朝日家の三姉妹<3>~奈月の場合~

ももくり

文字の大きさ
14 / 39

いきなりのハードル

しおりを挟む
 
 
 …………
「へっ?!奈月がお兄ちゃんのことを??うわあ、突然過ぎて頭がまわんないなあ」
「とにかくアッちゃん、協力してッ。志季さんと私が付き合えるように!!」
 
 私がこんなに真剣な話をしていると言うのに、アッちゃんはもぐもぐとハンバーガーを食べることを止めない。いや、それどころか合い間にフライドポテトを口に放り込む余裕さえ見せる。
 
「うーん…。ヤメておけばとしか言い様が無いかも。だってあの人、恋愛に興味を持てないというか妹から見ても何を考えているか不明だし」 
「不明でもいいのよッ。取り敢えず今は周辺に女の陰がチラついてないのよね?…まあ、もしいたとしても撃退してやるけどさッ」
 
 ふんがふんがと鼻息も荒く宣言する私を、アッちゃんは尚も諦めさせようとする。
 
「兄自慢みたいで恥ずかしいけど、あれで結構モテるんだよ。そこそこ顔はカッコイイし、同世代の男たちに比べれば妙に達観していると言うか落ち着いて見えるらしくて。お兄ちゃん、イタリアンレストランのホールでバイトしてるんだけど、そこで一目惚れとかされてウチまで付き纏われたりするのね。
 
 だけど全然相手にしない、アウトオブ眼中なの。奈月は美人で頭もいいし、お兄ちゃんにはピッタリだと思う。だけど、奈月に限らず女性と恋愛するお兄ちゃんの姿が想像出来ないと言うか。悪いことは言わないから、諦めた方がいいんじゃないかな」
 
 そんなことを言われたら余計に闘争心でメラメラ燃えちゃうっつうの!
 
「アッちゃんの言いたいことはよく分かったわ。でも、だけど、私は諦めないからねッ!!志季さんだって年頃の男だもん、スケベ心をくすぐれば私の方を向いてくれるかもしれない。取り敢えずアッちゃんちに通い続けるわ!で、早速なんだけど今晩そっちに泊まってもいい?」
「奈月って…ほんと言い出したらきかないよね」
 
 コックリと首を縦に振る私に向かって、アッちゃんは大きな溜め息をひとつ吐く。
 
 なんとなく自信は有ったのだ。だって、私と志季さんはとても似ているから。どこがとは具体的に言えないが、根っこに有る信念みたいなもの…それが同じような気がして。
 
「私ね、自慢じゃないけど生まれてから一度もフラれたことが無いの。だからもしフラれるとしたら、初めては志季さんがいい。彼にフラれるのなら悔いは無いし、むしろ本望ってもんよ。失恋程度じゃヘコたれないから、安心して!!」
「う…わあ、なんかそこまで言って貰えると妹冥利に尽きるというか、応援せざるを得ないよ」
 
「きゃあ、アッちゃん大好き!愛してる!!」
「ふ、ぐ、奈月、首を絞めないで、ぐるじぃ」
 
 …そしてその晩。アッちゃんは宣言通りに私の恋を応援してくれた。いや、きっと本人は応援したつもりだったに違いない。
 
 >急にノッチが私に泣きながら電話してきて、
 >大事な相談が有るっていうから行くね。
 >あ、奈月は指名されてないから来ちゃダメ。
 >お兄ちゃん、悪いけど奈月の相手を頼める?
 >じゃあ、行ってきまーす。
 
 って、いきなり2人きりってハードル高いよッ。 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...