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9.クロノスタスタシスって知ってる?
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「クロノスタスタシスって知ってるう~?」
「キヨちゃん、それ『クロノスタシス』だよ、スタスタって、歩いてるんじゃないんだから」
「あはは、希代、歌詞くらいまともに覚えろよ」
チッ。
これはだな、きのこ帝国というバンドの名曲で。恋の始まりを『クロノスタシス』という時計の針が止まって見える現象に例えて、このままアナタと一緒の時間がずっと続くといいのにという女心をっ…
「うんうん、分かったからもう諦めようね。次の曲にいってもいい?やっぱりキヨちゃんは『センチメンタルジャーニー』が一番似合うよ」
「そうだぞ希代、ろくに覚えていない曲に挑戦すんな。聞かされてるこっちの方が、いちいちガクッとなって落ち着かないっつうの」
御門さんも龍も冷たい…。
スゴスゴと曲を中断し、マイクを置く。だってカラオケって練習の場じゃないの?私はずっとそう思って生きてきたよ?そうボヤく私を無視して男共は『急にラーメンが食べたくなった!』と楽しそうに騒ぎ出し。その結果、歩いて20分ほどの場所にある汚いけど美味しいと評判の店まで行くことになった。
現在の時刻は夜10時。こんな遅い時間にラーメンなんぞ食べたら太ること間違い無しだが、特にお手入れなんかしなくてもイケメンな2人にはどうでもいいことらしい。ていうか、先程からOLっぽい女性たちが御門さんと龍をチラチラどころかガン見している。
いや、普通は女1人と男2人で夜道を歩く場合、女を間に挟むか、2列になって男が1人後ろに回るんじゃないの?なのにどうしてアンタたち2人が仲良く前を歩いて、か弱い女性である私が1人トボトボ後ろを歩かなきゃいけないワケ?もしかしてこれって周囲から、麗しい男性カップルにオコゲの私がくっついてると誤解されてないかな?…てなことをブツブツ呟いていたら、仕方なさそうに御門さんが私の隣りに立った。
「ひゅう、さすがイケメン」
「いや、BL認定されるとは思ってなかった」
「俺は御門さん相手なら構わないですけどね」
…新プロジェクトは順調で、同年代はこの3人だけだったものだから、自然とこうして食事やカラオケなんかをするようになり。僅か1カ月で異常に打ち解けてしまった。龍が言うには、ずっと御門さんのことを好きになれなかったが、あまりにも私が御門さんと楽しそうにしていたせいで少しだけ興味が湧いたらしい。
で、恐る恐る3人で飲みに行ったら秋山さんの話で盛り上がり、同じ振られた者同士で奇妙な連帯感が生まれたのだと。お陰で今では私よりも男性2人の方が仲良しなほどだ。
「キヨちゃん、もうちょっとで到着するから。頑張って歩こうね」
「そうだぞ希代、もっと早く歩け!」
「ふぁい」
飴と鞭で励まされ、ようやく辿り着いたソコで、私は残念なことに誠一郎と松前さんに会ってしまうのだ。
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