たぶん愛は世界を救う

ももくり

文字の大きさ
7 / 45

私の過去④

しおりを挟む
 
 
 弱々しい召使いが一転、再び女王の表情へ戻り、エミリは忌々し気に啖呵を切ったのだ。

「はァ~、これだから高木くんはダメなのよ。まったくもう、本当に騙され易いんだからあ。今の話、全部コトリに吹き込まれたんでしょ?そのコね~、そういうの本当に得意だから。呼吸するみたいにして嘘が吐ける女なの。

 よく考えてみてよ、どちらが正しいか。

 私だけじゃなくて青木チャンも見たよね?ほら昨日の夕方、中年のオジさんと腕を組んでコトリがホテルに入って行く姿をさ~」

「えっ?!…あ、うっ、うん…」

 …バカだなあ、青木さん。女王様に逆らえなかったんだろうけど、その嘘が自分の人生を変えてしまうかもしれないのに。

 実は彼女たちが気づかないうちに4人の男性がその背後に立っており、今の会話を全部聞いていたのである。

「ゴホンッ」

 男性のうちの1人が咳払いをして、それに反応した全員が勢いよく振り返った。

「あッ?!ど、どうしてココに??」

 各々がそんな言葉を呟くのも当然だろう。4人の内訳は、校長先生、担任である武田先生、そして富樫先生に…残り1人は誰だろうか??

 見覚えのあるその人が、スッと一歩前に出た。

「こんにちは、コトリ様。覚えていらっしゃいますか?安藤ですよ」
「ああ、安藤さん…。お久しぶりです」

 父の会社のお抱え弁護士だ。弁護以外に個人的な相談をしてしまうほど、父はこの人を全面的に信頼している。

 ピンと背筋を伸ばし安藤さんは声を張り上げた。

「かなり以前から、コトリ様がパパ活をしているという悪質なデマが広がっておりまして。

 当初は校内だけだったのでしょうが、どうやらネット掲示板などにも書き込まれ、ここ最近はお父様や取引関係の方々の耳に入るようになり、著しく企業イメージが損なわれております。

 あの中林建設の社長令嬢がパパ活をしている、なのに父親はそれを看過しているのかと。実際にそれを忠告してくださった方々も、数名いらっしゃいましてね。早速、真偽を調べたところ予想通りシロでした。

 …では、誰がそんなデマを広めたのか?

 内容が内容ですので未成年だろうと容赦しない、自分の言動には責任を取っていただこうと。だから、近日中に名誉棄損で訴えさせて貰います。

 えっと…今のところ、アナタとアナタ…2名は確実ですが、他にもいるはずです。

 …多部校長!」

 白髪交じりの口ひげを、心細そうに撫でながら校長は『ハイッ!』と威勢よく返事する。

「この学校には多額の寄付をしておりますし、勿論、犯人探しには協力していただけますよね。

 もし適当にお茶を濁すような結果報告をすれば、私のクライアントである中林建設の社長の他に、彼と懇意にしている松村物産、オキ地所も来年からは寄付をしないそうですよ。

 既にネット掲示板とSNSの方はログを保存し、削除依頼を申請済ですので粛々と対応願います」

 一気にそう言い終えたかと思うと、安藤さんはニッと歯を見せて笑い。エミリに向かってボソリと呟いた。

「ったく頭の悪いクソガキがッ。面倒を掛けさせるんじゃない!」

 だってほら、建設屋にも色々あって、父の会社は結構ダークな仕事も受けてるから。総会屋とか占有屋とか、アッチ系の人も相手にするような弁護士さんなんだよ?

 敵に回したらスッゴイことになると思うんだな。

 そんな弁護士さんが、たかが女子中学生を相手に貴重な時間を割いてくださるとは、有り難いと言うか何と言うか。いや、絶対に富樫先生が黒幕なんだろうけど、後で詳しく訊かなくちゃ。

 ふと視線を感じて顔を上げると、この状況でもまだエミリが私を激しく睨んでいて。思わず後ずさると安藤さんが間に入ってくれた。

「まだ懲りないようですね。これ以上、コトリ様に害を与えるようでしたら、アナタのご両親に制裁を加えますよ。子供の責任は親の責任でもありますからね」
「どうぞ!やってみればいいわッ」

 反論してきたエミリに対して、安藤さんが本性まる出しにした。それはその場にいた全員が身震いするほどの、冷酷な表情だ。

「分かりました、アナタの名前を教えなさい」
「…関口エミリ。ご存知かしら?中林建設の下請けだった関口工務店の社長の娘よッ。

 いいわ、コトリにも聞かせてあげる。

 アナタの父親はね、先代からの付き合いだったウチの父に安くて無茶な納期で依頼しておいて、最後には他社に鞍替えするからと、突然契約を打ち切ったの。

 お陰で父の工務店は信用を失い、どこからも仕事が来なくなって倒産したわ。そのせいでウチの両親は喧嘩が絶えなくなり、とうとう2年前に離婚したの。それでも娘であるコトリには罪は無いって、今まで通り仲良くしようと努力したけど。

 なのにアナタは高木くんと付き合い出した。
 私がずっとずっと好きだった高木くんと!

 …好き同士なら我慢出来たの。でもコトリは、そんなに好きじゃないって!高木くんのこと、そんなに好きじゃないって!そんなのおかしいよッ。

 だったら私の方が何百倍も好きなのに。どうしてコトリが選ばれたの??何もかも失くした私にこそ、幸せになる権利が有るんじゃないの?!」

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

お姫さんと呼ばないで

秋月朔夕
恋愛
華族の娘として生まれたからにはお家のために結婚しなさい。そう父に言われ続けて、わたしは今日幼馴染と結婚する。けれど洋館で出迎えた男は全く違う人だった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...