VRMMOの世界で第2の人生を謳歌します。

ヤキメシ

文字の大きさ
24 / 69

24.願い(2)

しおりを挟む
俺の言葉を聞いて、ランバートはかなり難しい顔をしている。


「なぜ貴族になりたいのかね?」


「それは……今は言えません。」


エリナの父親に「エリナさんとお付き合いしたいからです」なんて言えるかー!


「そうか……まあ詮索はしないでおこう。バルト君は娘の命の恩人だ。だからその願い叶えてやりたいが、貴族になるためには最低、魔法は使えなければならないんだ。」


「魔法は使えます。」


「なに!?本当かね?」


「はい。」


貴族でもない俺が魔法を使えることに驚いているようだ。


横のエリナとマルスも驚いていた。


「疑うわけではないが、一応見せてくれないか?」


「わかりました。」


座ったままの状態で、手を机の上に出し、手のひらを上に向け雷の球体を生み出す。


「属性は雷か。」


「あと強化魔法も使えます。」


『え?』


三人の声がリンクする。


「なるほど、2つ持ちか……それならなんとかなるかもしれんな。」


「ほんとうですか!?」


「ああ、2つ持ちは強力な切り札になる。戦争が起きたとき、現在の勝敗は魔導師の数で決まると言っても過言ではない。貴族の数=魔導師の数。庶民にも稀に魔法を使えるものが現れるが、そういった人達は大抵が冒険者ギルドか教会に入る。だから実際の魔導師の数はもう少し多くはなる。しかし、冒険者ギルドや教会に属する人達を強制的に戦争に駆り出すことはできないんだ。」


「え?何でですか?」


「冒険者ギルドや教会は国に属さない組織だからだ。゛冒険者は自由であるべき、何者にも縛られない〝という信念がある。もし、国が無理やり従わせようとすると、その国から冒険者ギルドは消える。」


「消える?」


「そうだ。冒険者ギルドが国から出ていくのだ。そうなれば冒険者も国を出ていく。だから国は冒険者ギルドに属する人を駆り出せない。冒険者は国になくてはならない存在だ。魔物に関する問題を解決してくれる。冒険者がいなくなれば市民の反発も強くなるだろう。」


「なるほど、それによって冒険者の自由を守っているのですね。しかし、冒険者ギルドがなくなっても、国が新しく作ればいいのでは?」


「確かに国が作れないことはない。だが、冒険者は自由を求めている。国が作ったということは、少なからず国に縛られるということだ。それを冒険者は望んでいない。結果、冒険者の数も減り、冒険者ギルドを維持することが出来ない。以前、冒険者を強制的に戦争に駆り出そうとした国があった。するとたちまち、冒険者ギルドは消え、冒険者もいなくなり、その国は戦争どころではなくなった。内部の問題――魔物が襲ってきたり内戦が起きたりと結局内部から崩壊し、敵国からも攻められ滅び、新しい国が出来た。それ以降、と冒険者を強制的に戦争に参加させようと企む国はもう無い。」


「そんな過去が……」


「ああ……そして、教会は゛我々は神にのみ支配される〝と考えている。だから国からの命令は聞かない。教会は光魔法――回復魔法を教えるため、国に無くてはならない存在だ。だから、教会に対し強く出ていくことが出来ないのだ。」


「大体のことはわかりました。今のを踏まえると、国としては戦争のため魔導師は出来るだけ確保したい。だから、魔法が使える者は貴族にする可能性がある。そして、私は希少な2つ持ちだから、国としては絶対手に入れて起きたいはずだと、そう言うことですね?」


「その通りだ。」


「では、私の願い叶えられるのでしょうか?」


「うむ……絶対とは言えないが、出来る限りのことはしよう。」


「ありがとうございます!」


「ただ、覚悟はしておいてくれ。なれたとしても、バルト君は元々貴族ではない。他の貴族からの反発も強い可能性がある。貴族は己の血筋に誇りを持っている場合が多い。その中に異端な血筋の者が入り込めば、何かしてくる輩も現れるかもしれん。それに、覚えることもたくさんあるからね。」


「はい、わかりました。」


「そうだ。バルト君はもうお昼は食べたかね?」


「いえ、まだです。」


「では、食べていきなさい。」


「はい。ぜひ頂きます。」


ここで無下に断るのもなんなので、お昼はここで食べるとしよう。


アルベルト家のご飯は豪華だった。


平民だったら1度も食べることが無いだろうものばかり。


すべて美味しく、少し食べ過ぎてしまった。


「バルト様、この前は本当にありがとうございました。」


昼食を食べ終え、門までエリナに送ってもらっている。


護衛としてマルスも一緒だ。


「私からもあらためて礼を言わせてもらう。ありがとう。」


「いえいえ、俺にもメリットはありましたしね。」


「貴族になりたいというお話ですか?」


「そうです。まだなれるかは分かりませんが。」


「バルト様はお金目当てではないですよね。貴族になりたがる人は、大抵お金目当てなのですが、バルト様からはそんな感じはしません。いったいなんのために?」


「それはまだ秘密です。いずれ分かりますよ。」


「そうですか……それではその時を楽しみにしています。」


「はい。待っていてください。あ、ところでエリナは今何歳なのですか?」


「そういば言っていませんでしたね。私は14歳です。ちなみにマルスは18歳ですよ」


「それじゃ、俺の1つ下なんですね。」


「ということは、バルト様15歳なのですね。」


「はい。」


そんな話をしていると門に着いた。


「それじゃあ、また。」


「あの、バルト様!」


「なんですか?」


「いえ、なんでもありません。結果がわかりましたら、宿屋まで使いを出しますので、その時にまた会いましょう。」


「わかりました。それでは。」


エリナとマルスに見送られ、アルベルト家を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

処理中です...