裏切られ、地味女になっていた私ですが、再び美人に戻って恋愛することにしました。

ももくり

文字の大きさ
10 / 14

こころの恋人

しおりを挟む
 

 フリーじゃないよッ!!

 そう反論したいが、直也はもう私の言葉を信じてくれそうに無いので地団駄を踏む。30歳にもなって地団駄踏むとは自分でも思わなかったよ。ハハッ、私ったら、あまり良い年齢の重ね方をしていないなあ。…いや、ココにもっとダメな大人がいるけどさ。

「あの…、俺たち本当に付き合ってるんです」
「…ダメじゃなかった!やれば出来る子!!」

 心の中で貶したことを猛省しながら清水さんの腕を握りしめ、その背後から支援する私。

「俺、恋愛経験あまり無くて、だからなかなか吉川…じゃなくて桂さんとの関係も進展しないんですけど、桂さんはそれでもイイと言ってくれました。そのプロセスを1つ1つ楽しむのも恋愛の醍醐味ではないのでしょうか?俺たちは本当に惹かれ合っていて、互いのことを少しずつ知っていく途中の段階なんです。

 俺はもっと桂さんのことが知りたい。もっともっと知って、心の奥の方から深く繋がりたい。世の中には幾通りものカップルが存在するはずで、同じ組み合わせは2つと無いから、俺たちのことを他のカップルと比べて『らしくない』と断言するのは止めて欲しいんです。
 
 いつか俺たちは、他の誰よりも仲の良いカップルになれる自信が有りますし、絶対に死ぬまでイチャイチャし続ける自信が俺には有るんです。だから最初だけギクシャクしていても、全然平気です。だってこのギクシャクもプロセスの1つだから。今しか味わえない、もどかしい感じが堪りません。俺たち、いま正に青春なんですよ」

 パチパチパチ。

 私と中島さんと…あれっ?何故か千脇さんまで一心不乱に拍手している。

「いい、好き、そういうの堪んないッ。最近の男共は余裕ぶっこいて、互いを深く知る行程をすっ飛ばしていきなりカラダの関係になろうとするでしょう?だから脆いんです、イザという時に呆気なく壊れちゃうの。…吉川さん」
「え?あ、はい」

 どうやら、あざとい女だと思っていた千脇さんは単なる変人だったようだ。

「貴女が清水さんの心の恋人だったんですね」
「こ、こころの恋人…」

 ププッと吹き出しそうになるのを堪えながら、私は神妙な面持ちを作ってコクリと頷く。

「もしかして職場では隠していらっしゃるのかしら?それは仕事がやり難くなるから?でも、今回のように誤解が生じることも有りますから周囲にカミングアウトした方が良いですよ」
「はい、ではそうします」

 そう言い残して千脇さんは去って行った。なんだか狐につままれたような気分でいると、直也が最後に爆弾を落とす。

「そこの彼氏に言っておくよ。御大層なことを語ってくれたけどさ、心だけ繋がっててもダメなんだよなあ」
「は?何をいきなり…」

「仲良し夫婦の一方が、ある日突然浮気をして離婚…このケースが多いのは何故だと思う?」
「そ、そんなの知りませんよ」

「どんなに心で深く繋がっていても、時に人は性欲に負けてしまう生き物なんだってこと」
「せ、性欲って」

 せっかく良い雰囲気だったのに、何を言い出すんだこの男はッ。

「俺と桂って、付き合ってた時に100回以上セックスしてるんだよ。それが貴方の拙い技術で満足出来るのかな…と、そう思っただけ」
「ひ、ひゃっかい」

 なんて下衆いことを言う男なんだ!!…ああ、分かり易く清水さんが落ち込んでいく。これはかなり激しいダメージを受けているようだ…。

 100回は大ゲサだと思ったけれど、よくよく考えたらそのくらいしていることに気付いて、今更ながらに驚く私。だって7年間だよ?お互い初めて同士で、高校の時なんて結構な回数をこなしたと思う。1日2回とか3回とかね、なんか暇さえあれば盛ってた気がする。で、人前では澄まし顔でいることにまたムラムラしたりしてね。

 ああ、若かったな、あの頃は。遠い目でシミジミしていたら、私に背中を向けて立っていた清水さんがグリンッと振り返る。

「だ、だだだ、大丈夫。だって7年間も付き合っていれば、そういうことは勿論していたワケだし。1回も100回も同じだよッ!!」

 …全然大丈夫じゃ無さそうなんですけど。
 
 しかし、こればかりはどうにも出来ないワケで。だって、私の過去は何をどうやっても変えられないのだから。それにしても、悔しい。あれほど恋愛に夢見ていた清水さんがいきなり挫折しそうになっていることが。そして、何だか私が自分の体を汚れているように感じてしまうことが、とてもとても悔しい。

「う…あ…っ、吉川さん、そんな哀しい顔をしないで。ごめん、俺があんな言葉に動揺したせいで傷つけてしまったんだよね?」

 こんな時にも優しい清水さんは、私のことをまるで壊れやすいガラス細工のようにそっとそっと撫でてくれる。それがまるで宝物を扱っているみたいで、救われた気持ちになった。自分を汚いなんて思うのは止めよう。だってこの人はそんなことを思っていないのだから。

 …ああ、そうか。

 私は、ようやく自分が清水さんを選んだ本当の理由に気が付いた。この人は臆病なのだ。それも自分に対してでは無く、他者に対して怯えている。傷つけないように、傷つかせないようにと相手を気遣い、そのせいで自分が傷つけられてもひたすら我慢する。今回の件だってそうだ。自分じゃなく、私が傷ついたと思って動揺しているのだ。ああ、本当になんて優しい人なのだろうか。

 …そう思ったらハラハラと涙が出た。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄歴八年、すっかり飲んだくれになった私をシスコン義弟が宰相に成り上がって迎えにきた

鳥羽ミワ
恋愛
ロゼ=ローラン、二十四歳。十六歳の頃に最初の婚約が破棄されて以来、数えるのも馬鹿馬鹿しいくらいの婚約破棄を経験している。 幸い両親であるローラン伯爵夫妻はありあまる愛情でロゼを受け入れてくれているし、お酒はおいしいけれど、このままではかわいい義弟のエドガーの婚姻に支障が出てしまうかもしれない。彼はもう二十を過ぎているのに、いまだ縁談のひとつも来ていないのだ。 焦ったロゼはどこでもいいから嫁ごうとするものの、行く先々にエドガーが現れる。 このままでは義弟が姉離れできないと強い危機感を覚えるロゼに、男として迫るエドガー。気づかないロゼ。構わず迫るエドガー。 エドガーはありとあらゆるギリギリ世間の許容範囲(の外)の方法で外堀を埋めていく。 「パーティーのパートナーは俺だけだよ。俺以外の男の手を取るなんて許さない」 「お茶会に行くんだったら、ロゼはこのドレスを着てね。古いのは全部処分しておいたから」 「アクセサリー選びは任せて。俺の瞳の色だけで綺麗に飾ってあげるし、もちろん俺のネクタイもロゼの瞳の色だよ」 ちょっと抜けてる真面目酒カス令嬢が、シスコン義弟に溺愛される話。 ※この話はカクヨム様、アルファポリス様、エブリスタ様にも掲載されています。 ※レーティングをつけるほどではないと判断しましたが、作中性的ないやがらせ、暴行の描写、ないしはそれらを想起させる描写があります。

地味な私を捨てた元婚約者にざまぁ返し!私の才能に惚れたハイスペ社長にスカウトされ溺愛されてます

久遠翠
恋愛
「君は、可愛げがない。いつも数字しか見ていないじゃないか」 大手商社に勤める地味なOL・相沢美月は、エリートの婚約者・高遠彰から突然婚約破棄を告げられる。 彼の心変わりと社内での孤立に傷つき、退職を選んだ美月。 しかし、彼らは知らなかった。彼女には、IT業界で“K”という名で知られる伝説的なデータアナリストという、もう一つの顔があったことを。 失意の中、足を運んだ交流会で美月が出会ったのは、急成長中のIT企業「ホライゾン・テクノロジーズ」の若き社長・一条蓮。 彼女が何気なく口にした市場分析の鋭さに衝撃を受けた蓮は、すぐさま彼女を破格の条件でスカウトする。 「君のその目で、俺と未来を見てほしい」──。 蓮の情熱に心を動かされ、新たな一歩を踏み出した美月は、その才能を遺憾なく発揮していく。 地味なOLから、誰もが注目するキャリアウーマンへ。 そして、仕事のパートナーである蓮の、真っ直ぐで誠実な愛情に、凍てついていた心は次第に溶かされていく。 これは、才能というガラスの靴を見出された、一人の女性のシンデレラストーリー。 数字の奥に隠された真実を見抜く彼女が、本当の愛と幸せを掴むまでの、最高にドラマチックな逆転ラブストーリー。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

『出来損ない』と言われた私は姉や両親から見下されますが、あやかしに求婚されました

宵原リク
恋愛
カクヨムでも読めます。 完結まで毎日投稿します!20時50分更新 ーーーーーー 椿は、八代家で生まれた。八代家は、代々あやかしを従えるで有名な一族だった。 その一族の次女として生まれた椿は、あやかしをうまく従えることができなかった。 私の才能の無さに、両親や家族からは『出来損ない』と言われてしまう始末。 ある日、八代家は有名な家柄が招待されている舞踏会に誘われた。 それに椿も同行したが、両親からきつく「目立つな」と言いつけられた。 椿は目立たないように、会場の端の椅子にポツリと座り込んでいると辺りが騒然としていた。 そこには、あやかしがいた。しかも、かなり強力なあやかしが。 それを見て、みんな動きが止まっていた。そのあやかしは、あたりをキョロキョロと見ながら私の方に近づいてきて…… 「私、政宗と申します」と私の前で一礼をしながら名を名乗ったのだった。

処理中です...