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19.ハートを鷲掴み

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 ふあああっ、なんか御門神が無駄にエロイ。
 
 目が、そう、目がなんか滾ってるというか熱い。まさかこんな私にムラムラしているのですか?いったい私のどこに?間抜けそうに見えると評判のこのトボケた顔?それとも宝の持ち腐れと評判の豊満なバスト?あっ、髪はちょっとだけ自信ありますけどッ!美容院で購入しているシャンプーで丁寧に洗ってますからねッ。ちょっとだけ触ってみる??
 
「えっ?何してんのキヨちゃん」
 
 膝を微かに曲げ、髪を撫でろと言わんばかりに頭頂部を差し出す私に御門神は戸惑っていらっしゃるご様子だ。
 
「撫でてみてください、分かりますから」
「あ…うん…」
 
 最初は恐る恐るという感じで触れてきた手に、段々と熱が籠ってくる。
 
「どうですかー」
「そっか、そういうことか!まずはキヨちゃんを撫でさせておいて、その勢いで利介も撫でさせようという算段なんだね?!人間も犬も同じだと…隠れたメッセージを俺に伝えるためにっ。くう…っ、さすが俺が選んだ女性だけあるッ!」
 
 すんげえ誤解なんですけど。
 
 ピュアな神をガッカリさせるのは非常に心苦しかったので、訂正しないまま私はドッグフードを犬皿に移す。その音に反応したのか、利介がいつの間にか足元に鎮座していた。
 
「躾の行き届いたコですね~。ウチの実家の犬なんて『早く寄越せ!』とアメフトの選手並みにぶつかって来ましたけど。こんなお利巧さんに待てるなんて私のハートを鷲掴みだわ!」
 
 …って、ん?何してるんだこの人。利介の反対隣りでちんまり正座したかと思うと、目をキラキラさせて神は言う。
 
「俺もお利巧に出来るからハートを掴まれてよ」
「……っ」
 
 ぐおおおおっ、脳みそが沸騰しそう!!こんなの卑怯だよッ。これで好きにならない女なんて世界中どこを探しても絶対にいないしッ。いや、それ以前に元々好きだからね?!それをゴチャゴチャ理由つけて逃げてるだけで。──無意識のまま利介にご飯と水を与え、乱れた脈を落ち着かせるため神に背を向け立っていると、パンツの尻ポケットに入れていたスマホが鳴る。
 
「あ、龍から電話です。はい、もしもーし」
「龍ですけど。…希代、もう既に察していると思うが、俺はそこには行かない。何故なら御門さんに土下座されたからだ!イケメンの土下座、激ヤバだぞ。お前さあ、もう諦めて御門さんに征服されてしまえよ。んじゃあなッ」
 
 え…。
 うええええええっ?!
 
 いや、全然察してないしッ。それに征服どころかなんか逆の立ち位置になってるっぽいしッ。チラッと神の方を盗み見たら、ニヤッと笑ったように思えたけど、き、気のせいだよね?!
 
 
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