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10年目??
しおりを挟む分かったような、分からないような。でも、いつの間にか涙は引っ込み。不思議と自律神経も修復された気がして、私は改めて椅子に座り直し、背筋を伸ばす。
“たかが恋愛”だと私も思っているのだが、その“たかが恋愛”に振り回されるのは何故か。
「ウチの母の友人の息子さんがね、すっごくIQが高くて天才レベルなんだって。その人が新卒で素晴らしい企業に就職して、上司につれて行かれた飲み屋の女のコに本気で恋しちゃったとかで。
もちろん向こうは金ヅルとしか思ってないから、ある程度搾取したら適当にフッちゃうよね。そしたらその男の人、思い詰めちゃって。とうとう自殺未遂までしたんだよ」
話の真意を汲み取れない藤井は、一瞬で青ざめる。
「おい、スミレ?まさかお前、死ぬ気じゃ…」
「やあねえ、死なないし。そうじゃなくて、どんなに頭が良くて、どんなにヤリ甲斐のある仕事を任されていても、たかが恋愛ごときで正気じゃ無くなるってこと」
「あのさあ、それは一部の人間だけだろ?悪いけど俺はそこまでじゃない」
「片想いだけど身を焦がすような恋をする人。両想いなのにそれほど相手を好きじゃない人。重くても軽くても、恋は恋なんだよね。そう考えると、恋って不思議だなあ」
『乙女かッ?!』と突っ込まれると思ったのに、意外にも藤井は同意するのだ。
「そっか。重さに関係なく、例えそれが一方通行でも。どれも全部、“恋”と呼んでいいんだよな」
そんな彼の姿を見て、私は決心する。
このモヤモヤは別れを納得していないからで、想いを断ち切るには最後まで叩きのめされて来ようと。
「私、やっぱり貴臣に復縁を迫って来る!それで思いっきりフラれてやるわッ」
おう、行ってこい…と応援された気がする。だから、張り切って会社帰りに貴臣の家へと押し掛けた。
「あら!スミレちゃん、いらっしゃ~い」
「オ、オバさん、実は貴臣と約束してなくて。でもこのまま中で待たせて貰ってもいいですか」
「どうぞどうぞ」
「お邪魔します」
あまりにもいつもと変わらないその態度に、まだ貴臣から私と別れたことを知らされていないのだと思ったのに。
オバさんは予想外の言葉を呟くのだ。
「本当に残念だったわ。やっと約束の10年目だったのに」
「10年目??」
>ただいま~。
玄関の方から貴臣の声が聞こえ、慌ててオバさんは口を噤む。
「な、なんなんですか10年目って?!」
「いえ、何でも無いの。私ったら余計なことを」
「えっ、だってそんな途中で話を止められたらすごくすごく気になりますッ」
「怖い、スミレちゃんの目が血走ってる。オバさん、震えちゃうわ~」
この状況で貴臣登場。
「おいこら、人の母親に何してんだよ」
「うあ、ねえ、10…あ、お帰りなさい」
混乱、混乱、もう支離滅裂。いつの間にか彼は背後に立っていて。
「やだ、ちょっと、貴臣?!」
そのまま私を外に放り出した。
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