VRMMOの世界で第2の人生を謳歌します。

ヤキメシ

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43.エリナの気持ち

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三日後、今日はバルト様が家に来る日だ。


お礼をするって約束でくるけど、対応はお父様がするからそんなに話せないかもしれない。


でも、顔を見れると思うだけで、こんなにも胸が高鳴っている。


そんなとき、メイドがノックをして入ってきた。


「お嬢様、バルト様がいらっしゃいました。広間にてお待ちです。」


「分かったわ。ありがとう。」


一礼して、メイドは部屋から出ていった。


私も行かないと。


逸る気持ち抑え部屋を後にした。


広間に行く途中で、お父様とマルスに会い、そのまま3人で広間に向かった。


部屋に入ると、バルト様が立ち上がった。


「君がバルト君か。娘を助けてくれてありがとう。」


お父様が、バルト様に握手を求めた、バルト様はそれに快く応じた。


「いえ、当然のことをしたまでです。」


「そうか……それでも礼を言わせてもらう。本当にありがとう。そこに座りなさい。」


バルト様と向かいの席に私とお父様が座り、後ろにマルスが立っている。


万が一の時のため、すぐに動けるようにしているのだ。


その後、お父様がバルト様に金貨を渡したけど、これでお礼が終わる訳ではない。


お金を渡すだけで礼をしたとは言えないからだ。


「そうか、それは良かった。他に何か願いはないかね?」


「あります。私を貴族にしていただきたい。」


その言葉に私はとても驚いた。


まさか、貴族になりたいと言うなんて……


だけど、私は直ぐに驚き以外の感情が出てきた。


もし、バルト様が貴族になれたら、バルト様とお付き合いできるかもしれないと。


でも、貴族になるのはとても難しい。


第一に魔法が使えないといけない。


バルト様がもし使えなければ貴族になることは絶対できない。


貴族以外の人間は基本魔法を使えない。


だから、多分バルト様も使えないだろう。


そう思っていたとき希望の光が見えた。


「魔法は使えます。」


バルト様がそう言ったのだ。


これで、もしかしたらバルト様は貴族になれるかもしれない。


「なに!?本当かね?」


「はい。」


「疑うわけではないが、一応見せてくれないか?」


「わかりました。」


バルト様は、座ったままの状態で手を机の上に出し、手のひらを上に向け雷の球体を生み出した。


「属性は雷か。」


「あと強化魔法も使えます。」


『え?』


私とお父様、マルスの声がリンクした。


まさか、2つの魔法を使えるなんて……さすがバルト様!


さっきまではわずかな希望だったけど、今は違う。


魔法の2つ持ちの方を王様が逃す訳がない。


だから、ほぼ確実にバルト様は貴族になれると思う。


私はその事実にとても舞い上がっていた。


話も終わり、お父様がバルト様を食事に誘い、一緒にご飯を食べた。


バルト様がいるだけで、いつもより食事がとても楽しかった。


「バルト様、この前は本当にありがとうございました。」


食事を終えて、門までバルト様を送っている。


護衛としてマルスも一緒だ。


「私からもあらためて礼を言わせてもらう。ありがとう。」


「いえいえ、俺にもメリットはありましたしね。」


「貴族になりたいというお話ですか?」


「そうです。まだなれるかは分かりませんが。」


そう言えばバルト様はどうして貴族になりたいのだろう。


もしかして、私と付き合うため?……なーんてそんな訳ないか。


「バルト様はお金目当てではないですよね。貴族になりたがる人は、大抵お金目当てなのですが、バルト様からはそんな感じはしません。いったいなんのために?」


「それはまだ秘密です。いずれ分かりますよ。」


秘密だなんて……もやもやしますよバルト様。


そんな訳ないと思いつつ、心の何処かで期待してしまっている私がいるの。


「そうですか……それではその時を楽しみにしています。」


「はい。待っていてください。あ、ところでエリナは今何歳なのですか?」


「そういば言っていませんでしたね。私は14歳です。ちなみにマルスは18歳ですよ」


「それじゃ、俺の1個下なんですね。」


「ということは、バルト様15歳なのですね。」


「はい。」


そんな話をしていると門に着いた。


「それじゃあ、また。」


バルト様と出会ってまだ、3日しかたっていないのにどうしようもないくらい好きになってしまっている。


次に会えるのは何時になるか分からないし、バルト様はカッコいい。


もしかしたら、狙っている女性も多いかもしれない‼️


もういっそのこと私から告白してしまおうか……


そんなことがふと頭に浮かんだ。


「あの、バルト様!」


「なんですか?」


でも、告白なんて出来る訳もなかった。


そんな勇気私にはなかった。


初めて人を好きになったのだ。


もっと慎重にいきたい。


「いえ、なんでもありません。結果がわかりましたら、宿屋まで使いを出しますので、その時にまた会いましょう。」


「わかりました。それでは。」





◇   ◇   ◇   ◇   ◇




お父様はバルト様のお願いを叶えるため王都に1ヶ月ほどいた。


貴族にするには、議員の承認も必要とする。


これは議員の反感を少なくするものであるが、形式的なものであり最終決定は王様がする。


それらの会議や移動を含め、1ヶ月ほどかかった。


「お父様!結果はどうだったのですか?」


「エリナか。了承を得られたよ。」


「本当ですか!?よかった。」


ほぼ確実になれるとは思っていたけど、やっぱりどこか不安だった。


だから、なれると分かって安心した。


「今から、使者を出しバルト君を呼ぶ。エリナも準備したまえ。」


「分かりましたわ。」


2時間後、バルト様がやって来た。


「お久しぶりです。エリナ。」


バルト様の顔を見ると自然と笑みがこぼれた。


「お父様が待っておられます。こちらへ。」


バルト様をこの前と同じ部屋に案内する。


「エリナは婚約者は決まっておられるのですか?」


その道中、急にバルト様が聞いてきた。


「どうしたんですか?急に。」


「いえ、貴族のご令嬢ならもう決まっているのか気になっただけですよ。」


「まだ、決まってはおりません。ですが、多分そろそろお父様がお決めになる頃だとは思っています。」


どうして、そんなことを聞いてきたのだろうか……


その疑問がずっと頭のなかに残っていた。


――部屋に入ると既にお父様が待ってた。


「バルト君、久しぶりだね。そこに座りたまえ。」

「はい。」



「手紙でも言った通り、結果が決まったので報告させてもらう。――バルト君は今日から貴族だ。」


「本当ですか!?」


バルト様はとても喜んでいた。


「ああ、貴族としての位は低いが立派な貴族だ。そして、領地も与えられた。」


「ここから北西に40km行った所に小さな農村がある。名をマラアイという村だ。その周辺3kmが君の領地となる。領主はその村に必ず居ないとならないという決まりはない。現に、小さな領地しか持たない貴族は大きな街で暮らし、たまに税を回収するために赴くぐらいだ。」


「そうなんですか。でも、私はそこに住もうと思います。」


「え!?本当ですか!?」


まさか、バルト様がそこに住むと言うなんて。


領地が与えられることは知っていたけど、小さな村だから絶対ここに残ると思っていた。


「はい。そうしようと思っています。」


「そうですか……あまり会えなくなるのね。」


最後の方は独り言だった。


バルト様が貴族になれば、頻繁に会えるようになると思っていた。


でも、会えなくなると思うと寂しかった。


その後のお父様とバルト様の会話はあまり耳に入ってこなかった。


そんな中、ある言葉だけが聞こえてきた。


「私をエリナさんの婚約者候補にしていただきたい!」
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