好きですけど、それが何か?

ももくり

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ミエミエなマウンティング

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 ※ようやく千脇視点に戻ります。
 
 
 
「おいおい、こらこら」
「あはは、うふふ」

 おはようございます、皆さん。

 今日一日頑張れば明日は土曜でお休みですよ~!あ、土日も働くアナタには、『お疲れ様』の言葉を心を込めて贈りたい。アナタのお陰で助けられている人が大勢いることを忘れないで!!

「だからドライヤー使った後は、床に落ちた髪を拾えというのに」
「どうせ今から廣瀬さんも洗面所で髪をセットするのでしょう?」

「それがどうした」
「だったら、私が拾ってもまた髪が落ちるじゃないですか」

「しかし、それでも後で使用する人のために綺麗にしておくことは礼儀だろうが」
「私、気付いちゃったんですよね」

 何を?と問い返されたので今まで思っていたことを熱く語ってみた。

 廣瀬さんは綺麗好きだ。なので私も同居開始したばかりの頃は、己の痕跡を消すかの如くあちこち掃除しまくっていたが、結局それはすべて廣瀬さんにやり直されてしまうのだ。その都度、自分の掃除が手抜きだったせいだと猛省し、技量を磨いて最近ではその完成度を上げたが、何故かそれはそれで廣瀬さんが不満そうなことに気付いてしまった。

「…で?結局は何を言いたいんだ千脇さんは」
「廣瀬さんは、綺麗な状態に戻すのが好きなのでは無くて、ゴミを所定の場所…まあ、一般的にはゴミ箱ですが、とにかくそこに溜めるのが好きなんですよ」

「はあ」
「だから汚れていないと楽しくないタイプの綺麗好きってことです」

「な、なるほど…」
「というワケで、わざわざこうして髪を2、3本落としておきますね。どうです、嬉しいでしょう?」

「言われてみれば俺、サイクロン式の掃除機に溜まっていくホコリを眺めるのが好きだ!」
「でしょう?!」

「コロコロクリーナーにたくさんゴミが付着していると嬉しい!」
「だと思った!」

「髪を落としてくれて感謝するよ、千脇さん!」
「どういたしまして!」

 …ふう、朝から疲れた。

 同居開始から既に1カ月半が経過した。当初は1カ月の予定だったのに、そこに恋人設定が加わったせいで別居することが難しくなってしまったのである。取り敢えず半年くらいはこの調子でやり過ごし、落ち着いた頃に別れたことにして同居を解消しようかと目論んでいる最中だ。

 そんなワケで1カ月限定だから…と頑張っていた家事のアレコレを、徐々に手抜きすることに決めた。料理と洗濯は私がするのだから、掃除は廣瀬さんにさせておこうと。面と向かってそう言うときっとゴチャゴチャ煩いから、こうして適当に丸め込むことにしたのだ。

 ふふっ、段々と廣瀬さんの扱いが上手くなるな、私。

 コッソリ心配していた男女としての接触的なものは一切ない。TL漫画とかだとよくある風邪ひいちゃって看病した時にベッドインとか、酔っぱらった勢いでヤッちゃったとか、そういうアクシデント的なものはこの真面目な2人の間で起きようも無く、健全すぎて部活の合宿所のような感覚だ。前世は兄と妹だったのかもしれないと思うほど、気が合う。これほど相性の良い人は、女性でもいなかった。


 
 
「では、乾杯!」
「かんぱ~い!」

 で、何の乾杯かと言うと総務部全体での送別会である。あまり接点の無い別の課の女性2人が退職するのだと。事務畑の人間を削れ…という役員からの指示により、契約社員を切ったのだ。何とも世知辛い世の中だとは思うが、退職者と同じ課の社員によれば『1人は遅刻ばかりしていたし、もう1人は旦那さんの転勤について行く』そうで、なんというか心配には及ばなかったようだ。

 とにかくまあ北村くんが異動し、前田が長期出張となり、宮丸くんとマリちゃんが付き合い出してから同期での飲み会は無くなったので、久々の宴会に私はウキウキしていた。
 
 …のに、案の定、ヤツが動き出したのである。

「うふふ、昨日ね、私達の交際2カ月目の記念日だったの!それでサトルく…じゃなくて宮丸くんが、素敵なイタリアンレストランを予約してくれたんだあ。ほら、知ってる?よくグルメ雑誌に載ってるバーカロって名前のお店。結構高いんだよー、なのに奮発してくれて、感激しちゃった」
「へー」

 職場で惚気ることを我慢している反動からか、マリちゃんはこの楽しい宴席で弾けることにしたらしい。

「宮丸くんの部屋って、男性の一人暮らしのワリにとっても綺麗なんだよ。いいよね、綺麗好きの男性って」
「ふーん」

 ハッ。ふと気づくとマリちゃんの背後に廣瀬さんがいて、目の動きだけで私に何かを伝えようとしている。

 >千脇さんも俺のことを自慢しろ!
 >俺の方が宮丸くんよりも綺麗好きだ。
 >ほら、早く!!

 え、ええっ?そんなの嫌ですよ…と目で返事すると、お怒りになったのか、グイグイとマリちゃんの隣りに割り込んで座り、反論し出した。

「『バーカロ』という店名はヴェネツィアならではの居酒屋さんのことを意味するんだよ。だから高級というよりも庶民的な店だと思うなあ。そう言えば俺も千脇さんと先日、フレンチを食べに行ったんだけどさあ、ミシュランで3つ星を獲得したシェフの店なのに2人で5万円もしなかったんだ。次の記念日には是非、佐久間さんと宮丸くんも行ってみるといいよ。なかなか美味しかったからさ!」
「わあ、そうなんですか。さすが廣瀬さんですね~」

 うっ、なんだそのミエミエなマウンティング。

「そんな外食よりも、俺は千脇さんの手料理の方が何倍も美味しいと思っちゃうんだけど。何て言うかな、おふくろの味?本当にどれを食べても美味しいから!」
「うふっ、千脇ちゃんって愛されてる~」

 違う、『お前のことを褒めてやったんだから今度は俺のことも褒めろ』というさり気ない催促だよ!

 この調子で最後まで廣瀬&マリのマウンティング合戦は続き、聞いているだけで胸イッパイになってもう限界と思った頃に閉会となり。店を出た途端にスマホがポケットの中でブルルと震えたので画面を見るとそこには見覚えの無い電話番号が表示されていた。

 仕事関係の連絡なのかもと取り敢えず応答してみると、その相手はなんと吃驚、

 …村瀬さんだった。

 
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