朝日家の三姉妹<3>~奈月の場合~

ももくり

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上手く伝えられるかな?

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 すると志季さんは私の両頬をガッツリその手で挟み、逸らした視線を強引に戻す。
 
「俺の話を最後まで聞いてくれ!!」
「ふ、ふぁい」
 
 こんな大勢の前で、残酷な人だな…。さあ、完膚無きまでに振られてあげますよ。
 
「キミといると、俺は不幸なだけじゃなくて、その数倍も、いや、数十倍も…幸せなんだ!!とにかく俺は一日中、キミのことを考えている。考えている間はとんでもなく幸せで、会えた時はもっと幸せで、奈月ちゃんはその存在自体が俺を幸せにしてしまうんだよ」
「幸せに?」
 
 どうやら私は、振られるワケでは無さそうだ。思わず頬が緩み、泣き笑いの表情を浮かべる。
 
「うん、幸せ過ぎて泣きそうになるくらい。だからもう覚悟を決めたんだ、これからカッコ悪い姿もどんどん見せて、恐れずに何でも挑戦しようって。だから…あの、『今更』って断られるかもしれないけど…うっ、その…」
 
 頑張れ、頑張れと心の中で応援する私。
 
「朝日奈月さん、好きです!!改めて俺と付き合ってくれませんか?!」
  
 アッちゃんと樋口さんだけでは無く、望月さんとその仲間たちも同時に固唾を呑んでいる。
 
 どうやら、というか当たり前のように私たちはいま注目の的らしい。だから尚更緊張してしまい上手く言おうとした結果、口から出た言葉が
 
「そ、そういうトコ!」
「…はい?」
 
 残念、これは失敗だと思いつつも、挫けずに先を続ける。
 
「そういうトコが好きなんですっ。正直に言うと私、久志との件で凄く傷ついてて。だってっ、仮にも1年以上親密に過ごした彼氏だったのに、誰よりも身近にいて私のことを一番よく知っていたはずのその彼が、容易く紗英の嘘を信じてしまったんですよ?!じゃあ、分かり合えていると思ったあの時間は何だったの?!…って」
「……」
 
 志季さんは無言のまま真剣な表情で頷いている。
 
「それに、紗英と二股していたクセに、平気で私とも楽しそうに過ごしてた。調子のいいことペラペラ喋って、まだ私のことを好きだと思わせておいて、陰では紗英と私の悪口を言ってた。そんなことを知ったら人間不信になっても当然でしょう?もう無理、恋愛なんかもうしない!…って、決心してたんです」
「でも、全然そう見えなかったよ。奈月ちゃんはいつでも平気そうに笑ってたし」
 
 私はふるふると顔を左右に揺らす。
 
「いつもそうなんです。私は見栄っ張りだから、どんなに弱っていても平気なフリをしてしまう。周囲が気を遣って『可哀想に』『大丈夫?』と慰めれば慰めるほど元気なフリをしてしまう。だから志季さんの存在が死ぬほど有り難かった」
「俺…が?」
 
 ブンブンと今度は上下に頭を振り続ける。私、上手く伝えられるかな?
  
 
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