4 / 26
ひとり問答
しおりを挟むしつこく言うが、若いって素晴らしい。
キッカケとなった実夕ちゃんは予想外のタフさを見せ、バイトも辞めないと。
「やだもうアヤさんてば私に恥をかかせて~。でも、そのお陰で浦さんとくっついたんだから感謝してくださいよ」
「ん、有難う…」
なんだか複雑だ。すごくすごく複雑だ。
これでいいのだろうか、私?
勢いに流されて付き合うとか返事したけど、浦くんとあんなコトやこんなコトを出来るのか。すぐエロの方向に思考を繋げて申し訳無いが、だって28歳と24歳の健全な男女が付き合い、そこに辿り着くまでにそれほど時間は必要ない。
ショートカット好きの彼は、私を性欲の対象にしているに違いないのだ。
そんな発想から、野菜を切る彼の手を凝視してしまう。
男性特有の節がシッカリした長い指。よく見ると喉仏とか太い首とか肩のラインとか。今まで気にしていなかった、『男』を主張する箇所が妙に目につく。出来上がった料理をテーブルに運びながら、ふと店内の男性客を眺めて自分に問うた。
あの男性客は…イヤ。
この男性客は…イケル?
でもやっぱりイヤ。
もし、いま誰かに思考を読まれたら、きっと恥ずかしくて死んでしまうだろう。しかし、エロモード全開になった私は、『どの男性になら抱かれても良いか?』という脳内でのひとり問答を繰り返す。
結果、どうやら私は男性に対する評価が厳しく、店内に12人もいたのに誰も合格しなかった。そのまま厨房でランチのコーヒーを用意しつつ、再び浦くんの姿を凝視する。
うん、いける。
彼になら抱かれてもいいや。
「…あの、アヤさん」
「な、何かな?浦くん」
観察対象からいきなり声を掛けられ、戸惑いを隠せない小心者の私。
「さっきから、すごく視線を感じちゃって、その…仕事に集中出来ないって言うか。言いたいことが有るなら言ってくれませんか?」
「んー、仕事中なのにゴメンね。なんか改めて浦くんを男として意識してるんだ。こうして見ると、いいよね、浦くん」
2人の会話を聞いた実夕ちゃんが、ガンガンとトレイをカウンターにぶつけている。
「実夕ちゃん?!トレイが壊れるから止めて」
「だってっ!!そんな会話、聞きたくないです。職場でイチャつくのは禁止にしましょうよッ!あ、店長からも厳重注意してください!!」
寸胴鍋に入ったスープを撹拌していた店長は、ふと私の方をジッと見つめ。それから無言のままでその作業に戻ってしまう。
一瞬だけ思考が麻痺して、ついウッカリ先程のひとり問答を再開する。
この男は…イケル。
っていうか、過去に何度もしてるし。
たぶん相性も良かったよね、私たち。
おいおい、店長相手に何を考えているんだ、私。せっかく前へ進もうと思ったのに、こんな男のことなんか忘れちまえよ。
そんな私に更なる嵐が吹いてくるのは、その日の夜の部での出来事である。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる