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メチャクチャな展開
しおりを挟む「俺も…やれば出来るんだけど」
何を?と問い返そうとして『いや待て、これは我らに向けた言葉では無いかも』と思い直す私とは対照的に、廣瀬さんはそのまま疑問を口にする。
「何をですか?」
「そんなの話の流れで分かるだろうが。俺も、本気出せばそれくらいの働きは出来るってこと」
マジで?!
って、この場合の『マジで?!』は『本当にそんな能力をお持ちですか?!』という意味では無く、『そんなこと本気で言ってますか?!』という意味である。だってほぼ社会経験ゼロで不労所得メイン、趣味程度の店舗経営しかしていなかった男が、どうして廣瀬さんと同等に働けるなんて思うの??
「湊には無理だよ」
「はァ?!出来るったら出来るっつうの!!分かった、ちょっと待ってろ」
そう言って湊はスマホ片手に店外へと出て行った。…かと思うと、暫くしてドスンと椅子に座り、満面の笑みで私に報告してくる。
「朱里んとこの会社で働くことになったから」
「は…い??」
そう言えばこの人、行動力の高さと人脈の広さがえげつないんだよね。でも、だからって就職だよ??そんな電話一本で手軽に出来るはず無いじゃない?!
「忘れたのか?俺は羽柴社長と家族ぐるみの仲だぞ。羽柴社長だけじゃなく、その本家である帯刀グループの会長とウチの父親が切っても切れない関係でさ、定期的にゴルフしたり…先月は一緒に泊りがけでラスベガス行ったとか言ってたな。帯刀会長はYMシステムサポートの起業時に随分と出資してるらしいから、ソッチ経由で攻めれば断らないんだよ。…というワケで、ウチの親父から帯刀会長を経由して羽柴社長にOK貰った」
「は…あ」
そんな適当な感じで就職出来ちゃうものなの?まあ、確かに私が就職活動で迷っていた時にYMシステムサポートを薦めてくれたのは湊だったけどさ。でも、筆記試験も面接も無しって卑怯じゃない?
ブハハハッ!!
何故か隣りで廣瀬さんが笑い出した。なんだろう、この釈然としない感じ。…というか私の立場、おかしいよね?てっきり廣瀬さんとの仲を妬いたのかと思えば、最早、廣瀬さんとの対決の方がメインになっちゃって、自分と張り合える相手を見つけてワクワクしている感じじゃない?
ねえ、私の立場は??
「ちなみに廣瀬さん直属の部下にして貰ったから」
「ええっ?!だって、事務畑の人間を削減しろって、あんなに騒いでたのに?」
「なんか1人、どっかに異動させるってさ」
「それ、湊の我儘のせいで誰かが犠牲になったんだよ!!」
うわあああ、何だこのメチャクチャな展開。こんなデタラメ、許されるの?
…などと思っていたのだ、この時は。
その1カ月後。
「瀧本くん、昨日話してた案件なんだけど、ちょっといいか?」
「はい、廣瀬さん大丈夫です」
「常務への説明資料だけど、次年度用の格付はコレを使ってくれ」
「あー、待ってました。これでもう完成しますよ」
>瀧本さんって、何者??
>入社1カ月でもう廣瀬さんの片腕だよね。
>あの2人が並んでると神々しくて直視出来ない!
>人材開発課、マジで眼福なんですけど~。
>でも廣瀬さんって太田さんと付き合ってるでしょ?
>嘘ォ、朱里ちゃんは湊様とじゃないの?
宣言通りに湊は仕事を次から次へとこなし。そして廣瀬さんを敵視していたはずが、何故か仕事を教わっているうちに異常に打ち解けてしまい、プライベートでも一緒に過ごすことが増えてきて。そして勿論、廣瀬さんにはこの私がセットで付いてくるワケで。
いつの間にやら、噂ダイスキな人々の格好の餌食となってしまうのである。
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