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朝日家の一大事
しおりを挟む麗らかな土曜日の朝。
三姉妹のうち自宅に交際相手をつれて来るのは私が初めてで、朝日家は随分と賑わっていた。
「パパッ?!なんでスーツ着てるの??」
「いや、だって先方はきちんとした格好でいらっしゃるだろう?こちらもそうするのが礼儀だと思ったんだが…」
父・光太郎はそう言って譲らず、スーツ姿のままソファで新聞を読んでおり。
「ほらもうアンタはバイトに行く時間でしょ?」
「そんなの休みを貰ったわよ。だって我が家の一大事だものッ」
妹・奈月はなぜかバッチリメイクを施し、目の覚めるような真っ赤なスカートを穿いて父の隣りを陣取っている。そして反対隣りでは姉・美香が愛犬のシオンを激しくブラッシングし、母・依子は掃除にぬかりが無いか最後のチェックをしていた。
「じゅ、10時よね?内藤さん10時にいらっしゃるのよね?」
「うん、そうだってば。まだ30分も有るし、お母さん、落ち着いてよ~」
先程から母は、5分置きくらいでこの質問を繰り返しているのだ。
「か、香奈?内藤さん10時にいらっしゃる…」
「あ、来たみたい。予定より早いかも」
チャイムの音に慌てて玄関へ向かうと、そこにいたのは予想外の人物だった。
「よお、間に合ったか?」
「ええっ、なんでッ?!」
父方の祖父である茂太郎。
そう、某銀行の頭取で朝日家にとって絶対的な存在を固持している御仁だ。父は3人兄弟の末っ子で、祖父の跡目は1年後に長男(私から見ると伯父)が継ぐ予定だが、徐々に仕事を譲っているらしく。今までが余りにも激務だったせいか暇を持て余し、こうしてあちこち顔を出すようになってしまったのである。
「依子さんに聞いたぞ。3人いる娘ッコのうち、ようやく1人だけ片付きそうだと。まさかそれが香奈だとは思わんかったがな、アハハハ」
「えっと、あの、お祖父ちゃん、そんなワケで今からそのお相手の男性が来る…」
から帰ってくださいとはとても言えない、だってとっても怖いんだもんッ。この人、金融を生業にしているクセに何故かゴッドファザーに憧れているんだよッ?!朝からサングラス掛けて、スーツの襟下にペイズリー柄のマフラーを差し込むとかさ、もうアッチの人にしか見えないって!!
「そんなもん知ってて来たに決まってるだろ?あのな、朝日家の婿に一点の曇りも有ってはならぬ。我が家にふさわしい男かどうかジイちゃんがこの目でしっかりと見極めてくれるわッ。カッカッカ!!」
「う、嘘でしょ?!」
おのれ母め、余計なことをッ。
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