あざとい後輩に彼氏を奪われそれでもめげずに頑張っていたらとんでもないイケメンに言い寄られた話

ももくり

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10.ラーメン店での遭遇

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 違う店に行きましょうよと言いたかったが、その前にスタスタと御門さんが中に入り『3人なんですけど』と怖そうな店長に申告したせいで、帰るに帰れなくなってしまった。スタスタ…クロノスタスタシスって知ってる?って、あは~、さっきカラオケでそのやり取りしたし~、これってデジャヴ~?
 
 遠い目でひたすら現実逃避をしていたら、龍が脇腹を突いてくる。

「おい、多分まだ茶谷さんたち気付いてないぞ。引き返すんなら、今だ!!」
「んあ、そ、そうだよね!あのっ、御門さん!」
 
 何も知らないイケメン隊長はテーブル席に荷物を置いて、無邪気に手を振りながら叫んだ。
 
「キヨちゃん、須賀くん、こっちだよ!」
 
 見たら分かるっちゅうねん!!
 
 怒りたいけど怒れない。だってクソキュートなその笑顔を見たら何もかも許してしまえるのだ。ほんと卑怯だよね、その顔。…って、見惚れている場合じゃなかった。御門さんのせいでカウンター席に座っていた誠一郎と松前さんがこちらに気付いてしまったらしく、立ったままの私と龍を凝視している。
 
 こ、これは気まずい。
 すっごくすっごく気まずい。
 
 ん?って、あれ?どうしたの松前さん?

 久々に会った彼女は、以前のキラキラした感じがすっかり色褪せ、下手をすれば10歳ほど老けて見える。目の下のクマは隠せないくらい濃いし、肌荒れのせいかファンデーションも浮いている。服装だって、以前はヒラヒラのスカートしか穿かなかったのに、今日は動き易そうなジーンズ姿だ。なるほど、だからラーメン店なのか。
 
 昔の松前さんなら絶対、お洒落なお店にしか行かないと駄々を捏ねただろうが、今のボロボロな松前さんはむしろそういう店で恥をかきたくないからと自らラーメン店に行くことを希望しそうな感じだ。きっと仕事が忙し過ぎてメイクなんぞに時間を掛けていられないんだろうな。

 ん?でも私、部署を異動しても仕事量は変わらないのに気持ち的には凄く余裕なんだけど。それは多分、仕事を押し付けられ『自分だけが辛い思いをしている』と被害者ぶっていたシステム開発での自分と、互いを思いやり『もっと頑張ってイイ仕事をしようね!』と励まし合うデジタルコンテンツ部での自分との差なのかもしれない。
 
 うん、なんか今って結構幸せかも。だからかな、目の前で松前さんが誠一郎の腕に絡み始めたけど、むしろ微笑ましいと思えるほどで。
 
「そんなチンケな男で良ければ、くれてやる」
 
 おっといけない、心の声が漏れてしまいそうだわ。って…、あ…、もしかして私、口に出したかも。そんなワケ無いよね?まさか…ええっ。聞こえて…ない…よね?いや、聞こえてる。あの顔は絶対に怒ってる。
 
「お客さん、とにかく座って貰えませんかねェ」
 
 そんな時に、いかにも頑固一徹といった感じの店長が渋い声で私と龍に着席するよう促した。こんな時間でもそこそこ席が埋まっているのは繁華街に近いということと、やはりその美味さが理由だろう。『はい、すみません』と答え、御門さんの正面の席に座ると続けて龍も私の隣りへ腰を下ろす。水商売の関係なのか、少しオネエっぽい感じの男性客たちが真横のテーブルで私たちのことを楽しそうに話し始めた。
 
「ちょっと今の見たァ?なんかワケ有り~??」
「見たわよお、たぶんテーブル席の綺麗な子とカウンター席の小汚い子があの男を奪い合ったんじゃないのかしら?ちょっと火花飛んだわね」
 
「でもあんな超イケメン2人に囲まれてるのに、あんな普通の男と付き合ったりする~?」
「世の中には理屈じゃ割り切れないことも有るのよ、ビクトリアちゃん。毎日松茸を食べていたらたまにはシメジも欲しくなるワケよ。って、あらやだ、アソコのサイズの話じゃないから!ちょっと~、もう~、恥ずかしいい~」
 
 
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