スミレの恋

ももくり

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私を殺す気か??

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 ──翌朝。

 念のため確認してみると案の定、電話もメールもSNSもブロックされており。あまりにも迅速な対応に、心から感服してしまう。って、いかんいかん、ここで挫けてどうする?
 
 大丈夫、私は貴臣の行動スケジュールを知っているのだ。朝6時から犬の散歩。それが終わったら30分程度のジョギングをし、出勤のために家を出るのはその1時間後。つまり、ストーキングの機会が3回も有るというワケだ。
 
 まずはコッソリと彼の姿を覗いてみる。貴臣は一軒家に住んでいるから、敷地内に停めてある車の影が最も隠れ易い。
 
 実は少しだけ期待していたのである。
 
 ひょっとしてあの場では強がってみたものの、私と別れて落ち込んでいるのではないかと。いや、落ち込んでいて欲しい。というか、落ち込め!!
 
 強く念じてみたのに、残念ながら彼はとても元気で。いや、それどころか、むしろイキイキしていたほどで。更にショックだったのは、『整えてくれ』と何度も訴えたのに無視され続けたあの前髪が、別れた途端、スッキリと左右に分けられてしまったことだろうか。
 
 うっ、国宝級のご尊顔が丸見えですっ。
 
「な、ななな、…どういうこと??」
 
 だって子供の頃からあのモッサイ姿で。だからこそモテなくて勉強に専念出来たのに。ココにきて、なぜ、どうして色気を見せるのだ。

 それはアンタ、私が消えてせいせいしたと?『よっしゃ次の女をGETするぜ!』的な意気込みと捉えてよろしいのか?

 トントン、とスニーカーの爪先を地面に叩きつけ、足首をくるくる回したかと思うと彼はジョギングを開始する。ちなみに寝坊したので犬散歩に向かう時間には見に来れなかったのである。

「なんか頭が痛い…」
 
 フラフラと自宅に戻り、相変わらずどうでもイイ話を熱く語る母を適当にあしらいながら朝食と身支度を済ませ、
再び観察の場へと向かう。
 
 「お、おおう?!」
 
 思わず感嘆の声が漏れた。
 
 なんだ?どうした?
 おい、私を殺す気か??
 
 いつも季節に関係なく、年中ペラペラのスーツを着ていたあのモッサイ男代表の大場貴臣が。バリッと高そうなスーツを身に纏い、颯爽と家から出て来たではないか。
 
 その姿にキュンキュンしながらも、別れてしまってからのその謎の行動に、動揺を隠せない私なのであった。
 
 
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