自己中心主義勇者 egoistic hero

バード・ポー

文字の大きさ
15 / 93

説教

しおりを挟む
メイを寝かせた後、カズマとドグマは城へと戻っていた。

城に着いたのは夜もかなりふけており、マリへの報告は明日にするようカズマはドグマに頼んだ。

その後僧侶達に記録させた男性500人分の身体測定、体力測定などのデータをパソコンに打ち込み、個々に必要な武器と防具を生産。

全員の装備が生産された頃には夜が明けて日が昇っていた。

ようやく全ての仕事を終えたカズマはベッドに横たわり、そのまま眠りに落ちた。



ー三時間後ー



ドンドンと部屋の扉を叩く音でカズマは目を覚ます。



カズマ:「うるせぇな・・・誰だコンチクショー!」

マナ:「勇者様!マナです。至急王室に来てください!王女様がお呼びです!」



マナのあわてぶりにカズマは嫌な予感がした。



『オッサンとちったか?・・・』



おそらくメイの一家の件で詰問されると思い、カズマは強化ゴムの鎧を装備した。



『あの女ドSだからな・・・用心するに越したことはない・・・」



急かすマナにかまわずにマイペースで支度するカズマ。

階段を登って王室へ着くと、仁王立ちしているマリとその前に正座しているドグマ、リー、メイの三人がいた。

ゆっくりと歩くカズマをマリはにらみつける。



マリ:「遅い!」



マリの全身から怒りのオーラが立ち込めている。



マリ:「そこに正座だ・・・」



マリの迫力に圧倒されてさすがにカズマも従わざるを得なかった。

ドグマの隣にチョコンと正座すると、ドグマに耳打ちする。



カズマ:「オッサン・・・何があった?」

ドグマ;「カズマ・・・」



二人の話を遮るようにマリが吠える。



マリ:「カズマ!!!貴様勝手な事ばかりするな!!!」

カズマ:「メイのスカウトの事か?」

マリ:「城の部屋、食事、荷馬車は貴様の私物ではない!!!」

カズマ;「そんなかたい事言わないでさ~・・・」

マリ:「黙れ!!!大体よその国から来た子供を城での暮らしを報酬にして、軍隊に入れるという神経がわからん!!!平和を望んで大陸から渡ってきた人間をよくも戦争に巻き込めるな!!!」



物凄い剣幕のマリにタジタジのカズマ。

横からメイが応援する。



メイ:「頑張れパーパ~。」

マリ:「子供は黙ってなさい!」



マリはメイをにらみ、たしなめる。

きょとんとマリを見つめるメイ。



メイ:「パーパ、この人パーパの奥さん?ならワタシのマーマ(お母さん)?」



メイの一言にマリが一瞬固まる。

プチン・・・という音がしてマリが切れる。



マリ:「誰がこんな奴の妻だ!!!!!!」



なおもマリはカズマをにらみ詰問する。



マリ:「勇者様はもう子供を授かったか・・・さすが勇者様・・・誰にもマネをできないことをなさる・・・おのれはその子供を使って私を自分の物になさるおつもりか?フフフ・・・そうはいかんぞ・・・」



マリの壊れた様子に4人は怯えている。



メイ:「パーパ、この人ちょとおかしいアル・・・」

カズマ:「メイ、俺はパーパじゃない・・・」

リー:「カズマさん話がちがうじゃない・・・」

ドグマ:「メイ、頼むからマリ様を怒らせないでくれ・・・」



4人がヒソヒソと小声で話している中マリは薄笑いを浮かべている。



マリ:「カズマ・・・貴様なぜ私を怒らせる?私が怒って貴様を殺すのを待っているのか?そうなんだな?よし、わかった。望み通り殺してやる。さあそこに直れ。真っ二つにしてくれる。」



そうつぶやくとマリは腰の刀を抜いた。

マリが頭上に剣を掲げる。

その時カズマは土下座をした。



カズマ:「頼む。この子にまともな教育をしてあげてぇ。俺が責任を持って教えるからこの城に住まわせてくれ。」



カズマの以外な反応にマリが正気を取り戻す。



カズマ:「この子は今まで人の愛に飢えて育ってきた。昨日ずっとこの子を見ていて感じたんだ。誰かが愛を教えなきゃこの子は独りぼっちだって。」

メイ:「パーパ・・・」



メイはカズマを見つめ涙ぐんでいる。



カズマ:「普通なら学校通わすんだが、この子の力は同い年の人間には危険だ。だから俺が軍隊で教育するんだ。戦争がいつ起きてもおかしくない今の時代だ。子供だろうと必ず巻き込まれちまう。だったら自分の身を守る能力が必要だ。俺ができる事はそれしか思いつかねぇんだ。」



カズマの熱弁にマリは刀を下げた。



カズマ:「だから頼む!お願いします!」



カズマが再び土下座する。

それを見て他の三人も土下座して同時に言う。

お願いしますと。

マリはフーとため息をついて降参した。



マリ:「わかった・・・城での暮らしを許可する。食事も与えよう。だが城での規律を守れ!カズマ貴様もだ!」



4人はまた声をそろえてありがとうございますと頭をさげた。

マリは頭に手を当てフラフラとよろめきながら自室へ戻る。



マリ:「フフフ・・・私がカズマの妻?フフフ・・・ありえない・・・違う・・・違うぞ・・・私は奴が嫌いだ・・・」



メイの一言がよっぽどショックだったのかマリはまだ混乱しているようだった。



メイ:「パーパ、マーマ大丈夫かな?」



メイの心配に三人は爆笑した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...