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コトリは後悔する
しおりを挟む私の話が聞こえているはずなのに、何故か光貴はいきなり私と向かい合って立ち。そして、いきなりガバッと抱き締めた。それもお互いの腰を密着させ、顔と顔の間隔だけは比較的余裕を持たせた抱き方である。
は、はなせえええっ。
思いっきり、ジタバタと両腕をバタつかせる私。しかし、社交ダンスの世界チャンピオン顔負けの安定したホールドでビクともしない。
「ふっ。コトリ、お前よく考えてみろよ。誰とでも寝るような安い女を俺は貰ってもイイと言っているんだぞ。
分かるだろ?異性関係の派手な女を世間はどう見ているか。これが男だったらモテると言われ、武勇伝のように讃えられるんだけどな。
でも、女は違う。
普通の男は、そんな貞操観念の緩い女と本気で付き合ったりしないし、もし付き合っても結婚までの遊び相手としか思わない。
な?誰だって『新品』が欲しいんだよ。汚れた『中古品』なんてイヤなんだ。俺は敢えてその中古品を貰ってやろうという、奇特な人間なんだぞ。
もっと有り難がれよ!!」
…普段の私なら絶対に言い返すのに、
光貴の言葉はまるで呪いの如く胸に響いた。
何もかも悪いのは自分だと分かっている。
自暴自棄になって誰とでも寝て。『セックスはスポーツと同じ』だと軽口を叩き、さほど深刻に考えていなかったのだから。フワフワとただ流されて。そんな自分を後悔しないと信じていたはずが。
なのになぜ、こんなに悲しいのだろうか。
>俺、メッチャ好きになりました。
>…コトリさんを幸せにしたい。
>コトリさん以上に素晴らしい女性は
>どこを探してもきっといないから
>俺が付き合いたいのは過去のコトリさんじゃ
>なくて現在のコトリさんだから、いいんです。
…ああ、そうか、浦くんだ。
彼が私を宝物のように大切に扱うから、だから。こんな風に汚くて安い女だと言われると簡単に傷つくようになってしまったんだ。
今まで隠し続けていた“後悔”が、どこからか一気に溢れ出て来て。
「うっ、ああっ、ううううっ…」
「えっ?!な、何だよコトリ??お、お前はこんなこと言われて泣くキャラじゃ無いだろ」
いつの間にか全身を覆い尽くす。そう、まるで黒いオイルのようにベタベタと。
「う、う…ら…、浦くぅ…ん」
そして子供のように泣きじゃくりながら、無意識に浦くんの名前を呼び続けていたことに、私自身も気付いていなかった。
「何だよ、いったい何を泣いているんだ?!」
「だっ、浦くんもそう思ってるのかと思ったら悲しくて悲しくて…。ううん、違う、浦くんは絶対にそういうことを思うような人じゃない。昔の私は変えられないからって、だから現在の私を好きだよって、そう言ってくれたしッ」
どうやら光貴は、これほどまでに傷ついている私を性的対象としてしか見れないらしく、密着している下腹部をゆるゆると上下に擦り始めた。
「やば…、チンコ勃ってきた」
しかし私はもうそんなことはお構い無しで、自分の世界に突入していたのである。
「そっか、私…。お試しとか言ってたけどもう本気で浦くんのことが好きになっていたんだ。バカだな私。心の奥底では自分の方が優れてると自惚れていたのかも…」
「あのさー、その浦っていったい誰なんだよ」
「でも現実は違ってた!!世間一般から見たら、私の方が断然劣っていて、むしろこっちの方が彼に相応しくなかったんだ。どんなに努力しても、清らかで美しい浦くんに汚れた私は似合わないのかもしれない…」
心を乱している原因は浦くんのはずなのに、その浦くんに無性に会いたかった。私の精神安定剤、そんな彼に早く会いたい…。
別世界を漂っていた意識が、突然戻って来て。まるで深い眠りから目覚めたかのように目の前に集中するとそこで光貴が笑っていた。
「安心しろ、俺は全然平気だから。結婚後もお互い、自由に恋愛しようぜ。俺は外に女を作るし、コトリも男を作ればいい。世の中は広いんだからさ、そういう夫婦がいてもイイんじゃないかな」
…は?なに言ってんの、コイツ。
そう思った瞬間、フワリと体が宙に浮き。
「え?な、何すんのよッ?!」
「ご自慢の寝室を見せてやんよ」
お姫様だっこで私は宣言通りに寝室へと運ばれ、そのままベッドに乗せられた。
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