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父の本心
しおりを挟む「ああ、分かった。では準備をしてくる。コトリ、まだお前は来なくていい。ここで裕斗くんと話をしていなさい。康史と秀人は会社から直接向こうへ行くそうだ」
「はい、分かりました」
暫くしてシーンと静かになり。その静けさの中で、先生は突然笑い出すのだ。
「くっくっくっ。なんだあの人。憎めねえなあ」
「え?ああ、ウチの父のことですか??」
それから先生は、私の知らなかった事実を楽しそうに暴露し始めた。
父は私を見捨てておらず、見守っていたそうだ。
そう、ずっとずっと。
「あのな、泰造氏はお前が男と遊び歩いているのを知ってたんだ。でも、説教すると逆効果だろうし、早くまともな恋愛をして幸せな結婚をして欲しいとヤキモキしてたみたいだぞ。
高校卒業すれば変わるだろう、大学卒業すれば落ち着くだろう、社会人になれば…さすがに真剣な恋愛を…って。
たぶんアレだろうな。男親だから、娘にそのテの話をするとかさ、すげえ苦手だったんだろうな。ところが大学を出ても働かずにブラブラして、本気の恋愛どころかまともに生きる気配が無い。んで、久々にお前と会ったら、死んだ魚みたいな目をしていたと。それで凄く焦ったらしい。
幾ら守る為だったとは言え、自分がしたことの罪悪感から面と向かって会話することを避けた結果、堕ちていく娘を放置してしまったのだと。
そんな後悔の念に苛まれた泰造氏は、藁にもすがる思いでお前を更生させようとした。でも残念ながら電話するとすぐ切られてしまい、その声は明らかに嫌悪感に満ちていて、これは自分の言うことなんか聞いてくれないだろうと。…そう思った泰造氏は、俺に連絡して来たんだ」
思わず私は目がテンになった。
「はへ?自分から接近禁止令を出しておいて、何してんの、あのバカ親父…」
先生は口元に手を当てて、思い出し笑いをするかのように話し続ける。
「だろ?俺も最初はそう思ったんだ。でも、たどたどしく説明してくれるワケよ。いかにコトリが荒れた生活をしてるかって。どうにか真人間にしたいけど、自分の話なんか聞いちゃくれないんだって。でも尊敬している富樫先生の話なら必ず聞き入れてくれるはずだって。…もう接近禁止を解除するとも言ったな。
もちろん俺は怒ったさ。
なに都合のいいこと言ってんだよって。それで、適当にあしらって電話を切ったら次の日もまたその次の日も電話を掛けてきやがんの。最後の方はもう、根負けしちゃって、渋々引き受けることにしたんだよ。
丁度その頃だ、コトリが急に今の会社で働くと言い出したのは。で、泰造氏のコネで無理矢理、帯刀グループの仕事が貰えることになったんだ」
「…えっ?!先生の相棒が金持ちの坊ちゃんで、そのコネという話じゃ?」
「あはは、それ嘘。本当は泰造氏が頑張った。それで俺はコトリと再会して、お前が真人間に戻れるよう見届けることになったんだ」
「うううっ!」
「そんなに唸るなよ。でもまあ、心配に及ばず仕事面では全然大丈夫だったな。むしろ誇らしいほどの働きっぷりで。そうなると後は恋愛関係だよ。なんかお前、評判悪くてさ~」
「なっ、どっ、悪い??ひょ、評判がっ?!」
喪服姿の先生は、肩に付いたホコリらしき物を息でフーッと飛ばしながら微笑む。
「既婚者と知りながら、榮太郎氏にちょっかい出したり、無垢な年下男を夜な夜な弄んでるんだってさ。これ、俺の見解じゃなく、社内の女子がそう噂してたんだぞ?」
「ううううっ」
「だから唸るなって。ほら、事実だから反論も出来ないだろ?俺も泰造氏もな、お前に幸せになって欲しかっただけなんだ。肩書なんてどうでもいい、とにかく本当にお前を愛し、守ってくれる男と一緒になって欲しかっただけだ」
「ううううっ」
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