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<茉莉子>
その85
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初訪問から数日しか経っていないのに、榮太郎の部屋は軽くリフォームされており。ワンフロアが3部屋へと様変わりしていた。
「元々ドアが3つあっただろ?いつ結婚してもいいようにと設計してあって、簡単にリフォーム出来るようになってたんだ」
「はあ、凄いですね」
「茉莉子の荷物は奥の部屋に入れておいた。ウォークインクローゼットも有るから、自分の使い勝手が良いようにするといいよ」
「へえ、それはそれは」
気の無い返事を繰り返したのは、小椋家を出てくる際に寛貴から土下座されてしまったからで。長男様のプライドをかなぐり捨てたその姿に、思いっきりショックを受けたせいだ。
『本当に茉莉子だけが頼りなんだ。我が社は崖っぷち状態で、父さんの手腕ではもう巻き返せない状態だ。とにかく今は、父さんを会社から遠ざけたい。それを実行するには、帯刀グループの配下に入るしかなくて。その為には、お前と榮太郎くんとの結婚が必須だ。
お前にも分かるよな?俺の肩に、社員たちの生活がかかってるってこと。それにさ、これほど長く続いた小椋不動産の歴史を、自分の代で終わらせたくなんか無いんだ。
なあ、簡単だろう?もう婚約までしているんだから、その関係を持続させるだけでいい。出来れば1日でも長く添い遂げてくれ。お願いだよ、茉莉子…』
残念ながら私は長兄に弱い。
父や次兄と違って非常に腰が低く、損な役回りばかり引き受けているからである。そんな兄があまりにも思い詰めた表情をしていたので、ついウッカリ答えてしまったのだ。
『大丈夫だよ、私に任せておいて!』
…って、全然大丈夫じゃないのに。
帯刀家へと向かう車中でひたすら悩み続け、出した答えはこうだ。
本命の彼女から榮太郎の心を奪ってしまおうと。
そうすれば何もかも万事解決するのである。
では、どうやって??
幸いなことに榮太郎はドウのテイだ。きっと初めて知る女体に、溺れること間違いナシだろう。とにかく押し倒して正常な思考を奪ってしまえ。吉原遊女の如く、手練手管で榮太郎を操るのだ。
さあ、レッツトライ。
「う…っ?!何なになに??茉莉子、どうした」
「榮太郎にずっと会いたかったのッ」
ぐにぐにと背中から抱き着き、豊満なバストを押し付ける。すると、『うッふッ』と奇怪な声を上げて榮太郎は軽く身悶えた。
「お、俺も!会いたかったよ、茉莉子ォ!」
そんなワケで、驚くほど簡単に榮太郎は私の手中に落ちてくれたのである。
人間…いや、殆どの生物は性交の際にオスがメスをリードすると聞いている。だが、それは一般的な話だ。
だってこの男、リードする気が無いもの。キスしまくった挙句、ベッドに向かったけど自分が下になって仰向けに寝ちゃったもの。
逆だろ?!
何の疑問も持たないのか、お前はッ。
性欲とは別の、熱く滾る何かを持て余しながら私は、自分で自分に言い聞かせる。
>とにかく小椋不動産の社員たちの生活が
>かかっているのだから、頑張れ茉莉子!
ていうか、服くらい自分で脱ごうよ…。
可愛く微笑んでもダメだからねッ?!
そして私は再び自分で自分に言い聞かせる。
>とにかく小椋不動産…(以下同文)。
榮太郎のシャツのボタンを外し、肩から腕へと脱がせようとするがなかなか上手くいかない。
ちょっとくらい協力しようよッ。
なんでダラッと寝たっきりなの??
ここで再々、自分で自分に言い聞かせた。
>とにかく小椋…(もう略!)。
トロンと熱く潤んだ瞳は、まさに処女のソレで。上半身をなんとか露出させると、恥ずかしそうに榮太郎は頬を染めている。続けてちょいちょいと胸の突起を指で弾いたら、体を捩りながら何かを訴えてきた。
正直、私もそんなに経験豊富では無いが、この男よりはマシであろう。どうやら、手順を考えながら榮太郎の可愛い突起を無意識のうちに捏ねまくっていたらしい。
「んっ、もうヤダ…」
「あ、ごめん」
胸元で両腕をクロスさせ、拒絶されてしまった。しかし、これはアレだな、イヤなフリをしているだけで隠れた意味は『もっとして!』だろう。
頑張れ茉莉子!
イケイケ茉莉子!!
ひたすら脳内で自分を鼓舞しまくり、丁寧に丁寧に榮太郎の初めてを奪う。
「う…あっ、茉莉子、もうダメ…」
「ん、いいよ、我慢しなくて」
「だって早過ぎて恥ずかしいよ」
「最初だもん、平気平気!」
茉莉子は頑張るが、榮太郎は頑張らなくて良いのだ。
「ううっ、なんだか凄く恥ずかしいな」
「いいのいいの、ほれ、キスして」
男女逆転としか言い様の無い感じだが、こうして榮太郎は立派な大人となり。私に…いや、正確には私の体に溺れていくのである。
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