存在だ。魔物に関する問題を解決してくれる。冒険者がいなくなれば市民の反発も強くなるだろう。」
「なるほど、それによって冒険者の自由を守っているのですね。しかし、冒険者ギルドがなくなっても、国が新しく作ればいいのでは?」
「確かに国が作れないことはない。だが、冒険者は自由を求めている。国が作ったということは、少なからず国に縛られるということだ。それを冒険者は望んでいない。結果、冒険者の数も減り、冒険者ギルドを維持することが出来ない。以前、冒険者を強制的に戦争に駆り出そうとした国があった。するとたちまち、冒険者ギルドは消え、冒険者もいなくなり、その国は戦争どころではなくなった。内部の問題――魔物が襲ってきたり内戦が起きたりと結局内部から崩壊し、敵国からも攻められ滅び、新しい国が出来た。それ以降、と冒険者を強制的に戦争に参加させようと企む国はもう無い。」
「そんな過去が……」
「ああ……そして、教会は゛我々は神にのみ支配される〝と考えている。だから国からの命令は聞かない。教会は光魔法――回復魔法を教えるため、国に無くてはならない存在だ。だから、教会に対し強く出ていくことが出来ないのだ。」
「大体のことはわかりました。今のを踏まえると、国としては戦争のため魔導師は出来るだけ確保したい。だから、魔法が使える者は貴族にする可能性がある。そして、私は希少な2つ持ちだから、国としては絶対手に入れて起きたいはずだと、そう言うことですね?」
「その通りだ。」
「では、私の願い叶えられるのでしょうか?」
「うむ……絶対とは言えないが、出来る限りのことはしよう。」
「ありがとうございます!」
「ただ、覚悟はしておいてくれ。なれたとしても、バルト君は元々貴族ではない。他の貴族からの反発も強い可能性がある。貴族は己の血筋に誇りを持っている場合が多い。その中に異端な血筋の者が入り込めば、何かしてくる輩も現れるかもしれん。それに、覚えることもたくさんあるからね。」
「はい、わかりました。」
「そうだ。バルト君はもうお昼は食べたかね?」
「いえ、まだです。」
「では、食べていきなさい。」
「はい。ぜひ頂きます。」
ここで無下に断るのもなんなので、お昼はここで食べるとしよう。
アルベルト家のご飯は豪華だった。
平民だったら1度も食べることが無いだろうものばかり。
すべて美味しく、少し食べ過ぎてしまった。
「バルト様、この前は本当にありがとうございました。」
昼食を食べ終え、門までエリナに送ってもらっている。
護衛としてマルスも一緒だ。
「私からもあらためて礼を言わせてもらう。ありがとう。」
「いえいえ、俺にもメリットはありましたしね。」
「貴族になりたいというお話ですか?」
「そうです。まだなれるかは分かりませんが。」
「バルト様はお金目当てではないですよね。貴族になりたがる人は、大抵お金目当てなのですが、バルト様からはそんな感じはしません。いったいなんのために?」
「それはまだ秘密です。いずれ分かりますよ。」
「そうですか……それではその時を楽しみにしています。」
「はい。待っていてください。あ、ところでエリナは今何歳なのですか?」
「そういば言っていませんでしたね。私は14歳です。ちなみにマルスは18歳ですよ」
「それじゃ、俺の1つ下なんですね。」
「ということは、バルト様15歳なのですね。」
「はい。」
そんな話をしていると門に着いた。
「それじゃあ、また。」
「あの、バルト様!」
「なんですか?」
「いえ、なんでもありません。結果がわかりましたら、宿屋まで使いを出しますので、その時にまた会いましょう。」
「わかりました。それでは。」
エリナとマルスに見送られ、アルベルト家を後にした。
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