ずっとこの恋が続きますように

ももくり

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頑張って断った…のに

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「あのさ、システム開発部の社員が一気に3人も退職願を出したせいで、急遽、幹部会議が開かれたんだ。ほら、あの部署って一部の人間だけが酷使されて長時間勤務しているのに、その他の人間はロクに働かず定時で帰ってただろ?」
「…あ…あ、そうみたいね」

 なぜ今その話をするのかと訝しがりながらも私は、知っている情報を伝える。

「専門職みたいなものだから、誰が何をしているのか把握が難しいとかって。しかも統轄すべき部長が営業畑出身の人間だったせいで、利益を上げたはいいけど中途半端な知識のせいで現場を混乱させているんでしょう?」
「そう、その通り。でさ、部長を挿げ替えて、公平な采配を約束することで退職希望者を引き留めているんだけど、その件について人材開発課から廣瀬さんがメインで動くことになる。まあ、平たく言うとシステム開発部の社員達の仕事量を調整し、彼らの再教育も行なうんだよ。廣瀬さん、そこそこシステム関連には詳しいけどシステム開発ともなると更にその上をいくだろう?…きっと今からメチャクチャ勉強することになるぞ、あの人」

 えと…、それはつまり…?

 キョトンとする私に湊は分かり易く言い直してくれる。

「あの人、完璧主義者だからな。取り敢えず現在抱えている仕事は全て俺が引き継ぐことになって、廣瀬さんはその方面の知識が深い人間に教えを乞いながら、伏魔殿と化しているシステム開発部を立て直す作業に入るってこと。…ああ、もう、つまり、死ぬほど忙しくなって、それが落ち着くまで朱里と会う時間は無くなると思ってくれ」
「えっ、でも土日くらいは会えるでしょう?」

 せっかく想いが通じ合って、これからが楽しい時期なのに??

「たぶん無理だろうな。システム開発部って能力給なんだけど、その査定をしていたのが例の部長だったんだ。有り得ない話だと思うだろうが、仕事の出来高じゃなく個人的な好き嫌いで評価されていた社員もいたみたいでさ、会社に貢献しているのに安月給だったり、あまり働いていなくても高給取りだったとかで一日でも早く再査定が必要なんだよ。その査定をするには、仕事の内容を把握するための知識が必要だろ?きっと廣瀬さんのことだ、寝食を惜しんで勉強すると思う」
「そっか…、仕事だもんね」

「そんな暗い顔すんなよ~、言わない方が良かったか?」
「ううん。ワザワザ教えてくれて有難う」



 …その後、廣瀬さんからも直接報告を受けて、暫く会えないと宣言されてしまった。なので私は快く『仕事に専念してくださいね!』と答えたのだが。
 
 
 
「えっ、なんでだ?」
「なんでって、2人きりはマズイよ」

 廣瀬さん抜きでも今まで通りに食事に行こうと湊が言うので、キッパリ断ったところ、予想外の抵抗を受けた。

「は?今まで廣瀬さんが接待や会議で不在でも、関係なく俺と2人で食事してただろうが」
「そっ、それはそうなんだけどさ。でも、私は廣瀬さんの彼女なんだし」

「妙なことを言うヤツだなあ。今まではOKだったのに廣瀬さんと寝た途端、NGになんのかよ」
「そういうことじゃ…」

 あるけど、思いっきりそうなんだけど。

「今更、廣瀬さんもダメって言わないって。俺さ、遊び仲間とはもう連絡取り合ってないし、1人で食事とか寂しくて死にそうなんだけど」
「大ゲサだなあ、寂しいくらい慣れなさいよ、いい大人なんだから」

「ていうかさ、元はと言えば朱里がきっかけで会社勤めすることになって、環境がガラッと変わったせいでボッチなんだぞ。…責任は取って貰うからな」
「言いがかりは止めてくださ~い」

 私は頑張って断った…のに。

 その翌日、仕事帰りにいきなり腕を掴まれ、強引に拉致されてしまい。それ以降も湊に連れ回されていたりする。
 
 
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