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そっか、そうだよ。
しおりを挟む「私ね、思うんですよ。付き合う相手には誤解を与えたくないし、不安にさせたくないって。
だって好きなんだから、誰よりも幸せにしたい。
いつでも笑っていて欲しいし、哀しみの原因が自分に有るのなら、必死に努力してそれを排除する。以前、店長と付き合っていた時は、『いつか変わってくれるはず』と期待しました。
…でも、いつまで経っても変わらなかった。
アナタは私の前でも平気で他の女性と食事に行く約束をしたし、私の前だというのに平気で他の女性とじゃれ合ったんです。『イヤだったのなら、その時に言え』と思っているかもしれませんね。
でも、そこじゃない。
いちいち申告されて直すのでは無く、アナタが心の底から『アヤを幸せにしたい』と思っていたとすれば、そんな行動はしないはず。
ね?アナタの『好き』はその程度なんです。
私はアナタと一緒にいても幸せになれない。だけど、この広い世の中にはアナタの行動に耐えられる女性がいるのかもしれない。このまま問題を解決せずにヨリを戻しても、また同じことの繰り返しだと思うんです。
…浦くん、色々と黙っていてゴメンね。でも、真面目なアナタのことだから、店長との関係がギクシャクするかなと思って。それから正直に言うね。
私は浦くんのことを、
世界一好きというワケじゃない。
でも、世界一信じられると思っているの。
アナタとなら上手くやっていけるって、そう思ったから付き合ったんです。今ここにいるのも、店長にキッパリと断るため。だからお願い、私を嫌いにならないで。
こんな状況を見てしまって、私を信じられないと思っても仕方ないけど。だけど、やましいことは何も無いから」
…これが私なりに悩んで出した答えだ。
真っ直ぐに浦くんを見ると、見詰め返され。そして彼はフッと頬を緩めて私の手を握った。
「平気」
「えっ?」
よくよく考えると…いや、よく考えなくても凄く失礼なことを言ったと思うのに。
だって一番好きな男では無いと断言したんだよ。なのにさすが浦くん。前から薄々感じていたのだけれども、この人って本当に器が大きい。
そういや中学高校と空手部に所属していたって。きっとそこで心身共に鍛えられ、どんな局面に立っても焦らずじっくりと対応出来るのだろう。
「だから『平気』だと言ったんです。だって結局は俺を選んでくれたのでしょう?こうして内緒で店長に会っていたのも、しつこく言い寄られたのを断るためだろうし。…いいんです、俺はアヤさんが誠実でとても真面目な女性だと分かっている。
でも、これだけは言っておこうかな。
俺は世界一信じられる女性がアヤさんで、
そして、世界一好きな女性もアヤさんですから。
これから俺を世界一好きになってくださいよ」
な、なんなのこのドッシリ感??
安定し過ぎて怖いくらいだわッ。
浦くんは本当に私にベタ惚れで、私がどんな粗相をしても決してその気持ちは揺らがないのだろう。
『平穏無事な恋愛ってツマンナイ』とか言って、誠に申し訳ございませんでした。いやあ。自分の彼女が他の男と抱き合っているところを見てしまったのに、それでも私を信じるとかさ、なんかもう…ん??
誰かと似ているような…。
はて??誰…。
って、私かーい?!
そっか浦くんは、店長と付き合っていた頃の私に似ているんだ。どんなに怪しい行動をされても、ひたすら私は店長を信じた。
いや、信じているフリをした。
怒ったり拗ねたりするような、重い女だと思われたくなくて。ただひたすら理解の有る女を演じ続け、『どうってことないよ!』と笑っていたっけ。
そっか、そうだよ。
「ごめんね、浦くん」
「えっ?何で謝るんですか」
この人が傷ついていないワケが無い。
「だって世界一好きな男ではないとか言って。でも、ちゃんと好きだよ。すごく好きだから。じゃなきゃ付き合ったりしないし」
「はは…。いいんですよ、気にしないで」
これからはこの人にきちんと向き合って、もう過去のことなんて忘れよう。
…そう決心したその時、店長が口を開いた。
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