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大介さんについて
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大介さんのどこが好きかと問われたら、
迷わず『生きるスキルの高さ』と答えるだろう。
彼の両親は、自宅で学習塾を開いているのだそうだ。なので、長男である彼は幼い頃から2人の妹のために家事全般を担っていたと聞く。
「そんなに多いと大変だろう?いいよ、俺も干すの手伝うから」
それが彼と初めて交わした言葉だ。
確か、バスケ部のマネージャーになって最初の合宿で言われたのだと思う。ちなみにこの年、とあるバスケ漫画が大ヒットした影響で新入部員の数も2倍に膨れ上がり、洗濯量がとんでもないことになっていた。
朝練で疲れてグデグデ状態のまま、宿舎へ戻っていく部員たち。そんな彼等を笑顔で見送りながら、大介さんは女子マネの仕事を手伝ってくれた。いや、他の部員達が冷たいのでは無く、たぶん彼らは揶揄われることが嫌だったのだろう。
『女子マネから気に入られようとするのは恥ずかしいこと』『女のすることを手伝うのは男らしくない』そんな先入観が有ったからこそ、誰も言い出さなかったその行為を、大介さんだけは難なくやってのけた。
「うわっ、結構重いなあ。可哀想に昨日もコレ、2人でしたの?」
「ええ、でも慣れれば平気ですよ」
「そんな強がりは言わなくても大丈夫だよ。2人でするよりも、大勢でした方が早いしね。よし、他にも何人か野郎共を呼んできてやろう」
「そ、そんなこと…」
「先輩風を吹かせて1年の奴らだけ誘うから、心配しないで」
「でも、あのっ、真鍋さーんッ?!」
結果、大勢で作業するようになったことで男女の境が消え、互いの要望も伝え易くなっていった。
大介さんという人は万事が万事、この調子で。
人と接することに躊躇が無いというか、『相手が拒絶したら?』とか『周囲にこう思われたら?』という葛藤が生じないみたいなのだ。たぶん彼の中では、『自分だったらこうされると嬉しい』という純粋な善意しか存在せず、人目なんぞは些末なことなのだろう。
かなり以前のことだが、バスケ部のOB会で誰かがこう言っていた。
>天変地異が起きて、食糧が無くなったとしても
>大介だけは生きていけそうだよなあ。
それに異論を唱える者が1人もいなかったことからも分かるように、大介さんは生きることに対して『逞しい』のだ。例え食糧難になろうとも、相手をどうにか懐柔し、互いの要求を巧みに擦り合わせ、容易く食糧を手に入れてしまう。そして、それを困っている人に分け与え、今度は分けた人達から別の物資を貰って…という調子で生き抜いていくに違いない。
どこから見てもごく普通の人なのに、
知れば知るほど奥深い男。
そんな大介さんから目が離せなくなり、これが恋だと気づくまでにそう時間は掛からなかった。もしかすると、尊敬という感情は最も恋愛感情に近いのかもしれない。
>おーい、大介!
>彼女が試合の応援に来てくれてるぞ!
…で、気付いた途端に、失恋決定。
話し易くて優しい彼は、どうやら女子に大人気だったらしく。ある日、校内でも5本指に入りそうなカワイ子ちゃんから告白されてカップル成立。高校卒業までその仲は続き、大学に入って破局したものの、スグに次の彼女と交際開始。これも2年で破局するが、間髪入れずにまた次の…という調子で、彼は順調に恋愛スキルを磨いていったのである。
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