私に彼氏は出来ません!!

ももくり

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その10

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 姉弟とは言え、快適な生活を過ごす為のルールとして、互いの部屋に立ち入るには必ず相手の許可が必要だとしていた。だから、祥の部屋に入ったのは本当に久々なのである。

 ふむふむ。

 廉価でどこにでも売っていそうな家具や電化製品。クローゼットに入りきらなかったワイシャツやスラックスをぶら下げてあるスチール製のハンガーラック。
 
 入居当時は義父の口説き部屋に相応しく、モノトーンで纏められたお洒落でハイソな部屋だったのに、今では生活感まる出しだ。その落差に思わず笑みが零れる。すると私を自分のベッドに座らせた祥は、そんな姉の姿を見て訝し気に眉を顰めた。

「なに笑ってるんだよ」
「ううん、何でも無い」

 そう言えば、こうして2人で向かい合って話すのも何日ぶりだろうか。最近の祥は、私と一緒に食事することも無く、会話も少な目だ。それは社会人になったばかりで疲弊しているせいかもと勝手に解釈していたが、もしかすると違うのかもしれない。

「あのさあ、姉ちゃんって本当に男を見る目が無いよな」
「えっ、…そう?」

 あんなにカワユク『あの男に…盗られる…』なんて呟いておきながら、今度はお怒りモードで攻めて来るワケ?振り幅が広すぎてお姉ちゃんは付いていけないよ。

「知ってるか?高校ン時に付き合ってた斉藤って男は、姉ちゃんと交際3日目に他の女から告白されて、そっちに乗り換えたんだぞ」
「嘘ッ!私達2カ月ほど続いたよ」

「バカだなあ、二股されてたんだって。この話、姉ちゃん以外は全員知ってる」
「う、わあ。本当に??」

 そっか、『別れた後スグに新しい彼女が出来たのね』とか思っていたけれど、そうじゃなくて私と同時進行だったのか。くそう、斉藤め。私の甘酸っぱい初交際の思い出をよくも汚してくれたな。

「大学時代に付き合ってた町田は姉ちゃんの友達のチカって女とヤリまくってた」
「?!」

 チカちゃん??だって、チカちゃんには当時、交際5年目のラブラブ彼氏がいたはず。

「あのチカって女、すげえビッチだったんだぞ。俺も何度か誘われたことが有る。でも、断ったけどな」
「あら、まあ」

 他に言葉が見つからない。町田先輩ったら、あんなに私を束縛しておいて、自分はチカちゃんと??そ、それは酷い…。

「極め付けが、社会人になって付き合い出した吉岡な。あいつ、姉ちゃんと1年間付き合ってたけど、途中で結婚したの知ってるか?」
「け、けっこん?私、不倫してたの?!」

「ああ、それもデキ婚な。本当になんで気付かないんだよ…」
「なんでって、なんでだろう…」

 過去に3人としか付き合ったことが無くて、そのうちの1人だけとかならまだ分かる。でも私の場合、全員がクズ男だったんですけど。これってもしかして引き寄せる体質とかなのかな?

 落ち込む私に、祥は更に畳み掛ける様に言う。
 
「俺がその情報を入手して、姉ちゃんに忠告しようとすると、タイミング良くその直前に別れていたりするんだよ。だから、今度もまたそうならないとは言い切れない。あのチャラそうな男がさ、姉ちゃんを散々弄んだ後で俺がその悪行を知るんだ。なあ、こんな風に3回も続いたら次も間違い無くクズ男だと思ってしまうだろう?…俺は、純粋に姉ちゃんを守りたいだけなんだ」
「ううう」

 コンコン。
 コンコンコン。

 その瞳から視線を逸らすことが出来なくて、ひたすら低い声で唸っていたところ、突然ノックの音と続けて湊の声がした。
 
  
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