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補遺資料1『邪神ハスターの落第通知』


 ウィアードエイジの1906年。
 それはまだ、二人が「相棒(バディ)」として夜の闇を狩り、裏社会の解決屋として名を馳せるよりも、遥か以前の物語。
 灰色の霧がアーカムの夜を重く覆い隠す中、ミスカトニック大学の学生寮、その一室は淡いランプの光に照らされ、異界の吐息のように息苦しい熱気に満ちていた。

「はぁ……はぁ……っ」

 男は、焦りと疲弊に息を乱していた。
 これも彼の、邪神として送ってきた悠久の生において初めて……いや、二度目のことだった。
 彼は人の身のままベッドの上で身を寄せ、情熱的に、すがるように、一人の少女を抱いていた。
 ライラ=シュルズベリイと名付けられた、かつての少女。
 今は、カルト教団に生贄にされた恐怖と衝撃によって、怒り以外の全ての感情を失ったーー空っぽの「人形」。
 彼女の深緑の瞳は、虚空を映す鏡のように曇っている。
 ただ、心の奥底に刺さった怒りの残滓だけが、かすかな棘となってハスターを睨み返しているだけだ。

「はぁ……はぁ……」

 ハスターの指が、彼女の白い肌を優しく愛撫する。
 慎ましくも滑らかな曲線、温かな柔肉……契約の力で維持された互いの肉体は、生物学的には完璧に反応している。
 息が乱れ、唇が微かに開き、湿った吐息が漏れる。
 なのに、少女の魂は沈黙したままだ。
 味のない飴のように、甘く溶けることなく、ただ形だけを保っている。

「おいおい、ライラ……契約の夜の熱情は、どこへ消え失せた……?」

 ハスターの依り代――今はまだ「ハイタ」という名を名乗る前の、名もなき死体が発する声は、絶望に震えていた。
 数年後に見られるような、女好きの学生として軽薄に振る舞う日常の仮面は、まだそこにはない。
 あるのは、命尽きかけた旧支配者としての焦りだけ。
 シュルリ。
 抑えきれない焦燥が形を成し、背中から細い触手が伸びて彼女の腰に絡みついた。

「かはっ、あが……かっ」

 極細の繊維が神経を直接刺激し、彼女の体は本能的に快楽に拱く。
 波が肉体を駆け巡り、蜜のような湿りがシーツを染めていく。生理的な反応として、彼女の体は快楽を受け入れている。
 だが、その目は動かない。焦点が合わない。
 声は出ない。ただ苦しげに肺が萎縮し、空気を求めて喘いでいるだけだ。
 ――魂の震えが、ない。

「ふぅっ……ふっ、くそっ……これでも、駄目かっ……」

 ハスターは知っていた。
 この契約は、彼女の強烈な「怒り」や「情動」を燃料(リソース)にして、彼の存在をこの次元に繋ぎ止めるシステムだ。
 だが、今の彼女からは、その供給が細すぎる。
 霊子の不足が、徐々に彼の仮初の肉体を蝕み始めていた。
 指先が冷たく、視界がノイズ混じりにぼやける。異次元の本体から引き出される力が、細く途切れがちになる。
 消滅の予感が胸を締めつける。
 どうしようもない焦燥。
 方法は、あるにはある。
 彼女の脳をいじくり回し、都合よく改変してしまえばいい。
 快楽漬けにするなり、狂信者に仕立て上げるなりすれば、効率的にエネルギーを搾取できる。
 だが――『有史以前の、間違った神であった記憶』が、それを許さない。
 だから、ただ、ひたすら愛でるしかなかった。
 この空っぽの人形を、優しく、執拗に、壊れ物を扱うように。
 彼は彼女の首筋に唇を寄せ、甘いキスを落とした。
 舌が這い、肌の味を確かめるが、無味。
 彼女の体は震え、指が無意識に彼の背中に爪を立て、血を滲ませているのに、心は決して繋がらない。

 ハスターの心臓――死体の依代が無理やり脈打つポンプ――が、焦燥に速くなる。
 玉のような脂汗が吹き出し、ハスターの仮の肉体自体が、精神的な負荷と快楽の限界にビクビクと震え出した。
 もっと、もっと深く腰を打ち付ける。
 触手が内側に忍び込み、空虚な彼女を満たそうとする。
 官能の渦が巻き起こり、彼女の体は魚のように痙攣するのに、目は虚空を彷徨うだけ。
 ハスターは呻くように、祈るように囁いた。

「くぅ……っ、お前を……取り戻したいんだ……」

 彼は彼女の顔を両手で包み込んだ。

「この味のない蜜を、甘くしたいのに……っ!」

ドクン、ドクン、ドクン……ごぽっ!

 彼女の中に注がれる、意味のない白濁。
 それをただ無言のまま、人形のように受け入れる瞳を覗き込む。
 金色の髪に、深緑の瞳。
 それは彼がかつて、心の底から愛した――空虚そのものであった彼の心の中身を、愛で満たしてくれた『羊飼いの一族』の面影。
 そして今や、その最後の遺児。
 悲しみと、焦燥と、諦念と、どうしようもない寂しさが……人となった邪神の胸に容赦なく去来する。
 耐えがたいそれに項垂れ、ポタポタと、涙のような汗が彼女の頬に滴り落ちた。

「はぁっ……はぁ、どうすれば……どうすればお前を救えるっ!?」

 問いかけは闇に吸い込まれる。
 夜は深く、霧は濃く。
 彼の努力はまだ、果てしない渦の始まりに過ぎなかった。




 翌日、正午。
 ミスカトニック大学の屋上は、灰色の空の下で、蒸気の霧が薄く立ち込めていた。
 風に乗って運ばれてくる鉄の錆びた臭いと、どこか腐敗したような甘い香りが混じり合う。
 雲の隙間から太陽の光がぼんやりと差し込み、屋上のコンクリートを温かく撫でる中、奇妙な光景が広がっていた。
 学長ヌトス=カァンブルは、デッキチェアに寝そべり、露出の多い水着姿で優雅に日光浴を楽しんでいた……いや、正確には『食事』である。
 彼女の肌は、青白く滑らかで人間らしい魅力的な曲線を帯びつつも、どこかビニールのような、非現実的な光沢を放っていた。
 その本来の姿は、樽型の胴体にヒトデのような頭部を持つ『古き者(エルダーシング)』。
 だが彼女は独自のアプローチで『旧神』へと覚醒し、半分霊的な存在へと昇華した。さらに人類社会に溶け込むため、自らの肉体を改造・再構築した末に、今の人類基準における美貌を手に入れた、超常の宇宙存在である。
 彼女は片手に持った高カロリー栄養ジェルのチューブを、ストローでちゅーっとゆっくり吸い上げながら、全身で太陽光を受け止め、光合成によるエネルギー補充を行っていた。
 その姿は優雅で、しかしどこか人間離れした、官能的な怠惰さを湛えている。
 胸元が呼吸に合わせてわずかに膨らみ、陽光に照らされた肌が、微かに燐光を放つ。
 その傍らで。
 ハスターはパンツ一丁の姿で座禅を組み、同じく栄養ジェルと光合成に頼っていた。

「ぬぐぐ……」

 彼は死体の肉体の表面に無理やり葉緑素を生成し、光合成を模倣することで、枯渇した霊子を少しでも補充しようと努めていた。
 肌が不気味に緑がかって見えるのはそのせいだ。
 駆逐戦争以前からの旧知であるヌトスは、満身創痍で現れたハスターと、魂の抜けたライラをこの大学に迎え入れた。
 だが、ヌトスの表情は苛立ちを隠しきれず、彼女の唇が、甘く毒のある笑みを浮かべる。

「……ねえ。効率悪すぎない?」

 彼女はサングラス越しにハスターを見下ろした。

「いや、しなさいよ洗脳。得意でしょ、そういうの。あの子を狂信者に書き換えれば、こんな日向ぼっこしなくても済むじゃない」

「貴様、それでも旧神か?」

 ハスターの声は、屋上の風に乗り甘く響くが、その内容は真っ当な倫理的ツッコミだった。

「あいにく私は、旧神達の中でも堕ちかけの過保護者よ。2009年に高次元入りした新人のオージンちゃんの方がよっぽど上手くやってるわ」

 ヌトスは水着のストラップを指で弄びながら、嘲るように続ける。
 彼女の目は、深淵を覗くような冷徹な輝きを帯び、ハスターの脆い肉体を、優しく、しかし容赦なく値踏みしていた。
 ハスターは息を吐き、手元の栄養ジェルを一気に吸い上げた。
 霊子の渇きが体を震わせる。彼の影の中で、触手の本能が抑えきれずに微かに蠢いているのが見えた。
 常人であるならば、その異形の予感に恐怖し発狂するところだが、逆にヌトスの目には、その耐え忍ぶ姿が滑稽で、そして痛々しく映っていた。

「『羊飼いの一族』に、いつまで義理立てしているつもりなのよ」

 ヌトスが核心を突く。

「『深淵を見返すもの』にまんまと召喚されたのだって、その頃の間違いに対する義理につけ込まれたんでしょう?」

 彼女の言葉が、ハスターの胸を刺す。
 羊飼いの一族の記憶……愛した者たちの残滓が、心の奥で甘く、苦く疼く。
 あの義理が、彼を邪神に変えた。
 そして、そこから逃げ出した過去が、今の脆さを生んだ。
 ハスターの指が、死体の腹に残る修復中の巨大な傷跡に触れる。
 わずかに内部が紅く放電し、異次元の負傷が疼くように脈打つ。あの召喚の記憶が肌を粟立たせ、旧支配者の本体をも脅かす痛みが、今もジクジクと魂を焼いている。

「……それを続けられず逃げたから、俺は今、邪神と呼ばれているんだろう」

 ハスターは自嘲気味に呟いた。

「もう、あのような過ちは負いたくないのだ……よしっ!」

 彼は何かを吹っ切ったように、思い立って立ち上がった。
 屋上の端に立ち、耳をすませる。
 人外の集中力で、眼下のキャンパスを行き交う学生たちの言動を収集する。
 笑い声、ささやき、講義への不満、恋の駆け引き、軽薄な会話……。
 それらのデータを自身の中で高速で解析・再構築し、今の時代に最も溶け込みやすい、効率のいいペルソナ(仮面)を構築していく。
 肌が陽光に晒され、死体の肉体がわずかに熱を帯びる。日光浴の結果として、霊子の微かな回復を感じる。

「仕方ねえ、今の人類のやり方に合わせてみるさ!」

 クルリと振り返った彼の表情は、先ほどまでの苦悩する邪神のものではなかった。
 どこにでもいる、少しお調子者の、軽薄そうな人間の男。

「『ハイタ』だ。その名前で学生名簿に登録しといてくれぇ! 姓は好きにしてくれ、どうせ名乗らん!」

 自信満々に宣言する彼に、ヌトスは目を見開いた。

「ハイタ……?」

 その名に込められた意味を、彼女は知っていた。

「あんた、その名前(羊飼い)……まだ覚えてたの!?」

 ヌトスは絶句し、やがて深いため息をついた。

「…はぁっ、何処まで入れ込んでるのよ……。あんた私以上の人間馬鹿だわ。女々しすぎてきもいわよ、それ」

「言いすぎじゃねえ?」

 ハスター……いや、ハイタの勝手な申請に、ヌトスは呆れたように再度ため息をつく。
 水着の縁を指でなぞりながら、鋭い視線を投げかけた。

「それに……そのままだと、そのうち本気で死ぬわよ、あなた」

 重く鋭い彼女の言葉は、予言のように甘く、しかし本気の苛立ちと警告を孕んで、屋上の黄色い風に溶け込んだ。
 だが、風の王はそれを聞いてなお、どこ吹く風と言わんばかりにヌトスにヒラヒラと後ろ手を振った。
 彼はいそいそと服を着直すと、軽やかな足取りで屋上を後にした。
 新たな仮面と、変わらぬ執着を胸に抱いて。





 その日の午後。
 灰色の霧が窓ガラスを白く曇らせる中、ミスカトニック大学の図書館は、死後の世界のような静寂に包まれていた。
 禁断の知識が貯蔵された棚には、古い革の表紙が生き物のように息づいて並んでいる。
 ネクロノミコンの写本、エイボンの書、ハイパーボレアの遺産……それらが放つ甘い腐敗の香りとインクの匂いが、埃っぽい空気に混じり合い、読者の魂を深淵へと誘う。
 ここは、知識が貪れる場所。
 ライラ=シュルズベリイは、そんな深淵の中心で、ひたすらに本を貪っていた。
 彼女の白く細い指がページを滑る。
 深緑の瞳は、ステルス状態で周囲を警戒するビヤーキーの視覚とリンクしながら、同時に目の前の文字を飲み込むように、その内側の空虚へと吸い込んでいく。
 怒りの棘だけが、心の奥底で疼き、復讐の燃料となる。
 効率よく邪神と【深淵を見返すもの】を狩るため、学歴を上げる。知識を蓄える。
 飛び級に飛び級を重ね、「神童」と呼ばれる栄光など、彼女には味のしない飴玉のように何の意味もなかった。
 ランプの淡い光に照らされた白い肌。
 椅子に沈む慎ましい曲線は、精巧に作られた官能的な人形のようで、周囲の学生たちの視線を惹きつけてやまない。
 だが、その魂の震えは……まだない。
 そんなライラの傍らに、ハイタが忍び寄るように近づいた。
 彼の心は、今ここにはなかった。遥か彼方、ハイパーボレアの昔を夢想していた。
 
 ――かつて、人の姿(アバター)で土地の土壌を調べていた「彼女(ハスター)」。
 その柔らかく細い腕を、ゴツゴツした日焼けした手で掴み、屈託のない笑顔で優しく語りかけてきた『羊飼いの青年』。

(あぁ……あいつは、どうやってたっけ?)

 胸の奥で甘く、切なく呟く。
 あの時の温もり。あの時の、どうしようもないほど人間臭い、魂の交流。
 それを今、再現するのだ。
 死体の肉体が霊子の渇きで微かに震え、影の中で触手の本能が暴れだそうとするのを意志の力で抑え込む。
 彼は実践に移した。
 努めて軽薄な笑みを浮かべ、女好きの学生らしい、少し芝居じみた口調を作る。
 そっと。
 細く柔らかいライラの手に、自身のゴツゴツとした死体の手を重ねた。

「やぁ、ライラ? 今日も勉強かい?」

 ハイタの声は、図書館の静寂を甘く乱した。
 ライラの瞳が、一瞬だけ彼に向けられる。
 深緑の鏡のような目が、虚空を映しつつ、かすかな棘のような光を閃かせる。
 だが、彼女は何も言わずに、すぐに本に視線を戻した。
 ページをめくる指が止まることもない。文字が、彼女の肌のように滑らかに流れていく。
 完全な無視。

「……無視すんなよぉ。邪神だって、寂しさで死んじゃうんだぜ?」

 ハイタは、肩を落としてがっくりと項垂れた。
 死体の心臓が、焦燥に速く脈打つ。霊子が足りない。時間が足りない。
 それでも、諦めるわけにはいかない。
 その時。

「なら死ね、今すぐ」

 ライラの唇が、淡々と開いた。
 視線は本に向けたままだ。その言葉は、無感情の刃のように冷たく、鋭利だった。
 しかし、それはハイタの胸を甘く刺した。

(喋った……!)

 ああ、彼女の声が、ようやく響いた。
 味のない蜜に、わずかな毒と棘の甘さが加わった瞬間だった。
 拒絶であっても、そこには確かな「意志」があった。
 ハイタは肩を落としたポーズのまま、内心でガッツポーズをする。
 そして、めげずに語りかけ続けた。

「おいおい、そんなこと言わずにさ? ちょっと休憩しようぜ? 俺が面白い話してからさぁ……」

 軽薄な仮面の下で、人間らしい泥臭い努力を重ねる。
 かつての羊飼いがそうしてくれたように。
 図書館の澱んだ空気に、二人の間にわずかな渦が生じ始める。
 それは、やがて世界を巻き込むことになる魂の覚醒を予感させる、長く地道な努力の始まりだった。





 努力は、月単位で地道に続けられた。ある日の夕暮れ時、ミスカトニック大学構内のカフェ。
 そこは、蒸気の霧が砂糖の甘い香りを帯びて優しく立ち込め、鉄錆とコーヒーの苦い香りが混じり合う、奇妙で落ち着く空間だった。
 アークランプの淡い光がテーブルを照らしはじめる頃になっても、ライラは席を立たず、淡々と論文制作に没頭していた。
 細くしなやかな指が、真鍮製の階差機関式小型タイプライターのキーボードを軽快なリズムで叩く。
 カチャカチャ、チーン。
 歯車が回る音と共に、印字された論文の山がこんもりとテーブルの上に積み上がっていく。
 そんな中、ハイタの問いかけは昼夜を問わず、彼女の周りを優しく回る風のように続いていた。
 軽薄な仮面を被った男は、慣れた様子でライラの隣にそっと座った。

「さっきの講義、アーミティッジ教授にまたドヤされちまったよ」

 ハイタは肩をすくめてぼやく。

「あいつ、俺が邪神って知ってても臆さず怒ってくるからなぁ……。まるで親父だ、なぁ?」

 ハイタの声は、カフェの喧騒を甘く乱し、ライラの耳に忍び込む。
 だが、ライラは興味なさそうに無視を決め込み、瞳をタイプライターの印字に固定したまま動かさない。
 それでも、ハイタは諦めない。
 軽薄な笑みを浮かべつつ、パチンと指を鳴らして彼女の注意を引こうとする。

「コーヒー奢るからさ、一杯どう?」

 その言葉に。
 ライラの深緑の瞳が、一瞬だけ彼に向けられた。
 きゅっ、と、迷うように唇を固く結ぶが……やがてその口元が微かに緩み、言葉を紡いだ。

「……ブラック」

 短く。しかし、甘いカフェラテのような響きを含んだ声が漏れ出す。
 ハイタは、目を細めて揶揄うように微笑んだ。

「へぇ、大人だねぇ」

 そう言いながら立ち上がり、カウンターへ注文しに行く。その背中が、カフェの蒸気の霧に溶け込むのを、ライラは視界の端で追っていた。
 やがて、湯気を立てるカップを二つ持って、ハイタが戻ってきた。

「ほら、お待ちどう……」

 ライラの指がキーボードで止まり、彼が差し出すコーヒーを受け取ろうとした、その時。

「あっ」

 ハイタの手が震えた。
 霊子の枯渇による末端の麻痺で、カップを持つ指が緩んでしまい、漆黒の液体がバシャリと零れ落ちた。
 それは無情にも、完成したばかりの原稿の山へ。
 白い紙束の真ん中から、見る見るうちに黒い染みが広がっていく。

「あっちゃあ~、やっちまっ……」

 ハイタが青ざめて謝ろうとした瞬間。

ガスッ!!

「……っでぇ!!」

 テーブルの下で、ライラの編み上げブーツの踵が、ハイタの足の甲を思いっきり踏み抜いた。
 ハイタは悲鳴を上げ、カフェの客たちが驚いて振り返る。
 ライラは無言で立ち上がると、汚れた原稿用紙を乱雑に掴んでゴミ箱へ放り込んだ。
 そして新しい用紙をセットし、ドカッと椅子に座り直すと、またはじめから猛烈な勢いでタイプライターを叩き始めた。
 その背中からは、明確な「不満」と「怒り」のオーラが立ち上っている。
 だが、足を押さえて蹲るハイタの目は、痛みよりも喜びに輝いていた。

(反応した……! 怒った!)

 無関心ではない。明確な感情のリアクション。
 それは、空っぽだった人形に、魂の灯がともりつつある証左。

「すんませんでしたねっっと」

 ハイタは痛む足を引きずりながら立ち上がり、懲りずにまたその隣に座った。
 ライラは無視してキーを叩き続ける。
 しかし、その眉間には深い皺が刻まれ、今の自らの衝動的な行動――「怒り」に任せて暴力を振るった自分自身に、困惑し、疑問を持つように、僅かにしかめられていた。




 数ヶ月後。
 ミスカトニック大学の学生パーティー。
 会場となった講堂は、ウィアードエイジの灰色の夜空の下、拡声器から響く騒がしい音楽と、地下で稼働する蒸気機関の重低音が甘く混じり合っていた。
 フリルのドレスやタキシードが揺れ、蒸気の霧が香水の匂いを拡散させる。それはまるで、異界の宴のような煌びやかで混沌とした渦巻きだった。
 ライラは、その喧騒の壁際に一人、突っ立っていた。
 今期の学生として異例の若さで修士課程を超え、助教授の座に上り詰めた「麒麟児」として、スピーチをして欲しいと呼ばれたのだ。
 身に纏っているのは、ハイタが用意した可愛らしいドレスだ。彼女の透き通るような白い肌が、漆黒の生地に優しく包まれ、慎ましい曲線が微かに強調されている。
 周囲の目を惹くその姿は、まさに深窓の令嬢か、精巧なビスクドールのよう。
 だが、その深緑の瞳は虚空を映す鏡のように曇り、魂は凍りついたように静止していた。
 パーティーの喧騒が、彼女の周りを優しく、しかし無意味に回っていく。
 そんなライラの前を、フリフリのドレスを着たレイ=ハヤマが通り過ぎようとして、足を止めた。
 金に染めた長髪が揺れる。ライラに目を止めた瞬間、道端に珍しい毒草でも見つけたかのような気軽さで、彼は言った。

「あ、壁の花だ」

 相変わらずの、毒のある意見。
 『壁の花』。踊る相手のいないひとりぼっちをそう呼ぶ事を、知識として知っていたライラは、興味なさげにそっぽを向いた。
 ハヤマは目を細め、悪戯っぽく手を差し出す。

「踊る?」

 細い指がライラの白い肌に近づく。
 指先が触れそうになった、その瞬間。

ビクリ。

 ハヤマは何かを感じ取り、感電したように即座に手を引いた。
 ライラもまた、何か生理的な拒絶反応を感じ取ったのか、無意識に一歩後ろに引いていた。

「……うん、それが正解だね」

 ハヤマは自分の手をひらひらと振り、甘く嘲るように呟く。

「『味が混ざる』と困るし」

 それは、同じ「生贄体質」を持つ者同士だけが理解できる感覚。
 別々のシェフ(邪神)のために調理された極上の料理が隣接すると、互いのソースの味が混ざり合い、価値を損なってしまうような、本能的な忌避感。
 ハヤマは興味を失ったように背を向け、去っていく。
 ドレスが揺れる後ろ姿がパーティーの霧に溶け込み、ライラの肌を微かに粟立たせた。
 そんな中。
 ハイタが遅れて現れた。
 彼は手の中でくしゃくしゃになった紙切れ――「落第通知」と書かれたそれ――を、誰にも見られないようにポケットに乱暴にねじ込んだ。
 死体の肉体が、霊子の渇きで微かに震えている。それを意志の力で抑え込み、彼は軽薄な笑みを作ってライラに近づいた。

「よぉ、お姫様。一曲どうだい?」

 女好きの仮面を被った、キザな誘い文句。
 ハイタの紅色の瞳が、彼女のドレスの曲線を優しく、品定めするように撫でる。
 ライラはフイと横を向き、深緑の瞳を逸らした。
 だが、ハイタは構わず彼女の手を取った。

「……」

 その手は握力が弱く、小刻みに震えていた。
 霊子の不足が、末端の神経を冷たく疼かせているのだ。このままでは、彼はパーティーの片隅で餓死しかねない。
 その「無理」を、ライラは察してしまった。
 彼女は目を細め、振り払うこともせず、自然と彼の動きに歩調を合わせた。
 白い肌がハイタの冷たい指に絡みつくように、甘い緊張が生まれる。
 踊りが始まろうとした時、ハイタはニヤリと笑った。

「邪神のステップを教えてやるよっ」

パチン!

 指を鳴らす。
 その音をトリガーに、霊子通信経由でパーティーの蒸気式音響システムをハッキングする。
 優雅だが退屈だったワルツが、突如としてノイズ混じりの軽快でアップテンポなリズムへと変貌した。

「「!?」」

 会場がどよめく中、拡声器から流れるメロディーが、宴の空気を熱く塗り替える。
 ハイタが踊り出した。
 足元がおぼつかない。
 ライラはそんな彼が転ばないように、、逆に彼を支えるように動きを合わせて一緒に踊る。
 ドレスの裾が揺れ、彼女の体がハイタの脆い肉体に寄り添う。
 密着した体温。
 その瞬間、ライラの凍てついていた魂の棘が、微かに甘く溶け始めるのをハイタは感じた。
 それは、飢えた邪神にとって、何よりの御馳走だった。
 遠くから、ハヤマはそれを見ていた。
 毒のある笑みを浮かべ続けながら。羨ましそうに、見下しながら。

「馬鹿だね。腹空かせながら、真っ白な皿を抱えて踊るなんてさ」

 そう言って嘲笑う彼の唇が、甘く、寂しく歪む。
 それでも、二人の姿は、ハヤマには眩しく見えたのかもしれない。
 彼が愛したかった、そして喰われたかった邪神は。
 今契約しているイオドではなく……いまはもう喪われ、この宇宙のどこにも存在しないのだから。





 淡いランプの光が宿舎のベッドを照らし、乱れたシーツの皺が二人の影を優しく、そして哀しく歪めていた。
 ハイタは、ライラを抱いていた。
 彼女の透き通るような白い肌が、彼の死体の肉体に絡みつく。温かな柔肉が本能的に反応し、息が乱れ、蜜のような湿りがシーツを染めていく。
 肉体は、これ以上ないほどに快楽に浸っている。
 ……なのに、魂は沈黙したままだ。
 味のない飴のように、彼女の魂は固まったまま。空虚で、無味乾燥。
 どれだけ舐めても、どれだけ愛しても、甘い感情の雫は一滴も零れ落ちてこない。
 シュルリ。
 ハイタの背中から細く伸びた触手が、彼女の腰に巻きつき、内側を満たす官能の渦を巻き起こす。
 ライラの体は弓なりに震え、爪が彼の背に深く立てられる。
 だが、その深緑の瞳は焦点が合わず、ただ虚空を彷徨うだけ。心は繋がらない。
 ハイタの胸が、霊子の渇きと、どうしようもない焦燥で熱く疼く。

「はぁ……ふっ……んっ、もうやめよう、ハスター……んぅ」

 唐突に、ライラの声が熱に浮かされた部屋を切り裂いた。
 拒絶の言葉。
 ハイタは息を切らせたまま動きを止める。
 触手が名残惜しそうに彼女の肌を優しく撫でながらも、主の落胆を反映してシュルシュルと縮んでいく。

「あぁ?」

 喘ぎ交じりの声で聞き返す。
 死体の心臓が、不安と動揺で速く脈打つ。
 ハイタの指が、彼女の滑らかな曲線から離れた。
 ライラはベッドから立ち上がった。
 ランプの光に照らされた白い肌が輝き、慎ましい胸の膨らみが呼吸に合わせて微かに揺れる。
 彼女はハイタを見下ろし、淡々と続けた。

「生贄は他所から見繕え。私はもう、何も感じない。いや、心が動かない」

 その言葉には、底知れぬ諦観が混じっていた。
 金色の髪が肩を滑り落ち、深緑の瞳が棘のように鋭く輝いているのに、魂の奥底では甘い絶望が渦巻いている。

「きっと、感情も心も……家族と共に全部お前の腹の中に置いてきたんだ」

 彼女は自分の胸に手を当てた。そこには空洞しかないと言わんばかりに。

「私は復讐ができればそれでいい。私もお前の復讐の道具だ。それで良いじゃないか」

「……っ」

 ハイタは、泣きそうな顔でベッドから身を乗り出し、ライラの肩を掴んだ。
 死体の指が震え、彼女の白い肌に食い込む。

「そうじゃねえ、そうじゃないんだよ……!」

 彼は俯き、体を震わせて叫んだ。

「俺は……『ハイタ』として、お前を救いたいんだよ!」

 その発言に、ライラの中の空虚が一瞬、疑問に包まれた。

(救いたい……?)

 目の前の邪神は、本当にあの傲慢なハスターなのか?
 深淵の闇を纏い、星々を蹂躙する存在が、こんな人間らしい脆さを、惨めさを露わにするなんて。
 だが。
 その疑問は、即座に邪神そのものへの憎しみによって塗りつぶされた。

——これは欺瞞だ。

 人の心を弄ぶための、邪神の気まぐれなエミュレートに過ぎない。
 情にほだされれば、また全てを奪われる。
 彼女の心が、冷徹に断ずる。
 だとすればこれは、拒絶する他ない。

「理解できない。冗談は沢山だ」

 そう吐き捨てると、ライラは反対を向き、床に落ちていたシーツを拾って頭から被った。
 白い肌が布に包まれ、慎ましい曲線が隠される。
 それは、ハイタに対する完全なる拒絶の壁。
 部屋の空気が、甘い緊張から、重く冷たい沈黙へと沈んでいく。

「……冗談、か」

 ハイタはそう呟き、力が抜けたようにベッドに座り込んだ。
 心が、深く傷ついていた。
 神話的生物にあるまじき痛みが、胸を刺す。
 死体の瞳が曇る。
 背中から、抑えきれない触手が微かに伸び、掴むもののない虚空を求めて震えていた。
 ハイタは声もなく、ただ……溢れそうになる涙を、必死に堪えていた。




 ある日の夕方。
 アーカムの街は、大雨の渦に飲み込まれていた。

 鉛色の空から降り注ぐ冷たい水滴が、街中に張り巡らされた蒸気管の熱い排気と混じり合い、分厚い霧となって視界を覆う。
 蒸気機関の駆動音、雨粒が鉄骨を叩く音、頭上を走るモノレールの軋むような走行音。それらが渾然一体となって轟き、街全体が巨大な機械の腹の中にいるような圧迫感を与えていた。

 拡声器からは、ノイズ混じりのプロパガンダ放送がぼやけて響いている。
 そんな機械的な冷たさと熱い蒸気の狭間で、二人の影が揺らめいていた。

 大学からの帰り道。
 ハイタは鮮やかな黄色の傘を差し出し、相変わらずの優しい笑みを浮かべた。

「傘、要るかい?」

 その声は雨の音に甘く溶け込み、ライラの冷え切った心を撫でるような響きを持っていた。

 だが、ライラはポケットから無造作に透明なビニールの折り畳み傘を取り出し、バサリと開いた。

「要らない」

 拒絶。
 魂の壁が、雨のように冷たく、分厚く張り巡らされている。

 二人は並んで歩き出した。
 雨のアスファルトが足元を濡らし、マンホールからは白い蒸気が熱く息を吐き出す。
 無言の帰路。
 だが、ライラの心は、油切れの機械の歯車のように軋み始めていた。

 宿舎への道を辿る中、雨の幕が二人の影を優しく、曖昧に歪める。
 ふと、ライラの唇が微かに開いた。

「……ごめん」

 短く。しかし魂の奥底から漏れ出たような言葉が、街の鉄の臭いを甘く染める。

 ハイタは目を見開き、すぐにいつもの軽薄で優しい笑顔に戻った。

「良いよ。フラれるのも慣れてきた」

 冗談混じりに返す声が、雨の音に絡みつく。
 傘の柄を握りしめる死体の指は白く変色し、霊子の不足が体を冷たく震わせているのに、彼の胸の奥だけは、人間らしい温かさで痛いほど疼いていた。

「お前は邪神だ。私は……どうしても信用できない」
「そりゃそうだ。邪神なんて素直に信じてりゃ、逆に不安になるわな」

 即答するハイタに、ライラは切なげに見返した。
 深緑の瞳が雨に濡れて輝く。
 街の蒸気機関が低くうなり、熱い息を吐き出すように、彼女の中で抑圧されていた感情が熱く膨張し、限界を超えようとしていた。

バシャッ!!

 突然、ライラは持っていた折り畳み傘を投げ捨てた。
 傘は水たまりに落ち、泥水を跳ね上げて転がる。

 彼女は雨に打たれるのも構わず、ハイタの胸ぐらに掴みかかった。

「じゃあ! なんで私を迷わせる!」

 白い肌が雨に濡れ、コートの曲線が彼の肉体に絡みつくように密着する。
 甘い緊張。
 魂にはまだ分厚い壁がある。しかし、その内側に溜まりに溜まった感情の濁流が、ひび割れから溢れ出しかけていた。

キィィィィィィ……!!

 頭上のモノレールが急カーブでレールを擦り、悲鳴のような金属音を上げる。
 それが二人の心理を映すように、軋みと熱を増幅させる。

「お前何なんだよ! 何度も何度も、私の決意を阻害する! 頼むから私に……私にお前を憎ませてよ! 恨ませてよ! 殺意を抱かせてよぉっ!!」

 絶叫のような叫びが、雨の渦に浴びせられる。
 ライラの美しい金髪が濡れて頬に張りつき、雨と涙でぐしゃぐちゃになった顔で、慎ましい胸を震わせて訴える。
 憎しみと疑問の狭間。復讐の炎が感情の嵐に揺らぎ、消えそうになる苦痛に、ライラは苛まれていた。

 ハイタは、何も言わずに片手を離した。
 涙のように雨に濡れたライラの顔を、大きな手でグイッと乱暴に、しかし温かく拭う。
 そして、持っていた黄色い傘を、彼女の上に差し出した。

「俺の事はな、恨んで良いんだ。それが俺の役割だ。それで良いんだよ」

 雨が遮られる。
 傘の下、ライラは、はじめて真正面からハイタの「素顔」の笑顔を見た気がした。
 邪神でも、軽薄な学生でもない。
 ただ、悲しいほどに優しい、一人の男の顔。

 息をのむ。
 復讐の炎が揺らぐ。揺らぎ、形を変えようとする。

「俺には俺の目的がある。それはな、ライラ……俺は、お前を……」

 言いかけた、その時だった。

——プツン。

 ついに、その時(限界)が来た。

ガクンッ。

 ハイタの膝から力が抜け、崩れ落ちた。
 受け身も取れず、雨の溜まった冷たいアスファルトの上に倒れ込む。

バシャァ……。

 街の蒸気管がシュウシュウと熱く息を吐き出すのとは対照的に、彼の死体の肉体は急速に熱を失い、冷たく沈んでいく。
 霊子の渇きが、機械の故障のように唐突に機能を停止させたのだ。
 影の中で、触手の本能が微かにピクピクと蠢くが、本体からの反応はない。

「ハス……ター? 何の冗談だ?」

 ライラは呆然と問いかけた。
 黄色い傘が手から滑り落ち、転がる。

 返事はない。

「ハスター! おい、しっかりしろ! 冗談にならないよ、おい! ハスター!」

 彼女は降り頻る雨の中、泥水にまみれて倒れたハイタに駆け寄り、抱き起こした。
 白い肌が容赦ない雨に打たれ、深緑の瞳が恐怖と疑問で激しく揺らめく。

 叫ぶ声が、雨音の中に虚しく響く。
 腕の中、ハイタの呼吸は雨の中でどんどん弱く、浅くなっていく。

 魂の壁が、雨の渦のように甘く溶け始めると同時に、最悪の喪失の予感が、残酷に二人を包み込んでいた。





 ミスカトニック大学、地下深部。
 『霊子放射診察室』。
 そこは、黒い合金で重厚に守られ、未知の霊子工学を織り交ぜた蒸気機関の低いうなりが重く響く、異界の聖域のような場所だった。
 遠くで雨の余韻が断続したリズムを奏で、励起した霊視(オーラ)の眩い燐光が、薄暗い室内で明滅を繰り返している。

ガタゴトッ!

 重い扉が開かれ、意識のないハイタがストレッチャーに乗せられて担ぎ込まれる。
 ライラは泥と雨に濡れ、涙ながらに通報し、ここまで付き添ってきたのだ。
 そこに、学長ヌトス=カァンブルが現れた。
 彼女は俯くライラの手を乱暴に引いて、隔離された解析装置の部屋へと大股で向かう。

「学長! 室内は高濃度の霊気汚染がありますので防護服を……!」

「人間以外には要らん!」

 研究者たちが慌てて霊的放射防護装備を差し出すが、ヌトスは一喝して無視し、そのまま入室した。
 事態はそれほどまでに逼迫していた。
 街の蒸気管のように熱く息を吐き出す生命維持装置が、部屋の空気を重く、苦しく孕んでいる。
 ベッドに横たえられたハイタの顔を見るなり、ヌトスは舌打ちをした。
 予想通り、最悪の状況だ。霊子の枯渇による、存在崩壊の寸前。

「シュルズベリイ、脱げ!」

 ヌトスは怒り混じりの声で叫んだ。

「贄だろう! せめて皮膚接触で、少しでも魂を分け与えるんだ! 早く!」

「っ……!」

ビクッ!

 と震えたライラは、言われるがまま、焦りを隠すことなく濡れたシャツのボタンを引きちぎるように外し、ブラのホックを外した。
 バサリと服が落ちる。
 白い肌がランプの淡い燐光に露わになり、慎ましい胸の膨らみが荒い呼吸と体の震えに合わせて揺らぐ。雨に濡れて冷えた身体が、部屋の光に撫でられるように輝き、羞恥と興奮、そして焦燥で朱を帯びる。
 ヌトスは手早くハイタの服も脱がせ、ベッドに横たわる死体の肉体を剥き出しにした。
 脆い肌は氷のように冷たく、彼の背中や脇腹からは、制御を失った細い触手が溢れ出し、空気を求めて弱々しく震えていた。

「行け」

 促され、ライラが恐る恐るベッドに登る。
 二人の体がベッドの上で密着する。
 ライラの温かな柔肉が、ハイタの冷たい死体に絡みつく。皮膚が触れ合う面積を増やすように抱きしめる。
 すると、あふれ出た触手が、水を与えられた乾き掛けのミミズのようにライラの肌を這い、吸い付いた。

ちゅっ……にち、じゅるっ

「あっ……」

 ライラが、久しぶりに上擦った声をあげた。
 魂が吸い出される感覚。だが、それは以前のような一方的な搾取ではなく、命を分け与える共有の儀式。

ピピピピ……。

 警告音を上げてガタガタと大きく振れていた霊子計器が、落ち着くように振れをおさめていく。
 部屋の緊迫した空気が、若干の落ち着きを見せた。

「ふぅ……」

 ひとまず最悪の峠は越えたと判断し、ヌトスは息を吐く。
 そして、その声に隠しきれない怒りを混じえて、裸の背中を向けるライラに問うた。

「何故、これ程になるまで放置した?」

「……っ! っ、う……」

 びくりと震えたライラの唇が震え、瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちる。
 ハイタの冷たい胸に顔を埋め、慟哭する。

「私、は……私は、彼が信用できなくて……。それでっ、彼の優しさをっ……冗談だって、決めつけてぇ……!」

 金色の髪が肩を滑り、深緑の瞳が絶望と後悔の狭間で大きく揺れていた。
 拒絶し続けた結果がこれだ。
 彼が本当に消えそうになって初めて、失うことの恐怖を知った。

「なんて、不器用な……」

 呆れて頭を抱えるヌトスが呟いた。

「ライラ教授……お前はなぁ! あいつにとっての……」

「言うな、ヌトス……」

 ヌトスが言いかけた言葉を、弱々しい声が遮った。

「俺が、言う」

 それは、苦しそうに薄く瞳を開けたハイタの声だった。
 死体の瞳はまだ白濁して曇り、触手が抑えきれずに微かに伸びて虚空を掴むように震えている。

「これは自業自得の結果だ……。言うことを言ったら、俺はここで大人しく消えるさ……」

「ッ!?」

 その言葉に、ヌトスの感情が爆発した。
 彼女の胸元が激しく上下し、陽光のような光沢を放つ肌が怒りで熱く震えた。

「バカを言うんじゃない! 仮にも旧支配者が……そんなことで消えて良いなら、このマルチバースに邪神なんて存在しないんだよ! お前の言動は、我々神々全体への冒涜だぞ!?」

「それが贖罪だ……」

 ハイタは力なく笑った。

「俺の、ライラの一族への……。良き『羊飼い』の守護神として、間違った俺の、償いなんだよ……」

 部屋の蒸気が甘く立ち込める。
 燐光の淡い輝きが、二人の密着した肌を優しく、幻想的に照らす。
 その光の中で、ライラはついに……ハイタの心の奥底、決して触れさせまいとしていた「核心」に触れた。
 ハイタは腕で顔を隠し、死体の肉体が霊子の渇きで微かに震えながら、声を絞り出す。
 それは、黄衣の王の、遥かなる罪の懺悔だった。


 背中から伸びた触手が、ライラの白い肌を弱々しく這い、温かな柔肉にすがるように絡みつく。
 官能の余韻がライラの震えとなって伝播し、部屋の空気を熱く孕ませていく。

「ライラ……俺はな、遥かな昔——ハイパーボレアの大陸で、神々同士の支配域をかけて版図を広げてきた」

 その震える声が、ライラの胸を甘く、痛く刺す。
 至近距離で見つめる深緑の瞳が、ハイタの瞳の奥にある、深淵よりも深い後悔を映し出す。

「だがその一方で、守護神として、守ってきた『ある一族』が居たんだ……」

 ハイタは遠い日を懐かしむように、そして苦しげに語る。

「そいつらにとっては、俺は『良き羊飼いの守護神』だっただろうさ。でも、俺は邪神に変わりなかった……。やがて『駆逐戦争』が始まった。邪神は新しき神である魔法使いに討ち取られて行き、人々は正しき神の旗の下決起した」

 彼は言葉を詰まらせ、嗚咽を堪えるように息を吸った。

「俺は……俺を庇った一族の皆をおいて、魔法使いから逃げたんだよ……っ」

 告白は続く。

「侵略した人々も、守ってきた人々も、愛した人すら……全てを裏切って! そうしなければ、あの一族は守れなかった。ただ俺が消えただけなら、彼らは『邪神の信徒』として狩られるだけだ。だから俺は……俺自身の化身を『俺に身を捧げた生贄』と偽って、皆の前でむごたらしく食い散らかし、逃げたんだ」

 自作自演の虐殺劇。
 それは、愛する者たちを「被害者」という立場に置くことで、新時代の粛清から守るための、苦肉の策だった。
 ハイタの悲痛な告白が、ライラの耳に刻まれる。
 魂の奥底で、これまで味のしなかった蜜が、熱く、ドロドロに熟されていくのを感じる。

「だから……今回の彼らの呼び声に答えたんだ。今度こそ彼らを助けられると思って……。だが、俺が飲み込んでいたのが、それが彼らだと気づくのがもう少し早ければ……俺は! ……あぁ、俺はぁっ!!」

 ハイタの言葉が、涙まじりの喘ぎのように部屋に響く。
 これは孤独な王、邪神なのか、人間なのか、仮面の判別がつかない、純粋な懺悔に他ならない。
 死体の指が震え、触手がライラの腰に巻きつき微かに刺激するのに、脆い肉体が限界を訴え、崩壊のノイズが走る。
 ヌトスは目を細め、青白く滑らかな肌を微かに震わせながら、口を挟まずに傍らで見守っている。
 だが。
 ハイタの告白を遮るように、ライラはハイタの唇を奪った。

「……!」

「んんっ、ちゅる……はっ、あ…じゅ、ぷっ」

 甘い、甘い蜜のような唾液を交換するように、舌を絡ませ、ライラはハイタの頭を抱きしめた。
 白い肌が彼の死体に押しつけられ、慎ましい胸の膨らみが彼に密着し、快楽の震えが体を駆け巡る。
 ライラの唇が震え、涙が頰を滑り落ちる。
 震える唇が、舌が、ぬちゅりとハイタの口から銀色の糸を引いて離れる。
 上気した顔に流れる涙を乱暴に拭いながら、ライラは怒りと、何か強烈な感情をない混ぜにして叫んだ。

「はふ……なら、その罪を抱えて生きなさいよ……!」

 彼女はハイタの胸ぐらを掴む。

「勝手にきて、勝手に私たちの一族を巻き込んで、勝手に後悔して消えるんじゃない! だからあんた達は邪悪な神なのよ! ……っ、んんっ!」

 その言葉が、部屋の蒸気に溶け込み、ハイタの胸を甘く刺す。
 触手がライラの肌を優しく撫で、震える肌から蜜のような湿りがシーツを染める中……ライラは己の内に溢れる感情が、完全に熟しきった事を自覚する。

(あぁ、今こそ私は……熟しきった)

 怒りでもない。悲しみでもない。
 それら全てを飲み込んだ、巨大な情動。
 ライラは、生贄たる己に刻まれた魂の欲求と、目の前の哀れな邪神への復讐を兼ねて。
 先の激昂した感情の表出からは信じられないほど妖艶に、誘惑するように、囁いた。

「食べてよぉ……ハイタ……」

「……っ」

 その言葉は甘い毒のように、飢えた邪神であるハイタの耳に染み込んだ。
 ビクリと触手が反応し、力強くライラの身体にしがみつく。
 ライラの身体もまた、その強い渇望に呼応して弓なりに仰け反った。

「んはっ! ……ぁ、ハスター、ハイタ……どっちだって良い、私を……食べてぇ?」

 浮かされたように懇願する彼女の声が、部屋の空気を熱く孕ませる。
 白い肌がハイタの死体に押しつけられ、慎ましい胸の膨らみが微かに震える……。
 魂の奥底で蜜が熱く熟れ、溢れ出してくる触手に包まれるように、ライラの体が優しく這わせられる。
 金色の髪が肩を滑り、深緑の瞳が陶酔の棘で輝き、温かな柔肉が触手に刺激され、魂の底から捕食を望む獣の喘ぎが漏れ始める。

「まずい……!」

 ヌトスが目を細め、慌ててライラの肩を掴み制止の声を上げた。

「しっかりしろ! 正気に戻れ、飢えた邪神に熟れた生贄の身を差し出したら……どうなるか分かっているだろう!」

 その言葉が部屋の蒸気に溶け込み、ライラの耳に甘く刺さる。
 しかし、彼女から返ってきたのは、上擦った笑い声だった。

「うっ、ふはぁ……っ」

 ライラは左手をヌトスに突き出した。
 瞬間、触手の濁流が迸る。

ドゴン!!

 一瞬、光でできたヒエログリフのようなシールドを展開したヌトスだったが、触手の奔流はシールドごと彼女を突き、隔壁の外へと弾き飛ばした。
 それは死にかけた邪神の出せる力ではない。ライラの魂を燃料に、ハスターの力が暴走を始めている。

「がはっ、お前……もうそこまでハスターと『繋がって』……っ!」

 肺を押しつぶされたヌトスが苦しげに咳き込む。
 彼女の驚きの声が隔壁の外からぼやけて響く中、触手の一本が非常レバーを下ろした。

ガゴンッ!!

 頑強な隔壁が降り、外界との接続が遮断される。
 密室と化した診療室の中で、ライラは陶酔した笑顔のまま、触手の中心に残るハイタの顔に唇を重ねた。

「んっ、ちゅ……好き、好きだよ……憎いけど、好き……私が、あなたの蜂蜜酒になるから……あっ」

 ハイタの目が、ゆっくりと開く。
 その顔が、悍ましい三つの眼と、獣のような牙だらけの口へと変貌していく。
 名状し難き邪悪の皇太子の姿が、咆哮を上げながら、触手に包まれていくライラを睨めおろす。
 ライラは両手を広げ、甘えるように囁いた。

「来てっ……私を、食べて!」

 その懇願が、部屋の空気を甘く熱く染める。
 白い肌が力を込めた牙に噛みつかれる瞬間、温かな柔肉が震え、蜜のような湿りが溢れ出し、体が仰け反る。

「っ、あ、あああぁぁっ!!」

 絶頂の声が、隔壁の外まで響き渡る。
 魂の壁が熱く芳醇な香りを伴って溶け出し、快楽の波が体を駆け巡る。

「ぁあ゛っ……はぁ、あっ」

 血は、不思議と流れなかった。
 じゅる、ごきゅ、と黒い触手の塊であるハスターの本体が脈打ちながら、ライラの胸のうちから溢れ出す黄金色の霊子の蜜を嚥下していく。
 その度に突き刺さる牙が、魂を直接、熱い快楽で刺激する。

「ぁう゛っ、はっ……ぁはっ」

 喘ぎ声が部屋に甘く響き、嚥下の度にびくり、びくりとライラの体が絶頂の快楽に震える。
 白い肌が熱く上気して金色の髪が肩を滑り落ちる。温かな柔肉が牙の蠢きに震え、慎ましい胸の膨らみが微かに波打ち、霊子の蜜が身体中を伝ってベッドの上から溢れ出し、部屋の床を甘く染めていく。

ぶぢゅ、ごぼっ。

 押しつぶされる体からさらに蜜が溢れ出す。

「あ゛っ……!あはっ、んく、あ……はぁぁっ!」

 ライラはハスターの本体を愛おしそうに抱きしめ、細い指で優しく撫で、身を委ねる。
 深緑の瞳が陶酔に澱み、いつまでも啜らせたいという欲求が下腹部から脳髄を刺激して止まらない。

『俺も……』

 黒い触手の塊から、愛おしい声が聞こえた。
 その度に噛みついた牙が蠢き、快楽と共にくすぐったさが体を駆け巡る。
 ハイタの声がライラの肌を優しく撫でるように響き、魂の奥底で熱く熟れた蜜がさらに溢れ出し、温かな柔肉が牙に絡みつく。

『俺も、お前を愛したい……愛して、償って、お前を助けたい……もっと、食べていたい』

「ぁは、ぁっ……死が、二人を別つまでっ……私も、貴方を愛してる……貴方を殺すその時まで、ずっと!」

 触手が、『二人』を包んでいく……。
 それは再誕の儀式のように部屋全体を脈動させながら、熱い交合の儀式として、永遠とも思える交わりを行う。
 じゅる、ぶぢゅ、と蜜を嚥下する音が響き、牙の刺激が魂を熱く震わせ、ライラの体が仰け反り、喘ぎ声が甘く部屋を満たして……。
 甘い蜂蜜酒の直呑みは、朝まで続いた。



 翌朝。
 ミスカトニック大学の霊子放射診察室には、窓から明るい朝日の光が差し込んでいた。
 排出される蒸気の余韻が甘く立ち込める中、昨夜繰り広げられた濃密な儀式の熱気が、まだ部屋の空気を優しく震わせている。

「ふあぁ~ぃ! スッキリした!」

 ハイタは元気に復活していた。
 死体の肉体が霊子の蜜で満たされ、生き生きとした血色を取り戻している。
 彼は伸びをしながら、軽やかにベッドから起き上がった。
 白いシーツには、蜜のような湿りの跡が点々と残り、昨夜の永遠のような交わりの激しさを甘く匂わせている。
 その横で、ライラはまだベッドの隅に丸まっていた。
 白い肌はまだ熱く上気し、乱れた金色の髪が肩を滑り落ちる。
 そこへ、呆れを含んだヌトス学長の声が響いた。

「ハス……ハイタ。ハイタ=グッドシェパード。あなたは『教育者への暴力』および『風紀紊乱』の罪で、もう一段階落第ね」

「はあぁ!?」

 その言葉がハイタの胸を刺し、彼の紅色の瞳が目を丸くする。

「何でだよ!? あれやったの俺じゃねぇし! ほとんどライラが暴走した結果だし!」

 軽薄な仮面の下で必死に抗議する声が、部屋の空気を優しく乱す。
 だが、ヌトスは目を細め、青白く滑らかな肌を微かに輝かせて言い放った。

「ほほう? じゃあ、異例の若さで教授に昇格が決まったライラに、全責任を押し付けて処分するかしら? 私はそれでも構わないわよん?」

 甘く、毒のある笑み。
 それを聞いたハイタの死体の指が震えた。

「ぐがぐなっ……ぁぁもう、良いよ分かったよ!」

 彼はガックリと項垂れた。

「俺が教師として潜り込むはずが……予定が狂ったなもう……!」

 そんな騒ぎの中。
 ライラはまだ、「はー……はー……」と息を荒くしていた。
 初めての絶頂と、一晩続いた行為の興奮が冷めやらず、惚けた顔のまま二人から視線を外して壁を見つめている。
 深緑の瞳が陶酔の余韻で澱み、温かな柔肉が微かに震え、慎ましい胸の膨らみがまだ熱く波打っていた……。魂の奥底で、熟れた蜜が甘く滴り続けている感覚が消えない。
 そこに、ハイタは振り返って満面の笑顔を向けた。
 紅い瞳が、ライラの白い肌を優しく撫でるように滑る。

「しかし、美味かったぜ……お前の『蜂蜜酒』」

「~~~~~~っっ!!!!」

 その言葉が、ライラの耳に甘く、深く染み込んだ。
 瞬間、カァっと音がするほど顔が赤くなり、意識が現実に急浮上する。
 彼女の細い指が震え、反射的に動いた。

ドゴッ!!

「ひゅっ!?」

 間髪入れず、ライラの素足がハイタの股間を正確に蹴り上げた。
 悲鳴をあげてうずくまるハイタ。
 その彼を見下ろしながら、どこか嬉しそうに怒るライラの声が響く。

「人前で二度というな、馬鹿邪神っ!」

 白い肌が熱く上気し、深緑の瞳が棘のように鋭く輝く。
 けれど、その唇の端には、隠しきれない甘い微笑みが浮かんでいた。
 かくして、奇妙な相棒。
 二人の歪で背徳的な、そして切っても切れない共犯関係はーーここから始まったのである。


Case0 Fin

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