3 / 40
3.男のファンタジーを全て詰め込んだ女
しおりを挟む「えっと…、具体的にはどう努力したんだ?」
これだから男は。
理路整然と物事を進めようとして確証を求め、何かと言えば『んで、その話にオチはあんのか?』と起承転結のケツに重点を置きたがるよね。
「私、相手に合わせて変幻自在に自分を変えているの」
「は?」
「例えば、ウチの部署の田島さんはお淑やかな女性が好きでしょ?だからあの人の前では言葉遣いに注意して、なるべく抑揚をつけずに話しているし、出来るだけ聞き役に徹するようにしているわ。逆に営業部の甲斐さんとかだと、クールな見た目とは違ってノリのいい女のコが好き…あ、これは幼馴染でもある松原さん情報だから確実よ!…えっと、とにかくその場の雰囲気を壊さない様にさり気なく盛り上げてくれる女性に心惹かれるらしいから、彼の前ではなるべくハキハキと元気一杯な感じで演じてみせてる。その甲斐さんと仲の良い富井さんなんて、あんなワンコ系キャラのクセしてセクシー系の大人女子が好きなんですって!だからちょっとだけ妖艶な雰囲気を出す為に思わせぶりな視線を…って、寝ないでよ須賀さん!」
「ぐ~…って、なげえよ、話が長すぎる!」
自分から質問しておいて、
早々に飽きないで欲しい。
非難がましい目で睨んでいると、須賀さんは『ふわあ』と欠伸しながら言った。
「アホくさ。全方位に媚びを売るなんて労力の無駄だろ、標的を絞れよ」
「だって私は無防備に相手を選べないんだもん。とにかく取っ掛かりとして相手を精査したいから、標的を1人に絞るのは得策とは言えないの。まずは間口を広げておいて、自発的に接近してくる人の中から一番信頼出来る男性と付き合うつもり。…あのさ、ウチの母って反面教師なのよね。全部あの人と真逆のことをすれば上手くいく気がする。そうなると女慣れしていない純朴な青年はNGで、それなりに女性経験を積んだ人の方がはっちゃける可能性が低いということになるし、自分から交際を申し込むと相手が慢心するということも分かったし、付き合った男性の風貌を改造するような真似は最終的に墓穴を掘る…って、須賀さん、また寝てるし!」
「んあ。俺、酔うと眠く…なんだ…わ」
「やだ、寝ないでよ、まだまだ夜はこれからなんだから!」
いかん。
長くてしかもオチの無い私の話が、この人を眠らせてしまうようだ。
えっと、一気に目が覚めることを言えばきっと覚醒するはず…って、そんな愉快なネタは生憎と持ち合わせていない。ううむ、仕方ない、ここらで衝撃のカミングアウトをしてみようか。
「中島華27歳、まだ誰のものでもありません!」
「は?それはいったい、どういう…」
「ピッカピカの処女だよ」
「う、わあ…」
えっ?まさか引いてる?
予想外な須賀さんの反応に私は戸惑いを隠せない。
「えっ?男性って女性のバージニティに拘るものじゃないの?」
「それいったい何時代の話だよ」
「でも、誰にも触れられていない真っ新な状態が至高だとよく聞くけど」
「それは…、その女のスペックにも寄るんだって」
称賛されるとは思っていなかったが、それでも非難されるほどでは無いと思っていたのに。
「私の場合はダメってこと?」
「…ああ、残念ながらな。男ってのはな、何と言うか、見た目と情報が一致すれば納得するんだよ。例えば見るからに真面目そうで『仕事一直線で生きてきました』とかさ、『親の介護をしてたんです』的な感じの女だったら30歳…いや、40歳過ぎて処女でもまあ『そういうもんか』で済ますはずだ。でも華はダメだ。お前、見るからにオッパイぶるんぶるんで、男が絶え間なく群がっていそうなのに、それで処女だなんて…なんか期待ハズレと言うか、裏切られたと言うか。絶対にそれ相応の経験を積んでそこそこのテクニックを習得していると思い込んでるぞ、世の男達は。なのに『未経験です』って、そんなの詐欺だろ!」
「えっと…なんで私、こんなに責められなきゃいけないの?」
「いいか、『男のファンタジーを全て詰め込んだ女』だと自称しているのなら、その肩書に責任を持て!そっち方面のテクニックも無いクセに、男のファンタジーが聞いて呆れるわッ!」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる