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いきなりのハードル
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「へっ?!奈月がお兄ちゃんのことを??うわあ、突然過ぎて頭がまわんないなあ」
「とにかくアッちゃん、協力してッ。志季さんと私が付き合えるように!!」
私がこんなに真剣な話をしていると言うのに、アッちゃんはもぐもぐとハンバーガーを食べることを止めない。いや、それどころか合い間にフライドポテトを口に放り込む余裕さえ見せる。
「うーん…。ヤメておけばとしか言い様が無いかも。だってあの人、恋愛に興味を持てないというか妹から見ても何を考えているか不明だし」
「不明でもいいのよッ。取り敢えず今は周辺に女の陰がチラついてないのよね?…まあ、もしいたとしても撃退してやるけどさッ」
ふんがふんがと鼻息も荒く宣言する私を、アッちゃんは尚も諦めさせようとする。
「兄自慢みたいで恥ずかしいけど、あれで結構モテるんだよ。そこそこ顔はカッコイイし、同世代の男たちに比べれば妙に達観していると言うか落ち着いて見えるらしくて。お兄ちゃん、イタリアンレストランのホールでバイトしてるんだけど、そこで一目惚れとかされてウチまで付き纏われたりするのね。
だけど全然相手にしない、アウトオブ眼中なの。奈月は美人で頭もいいし、お兄ちゃんにはピッタリだと思う。だけど、奈月に限らず女性と恋愛するお兄ちゃんの姿が想像出来ないと言うか。悪いことは言わないから、諦めた方がいいんじゃないかな」
そんなことを言われたら余計に闘争心でメラメラ燃えちゃうっつうの!
「アッちゃんの言いたいことはよく分かったわ。でも、だけど、私は諦めないからねッ!!志季さんだって年頃の男だもん、スケベ心をくすぐれば私の方を向いてくれるかもしれない。取り敢えずアッちゃんちに通い続けるわ!で、早速なんだけど今晩そっちに泊まってもいい?」
「奈月って…ほんと言い出したらきかないよね」
コックリと首を縦に振る私に向かって、アッちゃんは大きな溜め息をひとつ吐く。
なんとなく自信は有ったのだ。だって、私と志季さんはとても似ているから。どこがとは具体的に言えないが、根っこに有る信念みたいなもの…それが同じような気がして。
「私ね、自慢じゃないけど生まれてから一度もフラれたことが無いの。だからもしフラれるとしたら、初めては志季さんがいい。彼にフラれるのなら悔いは無いし、むしろ本望ってもんよ。失恋程度じゃヘコたれないから、安心して!!」
「う…わあ、なんかそこまで言って貰えると妹冥利に尽きるというか、応援せざるを得ないよ」
「きゃあ、アッちゃん大好き!愛してる!!」
「ふ、ぐ、奈月、首を絞めないで、ぐるじぃ」
…そしてその晩。アッちゃんは宣言通りに私の恋を応援してくれた。いや、きっと本人は応援したつもりだったに違いない。
>急にノッチが私に泣きながら電話してきて、
>大事な相談が有るっていうから行くね。
>あ、奈月は指名されてないから来ちゃダメ。
>お兄ちゃん、悪いけど奈月の相手を頼める?
>じゃあ、行ってきまーす。
って、いきなり2人きりってハードル高いよッ。
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