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39.ブラックオフィスの恋愛事情
しおりを挟む…などと考えつつも、お茶当番として朝にしなければならない作業をテキパキ説明する私。
「この給湯器から高温のお湯が出るからポットとかは有りません。来客用の湯呑みはコレです。最初は煎茶、1時間以上滞在されている御客様には追加でコーヒーを出します。フレッシュは冷蔵庫、砂糖はこの引出しの中。それと…」
一気に説明を終え、ついでにコーヒーを3人で飲みながら朝礼前の小休止をすることにした。自慢じゃないが、こうして3人で集まることは滅多に無い。なぜならお昼は自席で食べているし、普通のOLみたく終業後に食事もしない。全員が連日残業で早く帰れて20時頃だからだ。猫舌なのか、コーヒーが冷めるのを待ちながら中島さんが私に訊いてくる。
「堤さんっていつも物凄い勢いで帰りますけど、何か用事でも有るんですか?」
「んー、そ、それは…」
口籠っていると、誰かが私に代わって返事する。
>彼氏と同棲中だから早く帰って
>イチャイチャしてんのに決まってるだろう!
慌てて振り返るとそこには…富樫副社長がいた。
ぐぬぬ…、余計なことをこのタイミングでっ。少しイラッとしたが、相手は何せ副社長なのだ。私は薄い笑顔を貼り付けて挨拶する。
「おはようございます。社会人として出社して一番最初にすべきことは挨拶ですよね」
「あはは!相変わらず堤は辛辣だなあ。ごめん、おはよう堤さん、おはよう吉川さん、おはよう中島さん。今日も一日頑張って働こうね!」
『おはようございます』と新入り2人も返し、そして間髪入れずに中島さんが何故か私にではなく、富樫副社長に向かって食い気味に質問を投げた。
「キャンペーンとやらのせいで来月まで繁忙期だとは聞いていたんですけど、プライベートの時間がこんなに少なくても彼氏と上手くやっていけるのでしょうか?あ、もしかしてお相手はウチの部署の男性社員だったりとか?そう言えば社内恋愛OKなんだそうですね。でもオフィスラブって破局すると仕事がやり難そうですし、私なんぞは若輩者ですから敢えて挑戦したいとは思えないのですが」
早口過ぎて、途中で聞き取ることを諦めた私とは違い、さすが副社長。更に早口で答えを返す。
「残業と休日出勤ばかりさせて申し訳無いとは思っている。しかし中島さんと吉川さんも加わったことだし、2人がこの調子で徐々に慣れてくれれば残業も減る予定だ。俺の方も営業はそろそろひと段落させて、制作を手伝うつもりでいるからさ、ほんと今はイレギュラーな忙しさなのでこれからは恋愛に勤しんでくれて大丈夫だよ。
ちなみに俺が答えることでも無さそうだから、堤さんの彼氏が誰かは本人に訊いてくれ。あと、オフィスラブの成功例がこの俺だ。嫁は元部下だったからな。そう悲観したモノでも無いぞ!」
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