私に彼氏は出来ません!!

ももくり

文字の大きさ
9 / 45

その9

しおりを挟む
 
 
「もう5時か…。じゃあ、軽く寝ておこう」
「ね、ねねねねる?」

 動揺が隠せないのは、寝るという単語に相反する2つの意味が含まれるからだ。

 1つは、単なる睡眠のこと。
 残り1つは、男女の性的な営みを意味する。

 この場合はどっちだ?!たった今、付き合うことを了承したのだからこの話の流れから考えると、たぶんきっと後者に違いない。

 …マジで?

 心の準備が全然整っていないのに、勢いだけでそんな事態に突入してしまうのか。でもまあ、確かに湊はそういうことに慣れていそうだし、体の相性を早々に確かめておきたいのだろう。しかも今日は土曜で、幸か不幸か時間はたっぷり有る。

「というワケで、シャワー借して」
「ど、どどどどうぞ」

 さすが湊だ、次に何をすべきか行動に淀みがない。眠気のせいで頭がボンヤリしている私は、軽く頭を左右に振りながら己がすべきことを考えてみる。浴室に案内して、お客様用タオルと…着替えが必要だな。下着は無理だとしてもせめて部屋着を用意しなければ。長身の湊に私の服が着れるはず無いので、祥に借りてこよう。

 って、祥に?
 
 祥の部屋に勝手に入ることは出来ないから、ノックをして起こさねばならない。しかもその挙句、湊の為に部屋着を貸してくれと懇願するだなんて、なんとまあ難易度の高いミッションだろうか。
 
 朝5時に、そんな非常識なことをする姉を持った祥が不憫でならないが、私の罪悪感などお構いなしで湊はいつも愛用している黒いビジネスバッグから当たり前のように新品の下着を取り出した。

 それをガン見する私に向かって彼は言う。

「ん?ああ、これ?インナーシャツとトランクスは不測の事態に備えて、いつも持ち歩いているんだ」
「ふうん、へええ」

 納得したフリをしてみたが、普通に働いていて、下着が必要になる事態ってどんな時だよッ?!

「今まさにその事態だよな、あはは」
「確かに」

 軽く脱力したことを隠しながら私は湊を浴室へ案内し、それから祥の部屋をノックする。

 コンコン。
 コンコン。

 気を遣って控え目な音にしたせいか、それとも熟睡しているせいか、返事は無い。これでは埒が明かないので、仕方なく声を発することにした。

「祥、ねえ、祥…」
「うん、なに?」

 ぎょっとして振り返る。

 何故ならその返事が、リビングの方から聞こえてきたからだ。

「しょ、祥?!なんでそこに」
「え?だって眠れるワケないじゃん」

 照明は点けていなくても、淡いアイボリーのカーテンから差し込む日差しのお陰で室内は十分に明るい。ソファの上で膝を抱えて座っている祥の姿を確認した私は、素早くそこへ駆け寄る。その表情は、なんだか今にも泣き出しそうに見えた。

「どうして寝てないの?」
「だって、ねえ…ちゃん…が…」

 痛いほど爪を手の平に食い込ませながら拳を握りしめていると、その手を強引に広げさせながら祥は私の瞳を覗き込んでくる。

「私が、どうかした?」
「あの男に…盗られる…」

 ああ、そうか。これは分かり易い独占欲だ。ずっと一緒にいた、同士の様な存在の姉。その姉が他の男に奪われてしまうことにショックを受け、焦っているのだ。

「バカだなあ、私は、いつまでも祥のお姉ちゃんだよ。それは誰と付き合っても変わらないんだから」
「えっ?!じゃあ、やっぱりあの男と付き合うの?」

「うん。…あ、でも、大丈夫!!外見だけで判断すると絶対に遊び人で女の敵みたいだと思うだろうけど、湊は違うの。いや、正確には違わないんだけど、もう改心したって言うか、私とは真面目に付き合うと誓ってくれたからッ」
「…なんだよ、…それ」

 こういうのを墓穴を掘ったと言うのだろうか。まったくダメダメだな、私。

 反省しきりな姉の両肩をガシッと掴んだ祥は、いつの間にかその手を素早く移動させ、膝裏を掬うように持ち上げて所謂『お姫様だっこ』状態にしたかと思うと
 
 そのまま自分の部屋へと向かった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜

瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。 まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。 息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。 あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。 夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで…… 夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

元男装傭兵、完璧な淑女を演じます。――嫁ぎ先はかつての団長でした!?

中野森
恋愛
貧乏男爵家の長女クラリスは、弟の学費を稼ぐために男装して傭兵団へ入団した。 副団長にまで上り詰め、団長をはじめとした仲間から信頼を得るが、決して正体は明かさなかった。 やがて戦争が終わり、傭兵団は解散となる。 出稼ぎするために流した嘘の悪評により、修道院入りを覚悟していたクラリスだったが、帰郷した彼女を待っていたのは父からの「嫁ぎ先が決まった」という一言だった。 慌ただしく始まる淑女教育、そして一度も未来の夫と顔合わせすることなく迎えた結婚式当日。 誓いの言葉を促され隣からきこてくる声に、クラリスは凍りつく。 ……嘘でしょ、団長!? かつての想い人でもある傭兵仲間が今は夫となり、妻の正体には気づいていない――気づかれてはいけないのだ、絶対に! 本作品はゆるふわ設定、ご都合主義、細かいことは気にしたら負け! ※この小説は、ほかの小説投稿サイトにも投稿しています。

番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那
恋愛
 魔術国家アステリエで事務官として働くセレフィアは、義理の家族に給料を奪われ、婚期を逃した厄介者として扱われていた。  そんなある日、上司である魔術師長・シリウスが事務室へやってきて、「私と結婚してください」と言い放った!  詳しく話を聞けば、どうやらシリウスにも事情があるようで、契約結婚の話を持ちかけられる。  家から抜け出るきっかけだと、シリウスとの結婚を決意するセレフィア。  同居生活が始まるが、シリウスはなぜかしれっとセレフィアを甘やかしてくる!? 「これは契約結婚のはずですよね!?」  ……一方セレフィアがいなくなった義理の家族は、徐々に狂い始めて……? ◇◇◇◇  恋愛小説大賞に応募予定作品です。  お気に入り登録、♡、感想などいただければ、作者が大変喜びます( . .)"  モチベになるので良ければ応援していただけると嬉しいです! ※この作品は「小説家になろう」様にも掲載しております。

処理中です...