たぶん愛は世界を救う

ももくり

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もしや無能か?

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「ああ、娘の不始末を親である俺が詫びに行ったんだが。その際に、ブヒュ…さすがは小椋さんだ。お前を身内にして、躾け直してくださると」
「お、小椋??お、お父様、それってまさか…」

 茉莉子さんには兄が2人いる。長兄の寛貴さんは人格者で仕事も出来ると評判だが、次兄の光貴はチャラくてアホな上に親のコネで入社した会社をクビになるかもとの噂だ。

「さすがに跡取りの嫁では肩の荷が重いだろ?だから遠慮して次男の方で構いませんと言っておいてやったぞ。俺も1度だけ会ったことが有るが、愛想の良い好青年じゃないかブヒュヒュ」

 無理、絶対に無理!!
 だって、あの光貴だよ??

 男友達の紹介で知り合って何度か遊んだけど、これっぽっちも食指が動かなかったしッ。

 私、アホは許せるけど性格悪い男は嫌いなのッ。弱い者虐めを平気でするし、何かと言えば自慢。それも自分のことじゃなく、親の財力とか地位とかそんなしょーもないことを威張るんだもん。

「謹んでお断りさせていただ…」
「バカを言うな!!これを逃したら次は無いぞ」

「でも私、愛の無い結婚なんて無理です。何せ愛の無い家庭で育てられてしまったもので」
「ピュルピュルピュ~」

 心なしか鼻息の音がワントーン高くなった。多分、怒りのあまりに興奮しているのだろう。

「なっ、生意気なことを言うな!この世間知らずが!結婚なんてな、家同士の繋がりを強めるためにするものなんだッ。今まで不自由なく育ててやった恩を返せ!

 小椋さんとこは不動産会社を経営しているんだ。お前の勤めている会社と提携したらしいがな、そことウチが姻戚関係を結べば事業がより盤石になるだろうが。ゴチャゴチャ言わず従え!!」

 ま…さ…か。
 この人、もしや無能か?

 父と違って私は、アドレナリンが放出されると逆に冷静になってしまうタイプの人間なのだ。

「あのう、小椋さん…清隆氏が数年前に引退済なのはご存知ですか?それも経営手腕が時代遅れだった為に倒産寸前の状態にしておきながら、責任の全てを長兄である寛貴さんに押し付けて。

 その小椋不動産を救ったのが帯刀グループです。実質、小椋不動産は吸収合併されていますが、経営陣の大半を挿げ替え、新体制にしたところどうにか利益を上げるようになりまして。

 黒字の見込が出た途端、引退したはずの清隆氏が自分をTOPに戻せと騒ぎ出して、帯刀側…この場合は榮太郎様が拒絶すると、今度はそれが納得いかないと暴れ出した次第です。

 その上、オフィスに日参する等の嫌がらせを始めた為、榮太郎様と私の2人で諫めに向かったところ、今度は包丁を振り回し。こともあろうに榮太郎様の腹部を刺す始末。まあ、最終的には被害者である榮太郎様ご本人の希望に寄り、警察沙汰にはしませんでしたが。

 …私、そんな方に躾けられたくありません」

 どうやら、何もかもが初耳だったらしく。というか、小椋のハゲ親父が引退してることくらい知っとけよとも思うが。父は人を使うのが上手いだけの人間で、そういう情報収集には疎いのだ。

『ぐぬぬ』と聞こえた気がする。
『何だとォ』という小さく唸った声も。

 だから私は間髪入れずに続けた。

「それに次兄の光貴さんはその清隆氏に気に入られていることだけが取り柄で、家業と無関係な会社にコネで入社し、遅刻・早退・無断欠勤と勤務態度が芳しくなく。取引先を怒らせたり等のクレームを頻繁に起こすのでクビ間近とか。

 そんな将来性の無い男性と、結婚したくないです」

 これで絶対にこの縁談話は流れたと確信したが、意地っ張りな父は尚も折れない。

「フンガフンガ、分かった、じゃあ無理にその次男との縁談は薦めない。しかし、会いもせずに断ると角が立つ。既に先方と会う日程も決定しているからな。とにかく一度は会って来い。その後でなら断るなり何なり好きにしろ!!」
「えええっ??」

 そんな勝手な。アンタが決めてきたんだから、アンタが断りなよ。

 そう伝える隙も無く、一方的に電話は切られた。…かと思ったら、もう一度電話が掛かってきて、恐ろしいまでの早口で光貴に会う日時と場所を告げられてしまい。それでも果敢に挑んでみたところ『じゃあな!』と言われて、いつの間にか電話終了。



「…よお!コトリ。久しぶりだな~」
「お久しぶりですね」

 そんなこんなでアッという間にその日を迎えた。

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